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【マッチレビュー】 幕末の志士に重ねながら 2019年J1リーグ 第12節 川崎フロンターレ×名古屋グランパスエイト

こんばんは。syuです。
今節も振り返りやっていきます。
文中・図内に出てくるレイヤーについては、下記理論を用いております。

前節の振り返りはコチラ。

スタメン

【前半】緊張の鍔迫り合い

如何にして相手陣地でプレーをするか。という戦いだった前半。
両チームともに前から相手DFにプレッシャーをかけてボールを奪いに行く立ち上がりだった。

川崎は、憲剛と知念はシミッチを消してからCBへアプローチするなど、CBの前に立つシミッチを警戒している動きが見られた。但しシミッチがボールと逆サイドに居るときまで付いていくことはなく、あくまでボールの近くで動くときは警戒をやや強める。といったレベルだった印象。

名古屋は、川崎のプレスに対して左SHマテウスがCHの高さに降りて受けて叩くことでDFラインに時間とスペースを作りだす。
その名古屋のビルドアップではシミッチは中央での警戒もあり左SBの位置に入ることが多く、そこを起点に左サイドから進むかシンプルにジョーに当ててアーリアやGX10が拾ってからといった感じ。左サイドでは内側にマテウス、吉田が外、シミッチが後ろ、そこにアーリアとGX10も加わってサイドに人数をかけてボールを動かしていた。かなり狭いエリアでの攻防だったが、そこでボールを回せる技術・判断力・奪わた直後の切り替えの速さが無いと名古屋では試合に出られないのだろう。そこは川崎も似たところはあるのだけど。そこに川崎も人数をかけるので試合前のアップでやる狭いエリアでの5対5を強度MAXで!みたいな攻防だった。

名古屋がこのようなやり方を選んでいるのは、狭いエリアでボールを動かせる自信とそのエリアを抜けた時には世界のジョーを用いたフィニッシュワークがあること。そして即時奪回をしやすい環境を作る事だと思う。一つのミスがピンチになりかねないやり方だけど、それが出来ているからこその今の順位なのだろうしシミッチっていうスーパーな選手が後ろのカバーをしてくれるから成り立っている部分は大いにあると感じる。

それ対して川崎は狭いエリアからの脱却を用意していた。
奪った後に必ずやってくる名古屋のカウンタープレスを回避しつつ早い段階で間で受ける憲剛に出せればそこを経由して逆サイドに展開。出せなければボール保持の局面に移行する。
逆サイドに展開できた時は、長谷川・登里の早い攻撃でアタッキングゾーンに侵入することが出来ていた。クロスの質については開幕から(ゼロックス含め)あまり改善が見られていない印象なので気になっている。左だけではなく右もなんだけど。。

ボール保持局面での川崎は2CHの裏にどうやって入り込むかに注力していたと思う。
名古屋のビルドアップ妨害も川崎同様に高い位置でプレッシャーをかけることで、前に蹴らせて回収or繋いできたら奪回する狙い。どこで奪うかというかは後ろもガッツリ人を捕まえて各々が勝て!という印象が強いのだけど、ボールホルダーに一歩深く入り込む名古屋のプレッシャーに、躱すトラップや股抜きといった相手のベクトルの逆を取る動きが封じられてしまっていた。そこの個々のデュエルという面では名古屋に軍配が上がっていたが、川崎は間を取りながら複数人で連動して動くことでプレスを回避して前進することが出来ていたので、グループでの動きは川崎が上回っていたと思う。

また、ソンリョン→馬渡のフィードも名古屋のプレスに対して有効に働いていたと思う。
マテウスはジェジエウを捕まえて後ろの吉田も連動して前に出してプレッシャーをかけたかったのだと思うけど、マテウスと吉田の動きが連動せずに馬渡に中間で受けられるシーンが目立った。マテウスに前に当たるように指示が出ていたようなので、マテウスの動きに問題があったのだと思う。風間監督も試合後コメントで言ってる通りゲームに入りきれてない印象はあった。
それは名古屋のボール保持でも。

上述のマテウスの動きもそうだけど、名古屋が前に出るトリガーポイントは川崎が後ろにボールを戻した時だったと思う。
名古屋は少なくとも2CHのどちらかを含めて前に出てくるので川崎はその裏を狙う。怪我明けの阿部をすぐに起用した理由はそのスペースを見つけて受け手になってもらう為だったかと。知念と長谷川に裏を狙わせつつボールを後ろに戻して名古屋を前に出させることで、そのCH裏のスペースを作ろうとしていた印象を受けた。

上図は32分のシミッチが前に出て出来たスペースを使えたシーン。
シミッチは、ボールが下がると共にDFラインに降りていく大島に付いていくことが多かった。このシーン以降名古屋はボールロスト直後の動きが変わり、前に出てボールホルダーにアプローチし川崎を押し込めることよりも川崎のパスの受け手を捕まえることを優先。守備を整えてから前に出るようになっていた。上図のシーンがキッカケなのかは分からないけど、それ以降もまだまだ走れてたのでスタミナ的な理由ではないと推測している。

前に出たら当然整えた守備にスペースが出来るし、この試合ここまで川崎は憲剛や阿部が間でパスを受けてプレスを躱してきたのだけど、シミッチが川崎が使いたいスペースを消すことで川崎のボールロストを誘発していった。何度かプレスを躱してカウンターに向かえるシーンはあったけれど、終盤はやや名古屋優勢になったのは名古屋の変更が効いていたからだと思う。前半終了間際の名古屋のゴール自体は名古屋優勢の流れとは関係ないけれど、終盤の流れを後半も引き継ぐようなら厳しいなーと感じた。

