【第1回】「xR とは、どんな技術のこと?」HoloLens 担当者がわかりやすく解説してみた

こんにちは、趣味も仕事もxR漬けの日々を送るミクニです。
私が勤めるシネックスジャパンでは、外資系ITディストリビューターとして、お客様の抱える問題や課題について、さまざまなソリューションを提供し、サポートしています。

そんななか、私たちは次世代のデジタルデバイスとして「Microsoft HoloLens 2」(以下、HoloLens)を提供しています。HoloLens とは、Microsoft 社が開発したゴーグル型のデジタルデバイスのこと。HoloLens を装着すると、現実空間が自動でスキャンされ、空間に合わせてアプリやブラウザの画面を表示させることができるほか、視界を映像として他の人にリアルタイムで共有することができるようになります。

このHoloLens に使われている技術である「MR(複合現実)」、そして私たちの身近で使われるようになったVR(仮想現実)やAR(拡張現実)を含めた総称を「xR」と呼びます。

このxR は、今後私たちの生活やビジネスに大きな影響を与えていくと言われていますが、いまいちピンと来ていない人も多いかもしれません。まずは「xR とは何か」「xR によって何が変わるのか」について、解説します。



xR(VR・AR・MR)とは、どんな技術?

xR (エックスアール) とは、冒頭でもお伝えしたようにVR・AR・MR という3つの技術の総称です。それぞれには、どのような特徴があるのでしょうか。

■ VR(仮想現実)

VR は「Virtual Reality(バーチャルリアリティ=仮想現実)」の略で、言葉の通り、仮想現実を取り扱う技術領域のことです。すでに、ゲームなどのエンタメ領域で普及し始めているため、体験したことがある人も多いかもしれません。

専用のVR ゴーグル(ヘッドマウントディスプレイ=HMD)を装着することで、コンピューターで作られた3D CGの世界へ没入できます。実際にその空間に実体があるかのように、移動したり、何かをつかんだりといったアクションをすることも可能です。

エンタメ以外では、デジタル空間での会議や、火災現場のような現実では再現困難な状況でのトレーニングなどで活用されています。


■ AR(拡張現実)

AR とは「Augmented Reality(オーグメンテッドリアリティ=拡張現実)」の略で、現実空間をカメラやセンサーで読み取り、情報を限定的に書き換える技術領域のことです。
VR とは違い、現実空間の情報をもとに、部分的に情報を上書きしていく(現実を拡張していく)のが特徴です。

わかりやすい例が、スマホ向け位置情報ゲームアプリ『Pokémon GO』でしょう。スマホのカメラでのぞいている映像の中に、現実では存在しないポケモンを出現させることができます。そのほかにも、街中をスマホのカメラで見ると道案内の看板が表示されたり、部屋の中でスマホのカメラを介して家具を配置できたりといった機能や、カメラに写る自分にメイクすることができるメイクアプリといったさまざまな場所で活用されています。

最近では、オンライン会議ツールのバーチャル背景やフィルターにも同様の技術が活かされており、気づかないうちに日ごろから触れている人が多い技術だと思われます。

■ MR(複合現実)

MR とは、「Mixed Reality(ミックスドリアリティ=複合現実)」の略で、VR とAR の2つの技術を横断する技術領域です。VR やAR と比べると聞き馴染みがない技術かもしれません。

MR は、現実空間をスキャンして、その上から重ねるように、デジタルデータを映し出しています。AR とも近いのですが、空間を部分的にスキャンして上書きするAR と、空間全体をスキャンしてデジタルデータを複合するMR では、体験は異なります。

一方で、体験時の見た目はVR と似ていて、少し大きめのゴーグルを装着します。ゴーグルにはカメラやセンサーなどが複数ついており、現実空間を自動的にスキャニングすることで、3Dデータをいわばホログラムのように空間上に映し出すことができます。冒頭で紹介した「HoloLens」は、MRを体験するためのデバイスです。HoloLens を装着すると、空中にビデオ会議のアプリを呼び出し、それを指先で操作するなんて近未来的なことも可能。まさに、現実空間とバーチャル空間が溶け合っていく技術が、MR なのです。


xR では、今後どんなことができるようになっていくのか

VR、AR、MR それぞれの技術は日々進化を続けています。いま注目されている「メタバース」にも関連した技術です。今後、どんなことができるようになるのか、まとめてみました。

