「塔」2017年12月号(月詠)

鈴虫の死にたるのちの土くれの匂へるままを晒し置きたり

夕刻に花火大会待つ人のブイヤベースのごとく混み合ふ

つまらない嘘をゆるして水割りのグラスに沈むひかりを揺らす

叶はざる夢に背骨のありしこと懐かしみつつ指先を擦る

全集の第一巻に押し込まれ初期作品は息荒げをり

ヴァウェンサ、と改められて新版の世界史資料集春を待つ

(p.124)

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