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私のはじめて好きになった人



この人のことが好きだ、と私が本気で思ったのは中学2年生の頃だった。

初めてちゃんと好きになった出会いが、私の人生を一変させるようなものだったと、振り返った今でも思う。
〇〇くんが好き!とか初恋は多分幼稚園の時だし、好きな人も居たけれど、私の思う本当に好きになった人の話をしたい。


中学2年生。私は絶賛アニメオタクをしていた。
小学5年生ぐらいの時に銀魂を見て、そこからどんどん色んな作品に触れて、ゴリゴリにオタクをしていた。銀魂、D.Gray-man、家庭教師ヒットマンREBORN、BLEACH、NARUTO……………ひたすら少年ジャンプ作品を見ていた。作品に影響を受けてはなんかそれっぽいことをする、なんというか痛いオタクだったと思う。まぁ、厨二病を患いがちな年齢なので勘弁して欲しい。
小学校を卒業する前。「将来の夢」について考えさせられた。それまでは漠然と「お花屋さん」とか「ケーキ屋さん」みたいななんとなく子供視点でキラキラして見えた職業を挙げていた。ただその時に初めて自分が何がしたいんだろうなぁと考えた。自分が好きなことをしたいなと思った。アニメが好きだけど、アニメに関わる仕事ってなんなんだろう。
絵を描く人がいるんだ。うんうん。その絵ができた後に、演じる人がいるんだ。このキャラクターとこのキャラクターは同じ人が演じているんだ。うそ、全然違うのに。

自分の好きなキャラクターが別の作品のキャラクターと同じ人が演じているのを子供ながらにびっくりした私は、その時にはじめて声優という存在を知った。これが私の声オタとしての始まりである。


そこから中学時代はゴリゴリに声優オタクをしていた。声優さんが登壇するイベントの映像やDVDを見てはキャッキャはしゃいだり、家の中にあるラジオを引っ張り出して声優さんのラジオを聴いたりもした。乙女ゲーなるものに手を出しはじめたのもこの頃だ。
みんなすごい!みんな良い声!みんな好き!そんな感じで毎日楽しく過ごしていたのだが、ある日VitaminXという乙女ゲーム作品のイベント映像をなんとなく見ていた。その作品で私は七瀬瞬というキャラクターが好きだった。各キャラクターを演じる方が朗読劇と芝居の間のような感じで台本は片手に動きもありつつ演じていた。
その時だと思う。その中でも特に役に入りきっているように見えた彼に目を奪われた。実際の姿形とキャラクターは勿論違うのだけれど、そんなことを忘れるほど彼とキャラクターのピントが合って見えたのだ。1番好きなのは七瀬瞬だったけれど、その瞬間、彼の演じる仙道清春というキャラクターに一気に心が持っていかれた。


吉野裕行さんという私が初めて好きになった人に出会ったのは、多分この時だと思う。


声優という仕事をしていて、そこでプロであるという時点で彼らの演技が素晴らしいものであることは間違いない。
その日、吉野さんと出会ってから吉野さんの出ている作品を沢山調べた。調べては見て、調べては見て、上手いとかどうとかそういう話ではなく、彼の演技やお芝居を見て初めて心が震える、といったものを感じた気がする。丁度中学2年生、彼の出演していた「機動戦士ガンダムOO」が放送していたのも大きかった。1人の中に混在する2つの人格の演じ分けを見て、彼のお芝居が好きになって、彼の雑誌のインタビューを読んで、彼の1人でやっているラジオを毎週聞いて、彼のパーソナルは部分とか、考え方を知って、この人のことが好きだと思った。
ファンレターも書いたし、彼の毎週やっていたラジオにメールを送った。コーナーの企画で電話でお話したこともあったし、手書きメッセージみたいなのをもらったこともある。中学生というクソガキなりに本気でファン活動をしていた。

そんなある日、とある雑誌のインタビューを見かけた。ファンの方に向けて、のようなもので、詳しい文章まで思い出さないが、大体こんなことを言っていたように思う。
「僕のことを好きになって、応援してくれる人で声優を目指しましたみたいなメッセージをもらったんです。僕はほんとに、どんな形であれみんなと一緒に仕事ができたら素敵なことだなと思ってるんです」
この人と並んで仕事ができるようになったら、それはすっごく素敵なことなんだろうなと思った。

それから、声優になるためにはどうしたら良いかとか色々調べて、とりあえず演劇部がある高校に通うことにした。受験シーズンで演劇部があればどこでも良いかなとか考えていたら親に笑われた。現状苦労しないで入れる1番良さそうな高校に演劇部があったのでそこに入った。そんな理由でその高校に行くなんてお前くらいだとまた親に笑われた。笑われたけど反対はされなかった。今も昔も両親のそういった態度には感謝している。

高校で演劇に触れてからはとにかくお芝居が好きで好きでしょうがなくなった。正直人前に出るのは昔から苦手なのだが、舞台に上がっている時だけはそうは思わないのは不思議だなぁと今でも思う。
私の中学の同級生は私を入れて25人。高校は1学年に240人。10倍の人数の空間に足を踏み入れて、同じ中学の子が1人も居らず人見知りをガンガン発揮し、1年生の高校デビューは完全に失敗だったが、文化祭の時に「Shokoちゃんあんな大きな声出せるんだね」と驚かれたのをよく覚えている。


私は今でも演劇が大好きで、趣味はなんですか?と聞かれたら「観劇です!」と答えるようにしている。一般受けが良いからという理由も多少あるが、とにもかくにも芝居が好きでしょうがない。

今でこそ追っかけてファン活動はしていないが(一時期死ぬ前にやりたいことをやり尽くすために養成所に入っていたので、その時にそういうことを控えていたことはある)、多分死ぬまで彼のことが好きだろうし、死ぬまで感謝しているんだろうなと思う。

吉野さんがいなかったら、ここまで自分が好きだと思える「演劇」には出会えなかったし、演劇に出会っていなければ、今仲良くしてもらってる友人先輩後輩等沢山の人達と出会うこともなかったと思うのだ。今の自分がいる全てのきっかけは彼に他ならない。

貴方と並んで仕事が出来るような才能は私にはなかったけれど、
本当に、10年前、貴方と出会えて良かったと思う。


沢山好きな人はいるし、節操がないのでこれからも好きな人や好きなことは増えるんだろうけれど、
それでも死ぬまで、一生特別な存在なのだと確信を持って言える。10年経ってもそうだから、もう10年経っても変わらないんだろうなと思うから。


自分のことを不器用だと謳ってならないのに
新しいことにどんどん挑戦する姿に
また勇気づけられています

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