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【書評】『ニセ医学に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!』(NATROM・著 メタモル出版)

 この本は結構刺激的です。ヤバいぐらいに。

http://books.rakuten.co.jp/rb/12825434/
http://www.amazon.co.jp/dp/4895958647

 というのも、意外と医療情報だけでなく、もっと広く見た「健康」を考えたとき、意外ときちんとした知識を持って日々の暮らしを営んでいるか、と自問自答してしまうことが多いからなんですよ。

 本書は、医療や健康に対する一般的な問いについて、科学的態度としては恐らくもっとも誠実な内容を書いていると思います。つまり、標準医療とは何であり、ニセ医学の根拠がいかに薄弱であって、一足飛びに実現する治療も含めた健康における「うまい話」はないのだ、という冷徹な事実を突きつけてくれるという点で。

 生まれつきであれ生活習慣であれ、生物である以上、生きていくごとに起こす不調に、倫理的、観念的な意味というのはほとんどありません。不摂生が祟ったから病気になった人に対して、その不摂生から目を背けさせ、安心させ、言葉を尽くして本人にとって聞き入れやすい言葉で健康の回復の仕方を唆す方法論がニセ医学の最たるものだとも言えるわけでして。

 そして、悪質な医療にとって最悪の敵は、ヤバい医師なんだってことも、かなりはっきりと論じてあってとても興味深いところです。ニセがなぜニセであり、それに対してしっかりとした反論が医師から出にくいのはなぜかも含めて、この本が論じていることをしっかりと踏まえることでいろんなものが見えてくるのではないかと思います。

 本書の解説では、ネットでいろんな有象無象に日々絡まれているサイエンスライターの片瀬久美子氏がこれはこれで切っ先の鋭い議論を展開しているのが興味深いです。
 個人的に読んだ本の中で、間違いなく五本の指に入る快著だと思いますので、思慮深く己を知的にも肉体的にも律したいと願う人にはぜひ手に取っていただきたい書籍です。

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