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デジタルとアナログ

デジタルのはじまり

デジタル社会、デジタルネイティブなど様々な用語が浸透し、完全に定着した感のあるデジタルという単語ですが、使われ始めたのは20世紀半ばの1950年~1960年頃のようです。

「デジタル」という言葉が初めて使われた正確な時期は明確ではありませんが、デジタル技術が急速に進化し始めたのは20世紀の半ば以降です。1950年代から1960年代にかけて、デジタルコンピュータの発展が進み、デジタル信号処理技術が開発されました。デジタルコンピュータはアナログコンピュータに代わる新しいアプローチとして台頭しました。デジタル通信技術も同様に、1960年代から1970年代にかけて発展しました。デジタル信号処理とデジタル通信の進化により、情報の効率的な伝送と処理が可能になりました。つまり、「デジタル」という用語は、20世紀のコンピュータ科学と通信技術の進化に関連して使われるようになったと言えるでしょう。

ChatGPT August 3 Versionより抜粋

私が学生時代だった1990年代の頃に、良く耳にしたのはデジタル時計とアナログ時計の対比でした。デジタル時計は1990年代の当時流行したカシオの腕時計G-SHOCKのように、数字や文字で時間を表記するタイプの時計です。これに対して、アナログ時計は1~12の数字が示された円盤上で長針と短針で指し示した時刻を視覚的に捉えることができる時計です。アナログ時計の中でも機械式に分類される時計は、時計の中の仕組み全てがアナログの機械で構成されており、まさにアナログ機器の代表例と言えます。
最近の時計はデジタル時計が主流となっていて、特に電波時計に分類されるものは時刻情報を時計が定期的に受信することで自動的に同期(標準時間に合わせる)ことができます。一見してアナログ時計に見える時計でも、中身の仕組みが電波時計のようにデジタル制御されているものがほとんどなので、「アナログ表示している時計」をアナログ時計と呼ぶ人も多いと思います。

デジタルとアナログの定義はあるものの、上記で説明した時計のように「これはデジタル製品です」だとか「これはアナログ製品です」と言えない製品・プロダクトが増えてきました。これらのデジタルとアナログが組み合わさった製品・プロダクトは、その境界線(デジタルとアナログの変換ポイント)も多種多様です。

そこで改めて、デジタルとアナログを比較しながら見ていきます。

デジタルとアナログの比較

表1:デジタルとアナログの比較

デジタルは数値で表せることが最大の特徴です。例えば、先ほどの時計の例をとると、デジタル表示の時計は12:00、12:01のように正確な時間が出力されます。一方で、アナログ表示の時計は12:00頃、12:01頃のようにピッタリとした数値を読み取ることができません。
デジタルは正確に数値を表現できるものの「時間と分」しか表示できない場合は、「12:00と12:01の間」の表現ができません。一方で、アナログ時計は長針が「0分と1分の目盛りの間」を示せるので、12:00と12:01の間を表現できます。
アナログな仕組みで表現が大雑把であいまいであることは、人間の感じる自然感覚に近いとも言えます。それは人間自体がアナログな存在だからです。

ここから、『表1:デジタルとアナログの比較』の主な例で示したものを見ていきます。

『コンピュータ間の通信』と『人間同士の会話』

コンピュータ間の通信はデジタルです。例えば一方のコンピュータから「Hello」というテキストを送信すると、「Hello」という文字が通信ケーブルやインターネットを経由して、デジタル情報としてそのまま「Hello」とと"正確に"受信されます。
一方で、人間同士の会話の場合にAさんが「ハロー」と話しかけると、音声が空気振動というアナログな音波を通じてBさんに"大雑把に"伝わります。
ここで"大雑把"と表現しているのは、周囲の雑音で「ハロー」が聞き取れなかったり、Aさんの発音がネイティブすぎて聞き取れなかったりすることもありえるからです。人間同士はあいまいで大雑把な音声のやり取りでアナログな会話(通信)をしていることがわかります。