■ デジタル空間の構築により、物理的な制約を乗り越えるVR

VR では、物理法則や距離といった制約を取り除くことができるため、生活面ではいままで以上にリアルなゲームやライブ体験ができると考えられています。現実では不可能なシチュエーションの再現や、移動に数時間かかる会場でのイベントなど、空間を超えて体験することができるでしょう。

また、VR はエンタメだけではなく、ビジネスにも活用されつつあり、その流れは今後も加速していくはず。例えば、実際のオフィスをバーチャル空間に再現した「バーチャルオフィスツアー」や、物件の内見を遠隔で行える「VR内見」など、現地に行かなくても現地にいるとの変わらない体験ができるサービスはすでに広がりつつあります。技術指導の効率化や時間短縮だけでなく、座学で行っていた内容にも効果が出るといった報告も出ています。

■ 現実空間の補助や再活用への期待が高まるAR
 ARは、現実空間での情報の使い方に作用できる技術。ゲームなどのエンタメ領域で活用されている、身近な技術といえるでしょう。

しかし、今後はエンタメ以外での活用も期待されています。例えば、地図を見なくても、現実空間上に浮かぶ矢印を追って目的地へ向かう直感的な道案内。または、商品を写真ではなく、立体的に確認できるARを活用したオンラインショッピング。こちらは、すでに海外のオンラインショップでは導入されていて、売上が増えた事例が確認されています。ブランド戦略と相性がよく、スニーカーを眺めたりカメラで足をスキャンして試着したりなど、体験したことがある方もいらっしゃるかもしれません。オンラインショッピングでも商品を立体的に眺めて購入するのが当たり前になる日も、そう遠くないでしょう。

■ 現実とデジタルが溶け合う、新たな可能性を秘めたMR

VRとAR、それぞれの利点を柔軟に使える技術であるMRですが、普及はまだこれから。使用環境が整えば、いままでPCで作業していた内容がすべて専用のゴーグルに集約され、ハンズフリーで作業をしつつ、空間上をタップするだけでその場で必要なファイルにアクセスする、といった働き方も実現可能です。

MRなら、遠隔地への作業指示も容易になります。特にコロナ禍で人の移動が困難になった際に、非常に需要が高まりました。例えば、海外拠点工場の立ち上げ。コロナ禍で立ち上げがストップしていた工場にHoloLens を送付し、HoloLens を装着した現地のスタッフに、Microsoft Teams で連携したベテランエンジニアが日本から指示をすることで、作業を完遂できました。 MR なら現実空間も同時に見えるため、ゴーグルを外して作業を止める必要もありません。エンジニアは、HoloLens のカメラを通して現地の様子を把握できるうえ、操作に必要な部分に、矢印など視覚的な説明を加えながら作業ができました。

この事例では、初心者とベテランがタッグを組んだことで、初心者スタッフの習熟度向上にも寄与したそうです。現地への移動なしに、ベテランから初心者へのノウハウ継承ができるというのは、MR だからこそ実現できる大きなメリットとなるでしょう。


xR によって、生活やビジネスが変わっていく

xR の現状は、ゲームでいうコントローラーが出揃ったくらいのタイミング。これから、関連するアプリやデバイスが増えていけば、より幅広く、リッチな体験ができるようになり、生活はより便利になっていくでしょう。

こうした技術は、将来的にはメタバースに接続していくと考えられています。メタバースとは、仮想空間上で一人ひとりが仮想的存在として集まり、コミュニケーションやコラボレーション、さらには経済活動といったさまざまな活動ができる世界観を総括した言葉。現在のインターネットの、さらに先にある新しいバーションのインターネットの形とも言えるでしょう。今後は、xR の技術をフル活用し、現実世界と平面のデジタル世界に加えて、3Dのデジタル世界を構築しようという動きが加速していくと見られています。まさに、SF映画などで見たような世界観が、そう遠くない未来に実現するかもしれないですね。


次回は、この「メタバース」について解説していきます。
楽しみにしていてください!