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【マッチレビュー】2019年 J1リーグ第2節 川崎フロンターレ(H)×鹿島アントラーズ(A) フュージョン成功には月日がかかる

皆さんこんにちは。
第2節のホーム鹿島アントラーズ戦のマッチレビューをお送りします。
開幕ホーム2連戦の上に昨年に引き続き第2節での金J。
オリジナルベースボールシャツのプレゼントやYU-KI&DJ KOOによるハーフタイムイベントもあり賑わいがありました。

さて、今回も少し前置きを。
鹿島といえば最近だと2016年のチャンピオンシップ、2017年の天皇杯、2018年のルヴァンカップとトーナメントでは毎年のように苦渋を味わわされている相手。川崎サポには鹿島を倒さない限りはタイトルを取ることが出来ないというイメージがリーグ戦2連覇した今でも色濃く残っている事でしょう。
そんな鹿島は開幕直後で野戦病院状態。
鈴木優磨、山本脩斗、伊東幸敏、チョンスンヒョンがケガで離脱。開幕戦を欠場した三竿はこの試合でのベンチ復帰が噂されていましたが、シーズンオフに小笠原、昌子、西ら主力が抜けた上でのこの状況は早くも正念場?。ホームで迎えた開幕戦も大分に敗戦でACL本選出場を決めた喜びは何処へ。。
対する川崎は多摩川クラシコでの開幕戦をスコアレスドロー。
4-4-2でのブロックで中央迎撃→SB裏を突かれるカウンターに加えて両SH東久保に苦しみプレスをハメきれず苦戦を強いられました。
とは言え、後半の中盤では試合を完全に支配し迫力のある攻撃を展開。
昨年同様にエース小林をフィニッシャーに置いての攻撃は健在です。
新加入選手とのフィットは個人差が出てくるところですが、出来るだけ長い時間一緒にプレーさせることで融合を図りたいところ。
新加入選手を使いながら粘り強く勝ち点を積み重ねていきたい。

前回対戦の振り返りとしては昨年のリーグ後半戦、10月に行われた鹿島スタジアムでの1戦でした。鹿島はリーグ優勝争いに残るために、川崎は終盤に好調の鹿島を優勝争いから蹴落とすために、互いにとっての大一番という位置付け。
季節外れの暑さの中で0-0のスコアレスドローで終わったこの1戦ですが、川崎で際立ったのは右サイドを蹂躙した今オフに清水に移籍したエウソン。
あれだけスペシャルな選手と比較されるのは大変だと思いますが、やはり今節スタメンの新加入馬渡のいる右サイドに注目してしまいます。

それでは長くなりましたが今回の目次はコチラ。

スタメン
前半
●序盤(~15分)
・それぞれのボール保持
●中盤(~30分)
・鹿島同点ゴールの布石と狙い

・川崎崩しの狙い
●終盤(~45分)
後半
●序盤(〜60分)
・鹿島セットDFの微修正
・崩しを仕掛けるタイミング
●中盤(~75分)
●終盤(~90分)
まとめ

スタメン

●川崎フロンターレ(水色)
<GK>チョンソンリョン
<DF>馬渡、奈良、谷口、車屋
<MF>大島、守田、小林、中村、家長
<FW>ダミアン
●鹿島アントラーズ(白色)
<GK>クォンスンテ
<DF>内田、犬飼、町田、安西
<MF>土居、永木、レオシルバ、安部
<FW>伊東、セルジーニョ

■前半
●序盤(~15分)
キックオフから先制するまでは川崎のボール保持の時間が長く、鹿島はミドルゾーンでセットしていたのでミドルゾーン~川崎のアタッキングゾーンでの攻防に。先制後は鹿島がボールを持ち川崎を押し込む時間もありました。
まずは序盤で見られた両チームのボール保持時の形を①ビルドアップと②崩しの局面で見ていきます。

・それぞれのボール保持 

①川崎のビルドアップ ※図はイメージです

川崎のビルドアップ時は定番のCHが降りて最後列を3枚に可変。
両SBは最前列まで上がり、SHは内側にポジションを移します。
大島守田の両CHが最後列に降りるシーンも何度かあり、システム表記をすると3-1-6か4-0-6のような形になっていました。
鹿島は4-4-2をミドルゾーンに構えます。
キックオフ直後もプレスに出ることはありませんでした。
4-4はコンパクトに揃えて2は残ったCHへのコースを閉じます。
鹿島左SHは大外はまず捨てて中を警戒。小林家長が自軍SBの前に立っておりそこへのコースを切るようにSBと同じレーンに立っていました。
右SHの土居は安部よりもSBを警戒するような立ち位置を取っていました。
川崎は鹿島の2の間に、残ったCHを降ろしてCBから縦パスを入れて落とすを繰り返してしっかり締めてくるかを確認。真ん中に寄せてから浮いているSBに最後列から縦パスを入れて前進をはかりました。