『パソコンの画像表示』と『絵画や彫刻』

絵画や彫刻は物理的に存在しています。人が五感を使って直接的に見たり聞いたり触ったりすることができます。一方で、パソコンで画像を表示するときは、色を数値で表現したものを沢山集めて画像を生成しています。
パソコン画面の表示は約1678万色を"正確に"出力できますが、逆に言えば約1678以上の色を表現できません。実在する絵画では、"大雑把"ではあるものの無限の色彩を表現できます。

『フォルダなどの概念』と『火や水や生物などの物』

パソコンでデータを保存・管理する「フォルダ」はデジタルデータで作られています。フォルダを2個つくることは、頭の中にフォルダを2個イメージすることと同じような概念でパソコン内につくられています。つまり、現実(リアル)には存在していないものと見なせます。
一方で、我々人間も含めて生物・物体は、現実(リアル)な世界に実在しています。実在はしていますが、存在そのものを数値化したり数値を使って表現することができません。マイナンバーなどのIDの数値は、存在と紐づけた数字というだけで、数字自体が存在を作っているわけではありません。
また、フォルダやデジタルデータは"正確な"コピーが作成できますが、生物や物体は"大雑把に"似ているものは作れますが、"正確な"コピーは作れません。

デジタルは概念的な表現を、アナログは物理的な表現をしているとも言えます。

デジタルとアナログの変換

アナログデジタル社会の到来と言われていますが、人間も含む生物・物質が存在する限りアナログが無くなることはありません。従って、デジタル社会においても必ず『デジタルとアナログの変換』が発生します。

表2:デジタルとアナログの変換

アナログからデジタルに変換することをA/D変換(アナログ・デジタル変換)と言います。これはヒトの行動・動作を機械に入力するために変換するので、P2M(People to Machine)の変換になります。
一方で、デジタルからアナログに変換することをD/A変換(デジタル・アナログ変換)と言います。これは機械から出力されるデータ・情報をヒトの五感(視覚・聴覚・触覚など)で認識できるようにするために変換するので、M2P(Machine to People)の変換になります。

『表2:デジタルとアナログの変換』で、具体的な変換例を見ていきます。

音声の例

音声を録音するとき、マイクでアナログの音波を入力します。アナログの音波は、マイクからパソコンに送られる過程でA/D変換されパソコンに保存されます。パソコンに保存された時点でデジタルで保存されています。
音声を再生するとき、デジタル音声データがパソコンからスピーカーへ送られる過程でD/A変換されスピーカーからアナログの音波として出力されます。スピーカーから音が出た時点ではアナログの音波が出力されます。

写真の例

デジタルカメラで写真を撮影するとき、カメラのレンズに映った映像(光)をA/D変換してカメラに保存します。カメラに保存された時点でデジタルで保存されています。
カメラに保存したデジタル画像データをプリンタに送信します。カメラとプリンタの間はデジタルケーブルやメモリカードや無線通信などで送信しますが、いずれの場合もデジタルのデータのまま転送されます。
プリンタでD/A変換され、アナログのインクを紙に吹き付けて写真を印刷します。印刷された写真はアナログです。

スマホの例

スマートフォンでテキストメッセージをタッチ操作で入力するとき、液晶画面の圧力や触れたことを検知するセンサーによってA/D変換されてスマートフォンにテキストデータが入力されます。スマートフォンに入力されたテキストデータは液晶画面に表示する直前まではデジタルデータとして、画像表示するための数値として液晶画面に送られ、液晶画面でD/A変換されて光として出力されます。この人間が目で見ることのできる光(色)はアナログです。

まとめ

デジタルとアナログの定義とその比較、D/A変換・A/D変換の具体例を見てきました。身の回りには「デジタル製品」と「アナログ製品」のいずれかで分類できない製品が増えてきました。身近な例は自動車です。自動車のエンジン、タイヤなどのアナログ部品よりも、自動運転に利用する制御装置などのデジタル要パーツが多くなりつつあります。
自分の身の回りにある製品・プロダクトについて、どの部分がデジタルでどの部分がアナログなのか、D/A変換とA/D変換はどの部分で行われているのかを意識すると理解がさらに深まっていきます。


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