【後半】ベンチワークから見る類似と相違

ボール非保持でシミッチは、大島のマークを受け持ちながら人に付く傾向の強い周りのサポートとして空いたスペースを埋めていたのだけど、川崎がポジトラ(守→攻の切り替え)でチャンスを作れなかったのはシミッチのカバーリングによるところが大きかったと思う。
後半に大島が高い位置でスタートしていたのは降りて行ってシミッチを前に引き出すタイミングを伺う為だったのかもしれない。まぁ憲剛が降りたから大島が上がったというだけの話なのだろうけど、大島が動くとシミッチも動くのでそこを突けたのは良かったと思う。

上図がそのシーンで視野外から現れた大島にシミッチが付いていき裏のスペースを使うことに成功した。川崎は前半同様に名古屋CH裏を突くことと早い段階で前線にボールを送ってから攻撃!が狙いだったと思うけど、こぼれ球を拾えずにカウンターを喰らって押し込まれ続け攻撃に転じることが出来なかった。

55分に碧→ダミアンの交代で4-4-2に変更。憲剛を降ろして大島との2CHにしたのだけど碧を下げた意図は、よりCHには出し手に寄った役割を担ってもらう為だったと思う。この後の学投入も視野に入れて前線にCHが突撃していくのではなく、SHがFWが落としたこぼれ球を拾って速い攻撃をしていきたかったのだろう。そのパスの出し手として中長距離パスでトランジション時でも正確にスペースをつける憲剛を残したんじゃないかと。

阿部→学の交代で前述の通りの形にシフトチェンジしたのだけど、選手交代で違う色のチームになれることは控え特徴のある選手が揃っていると言えるし、選手を代えないと変わらないという個々のキャラに依存しているとも言える。それは名古屋もなんだけど。悪いとかではなく今が進化の過程なんだなと。ダミアンを込みで前半のやり方を、知念でも後半のやり方を出来ていく過程を楽しみたいとふと思った。今はまだオプションの1つに過ぎないけれど、今後川崎がどちらにウェートを置いていくのかも興味深い。

上記の交代がありオープンな展開で試合が進む中で、後半の大きなチャンスは先に名古屋が。GX10が抜け出してGKと1対1になったけど決めきれず。次のチャンスは川崎でダミアンがニアをぶち抜いて同点に。ゴールが決まったのだから当たり前なんだけど、その後の形勢に影響を与えた2シーンだった。

オープンな展開で輝く両チームのSHに対してお互いのSBの疲労感も目に付いた終盤で、名古屋はマテウスに代わって入った和泉を相馬の投入時にSBに下げられたけれど、ビハインドから追い付くためのシフトチェンジで交代枠を2つ使った川崎はSBを代えることが出来なかった。名古屋のように現状出ているメンバーを違うポジションに移動出来ればSBを代えることも出来たかもしれないけれど。各ポジションにスペシャリストを揃えている川崎は交代枠3つの使い方が非常に難しいチームだなと思った。

終盤にダミアンのケガによって川崎は攻めに転じることが出来なくなってしまったけれど、ハイレベルで強度の高いゲームは1-1で終了。
引き分けで終わったもののスタンドは大きな拍手に包まれて、勝ちゲームでも感じられない雰囲気で幕を閉じた。

まとめ

風間監督の指揮する名古屋と3年前まで指揮をしていた川崎の戦いで注目度も高かったゲームであったが、高かった前評判さえも覆す好ゲームだった。

両チームともに繋ぐ技術とハイプレスで自分たちの時間を作ること(=相手の時間を無くす)を身上としているけれど、両チームのゴールが前線へのロングボールから少ないタッチで決まるというのも面白かった。
両チームともに強みを活かしたゴールではあるけれど、恐らく川崎時代の風間監督のイメージとは異なるものだったと思う。毎試合観ているので川崎の変化は感じられるものの、名古屋はそこまで追いかけられていない中で今節を見て風間監督も先を進んでいるんだなと感慨深かった。当たり前だけど。

僕は名古屋というチームは川崎にとってライバルだと思っている。
似たような戦い方で、だけど完全に同じではない。辿ってきたルートも異なり、(きっと)これから進む未来も違う。そして、同じ月日を共に過ごしたわけでもないのだけれど、同じ師を持ちその師から授かった武器を磨いてきた者同士だからこそ通ずるものがあると思う。

同じ師を持つ同門同士ということで、僕がパッと浮かんだのは桂小五郎高杉晋作だった。2人が対立していたわけではないし、何なら桂小五郎は松下村塾の門下生ではないのだけど、浮かんでしまったのだから仕方ない。同じく吉田松陰の教えを受けて幕末の風雲に立ち向かった志士のように後世に語り継がれる2チームになるのか。その2人の姿に重なるかどうかは今後風間監督が名古屋を去ってから見られるようになるのかもしれない。今後も行く末を見守っていきたいと思う。
どっちがどっちなのかも分かってないしちょっと無理矢理繋げたけどもいいよね!笑

風間ダービーなんて言われてるけど、数あるダービーの1つにしたくない特別な感情を持たせてくれる戦いを8月アウェイの地でも演じてくれることに期待したい。
でも、怪我でプレーできないのにピッチに残すのはダメ!絶対!
今回はこの辺で。それでは。

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