②川崎の崩しの局面 ※図はイメージです。

川崎は主に右サイドから前進→エリアへの侵入をはかります。
馬渡にボールが入るとダミアンが楔を受けにニアに寄ってきます。ダミアンがハーフレーンに入ると小林はサイドに抜け、ダミアンがいた中央に憲剛が入ってくる。同レーンに味方が被らないようにポジションを移動する動きが見られました。

①鹿島のビルドアップ ※図はイメージです。

次は鹿島のビルドアップです。鹿島もCHを1列降ろして最後列を3枚に可変。SBを高い位置にあげてSHを中に絞らせます。川崎のズラしと似たような立ち位置を取っていました。また、セルジーニョは伊藤のやや後ろに立っており縦関係のように見えました。
憲剛のプレスが入った最初のシーンでは町田はパスミスをしてしまってました。別のシーンでは家長が前に出て永木に当たり、ダミアンが犬養につき、憲剛はシルバをマークしたまま。という状態もあったので足元が得意では無い選手でそこをあえて空けているのか?と考えましたがその後は安西にボールを届けていました。優先順位的に町田が1番低かったということかもしれません。

②鹿島の崩しの局面 ※図はイメージです。

上のビルドアップが成功したところからの崩しになります。
安西がサイドで持ち、川崎は馬渡が縦を切る立ち位置を取ります。
中に誘導して待ち構えていた大島と挟み撃ちを狙いましたが、安西は直前でレオシルバにパス。土居が降りてきて車屋が付いていったことで出来た裏のスペースに内田が入り込んでエリアへと侵入。
鹿島も同じレーンや高さに味方が被らないようにズレて相手の守備を動かすことでスペースを作り出して崩しを計っていました。

●中盤(~30分)
序盤の流れのままに鹿島がボールを持つ展開に。
川崎もDFラインを上げてミドルゾーンで構える動きを見せますが内田のロングパスから伊藤に抜け出されて鹿島に同点とされてしまいます。
同点とされた川崎も鹿島のセットDFに対して狙いどころを探る時間に。
ここでは鹿島の得点の為の布石と狙い、川崎の崩しの狙いどころについて書いてきます。

・鹿島同点ゴールの布石と狙い ※図はイメージです。

上図は鹿島の得点シーン。Twitterで戸田さんも解説していましたが、抜け出す前に伊藤が奈良に体を当てて自分の走るコースを作ることで有利な状態でボール落下点に入ることが出来ていました。ワンタッチからのシュートも見事でした。
このシーンの数分前に犬飼・町田それぞれから川崎CB裏にロングボールが出されていました。ここで確認したかったのはおそらくGKとCBの動き。どっちが対応するのかを見るためかと思います。
川崎のGKはあまり高い位置を取らないので、CBのカバーエリアが非常に広いです。
CB裏にロングキックを入れた時のGKのポジションとCBの動きを確認しつつ、2回目でも同じような動きになるか確認+あわよくばチャンスにというボールを蹴り、GKの立ち位置が変わらないことを見て内田のロングパス→伊藤のゴールとつながったのではないかと。(2回目のロングパス時の奈良の対応も少し怪しかった。)
上図の黒いブロックのところは内田がボールを持っているときに居るべきGKのポジションです(所説あるかもしれないですが、私が教えてもらったのはここでした。)ボールの落下点付近でしたので、この通りにソンリョンがポジションを取っていれば防げたゴールではありました。
ただ川崎のGKのポジションに基準が無いと言わけではなく、ここはCBが処理するところだよと決まってはいたのかもしれません。多分そうかなと思ってます。だとすると、なんとしてもCBが対処しなきゃいけないものではありました。

・川崎崩しの狙い ※図はイメージです。

川崎が左でボールを持った際には安部が逆サイドに絞らずに小林を気にしているように見えました。(頻繁に馬渡の方を見ていたのでSBのこともチェックしてた)絞らないとレオシルバとの距離が長くなりスペースが出来ます。川崎は安部₋レオシルバ間の守りはどうなっているのかの確認作業に入り、憲剛が入るとどうなるか。大島だとどうか。選手とボールの出入りを繰り返して、このスペースに入るとレオシルバか安部どちらかがついてくることを見て家長と小林の位置をチェンジ。家長が入った右サイドを中心に攻めるようになります。

●終盤(~45分)
家長と小林がチェンジしたことで、ビルドアップ→チャンスクリエイトの右サイド、フィニッシュの左サイドのすみわけに。
家長が安部₋レオシルバ間に入ると大外のSBを気にしながらも安部が寄ってくるので、あえて早めに入って安部を寄せてからサイドに展開してSBが前進→深くまで行ければそのまま。行けなければ家長が裏に抜けることで深さを取ってました。深さを取ってから、降りる動きをすることでディフェンスを前におびき寄せ、もう一度裏を狙うという形でチャンスに。前半40分過ぎの小林落とし→車屋ミドルは、上の形からできたものでした。右から侵入できないときは中央に戻してから小林の斜めに走りこむ動きに合わせてロブパスでフィニッシュまで行く。みたいな小林がサイドからエリアに入る動きを活かした攻撃を展開出来ていました。

■後半

●序盤(〜60分)
お互いにメンバー交代はなし。川崎は前半途中からチェンジした家長と小林もそのままで後半に入ります。川崎は後半開始からギアを上げて鹿島ゴールに迫ります。パスのテンポとスピードが上がったことでゴール前に迫るシーンもありましたが、この時間に優勢に進めたのは鹿島でした。カウンターから川崎のラインを押し下げて遅攻→ポゼッションで川崎を押し込み時間もありました。

・鹿島セットDFの微修正 ※図はイメージです。

前半は3列目のCHへのコースを2トップが警戒して
脇の部分からの侵入は許容する振る舞いを見せていた鹿島でしたが、
後半序盤では左右で微修正をしてきていました。
鹿島右サイドに憲剛orCHが降りた時はSH土居があたりに行きます。
ただSB車屋へのコースは切れていないのでそこを通されるとすぐにプレスバックをするようになっていました。
逆の鹿島左サイドでは前半度々SH安部が当たる場面もありましたが、後半では安部は前に出ずステイ。
代わりに2トップがスライドして脇をケアしに来ていました。
4-4のブロックもサイドに絞ることで2トップ脇からSBに出る時に角度が狭まり数歩下がってSBが受けるシーンが増えて、攻撃が停滞する原因になっていたと思います。

・崩しを仕掛けるタイミング

右サイドで見られる形。前半も小林が抜けてそこにダミアンが入って馬渡からのパスを受ける。なんてシーンはありましたが、後半もこの形は見られました。前半と違うのは相手を寄せたスペースに誰も入ってこなかったこと。上図のシーンでは白いブロックに誰も入って来ずボールを後ろに戻すことになります。小林が左に入ったことで得られるメリットは斜めにエリアに侵入してフィニッシャーになってくれることだと思います。白いブロックにそれぞれ味方が入ってくると落としを受けて出す人とゴールを狙う人が揃いチャンスにつながる確率は上がるんじゃないかと。それが成されなかったのは他の選手とのタイミングが合っていないからだと僕は感じました。この崩しに絡んでるのが新加入のダミアンと馬渡だからそう感じるのもあると思います。

●中盤(~75分)
この時間帯からは川崎が押し込む展開に。
鹿島がカウンターに振り切ったことによってボールを持てる時間が増えたという側面もあると思います。ただダミアンと交代で入った阿部(63分)や大島が前でプレーすることによって攻撃の強度は上がっていきました。
鹿島はミドルゾーンで構えながらも徐々に押し込まれていきますが、クロスやシュートをGKキャッチ→左SH安部や交代で入った山口(安部→70分)が馬渡の裏へのカウンターが脅威となっていました。
川崎は阿部が入ったことで小林をトップにずらして阿部を左SHに配置。
阿部を真ん中にするのかと思いましたが去年の形に戻しましたね。
前線は昨年優勝メンバーとなりスムーズにポジションチェンジを行いエリアに侵入していきました。鬼木さんは守田にジェスチャーで右の裏を使え?走れ?みたいな指示を出していたように見えました。DAZNでも守田!と叫んでる鬼木さんが映ってましたね。後半は左からの展開が増えていましたが、右から崩して左で仕留めるって形の方が作れそうな印象はありました。

●終盤(~90分)
終盤も変わらず川崎がボールを持つ展開に対して鹿島は引き分けOKながら度々カウンターであわよくばの勝ち越しを狙う様相。鹿島カウンターの狙いは変わらず右SB馬渡の裏のスペース。
川崎は左から攻めるシーンが増えるもシュートまで結び付けられず、84分に知念・登里を同時投入(知念→馬渡・車屋→登里)。それに伴い家長(右SH→トップ下)、憲剛(トップ下→CH)、小林(FW→右SH)、守田(CH→右SB)のポジションを変更します。鹿島も84分にセルジーニョ→金森、93分に伊藤→三竿と選手交代。ロスタイムに家長ミドル→知念シュートのシーンが唯一のチャンスでした。試合はこのまま1-1のドローで終了となり、開幕からホーム2連戦は2引き分けで勝ち点2に留まることになりました。

まとめ
鹿島は、特に後半に引き分けOKのブロック作ってカウンターに振り切ってきたので苦戦したなーという印象です。前節の多摩川クラシコから川崎のつくべきところを見つけて執拗についてきてました。
ホーム2連戦で勝ち点2しか取れなかったのは痛いなーと感じますが、まだリーグ戦も序盤。この2試合では何も決まらない段階なので悲観的になることは無いと思います。この2試合で共通して狙われた場所(右SB裏)や狙われたキッカケ(クロスやシュートのクリアを拾えず)などのチームとして修正してやり方を作っていくべき課題もありますけど、開幕から完璧なチームはありませんから現状で粘り強く勝ち点を積み重ねてチームが固まってきてから追い上げるのでも遅くないと思います。精神と時の部屋があればフュージョンもすぐに成功できそうなんですけどね。来週のACLでは各ポジションの序列も確認できるかなと思ってるのでそういう意味でも楽しみです。
今回はこのへんで。それでは。

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