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【マッチレビュー】 「"Found" my Frontale 2018」 2019年 J1リーグ第5節 松本山雅FC×川崎フロンターレ @syu32_soccer

トップ画像は川崎フロンターレ公式HPより

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皆さんこんにちは。
今回は先週末の5節、松本戦を振り返ります。
今節でようやくリーグ戦初勝利となりました。
リーグ戦オンリーのレビュワーの僕にとっても今シーズン初の勝ち試合レビューで嬉しい限りです。
ゴールを決めたのが知念と阿部というのも嬉しいですね。
スタメンは今年の新戦力が0となった今節。
より連携の取れているメンバーでの試合ということで、憲剛の試合後コメントの通り目が揃っている印象を受けました。
それでは内容の方に入っていきます。

スタメンと噛み合わせ

川崎フロンターレ(白)
GK 1チョンソンリョン
DF 27ラルフ 3奈良 5谷口 2登里
MF 25田中 6守田 41家長 14中村 8阿部
FW 20知念
松本山雅(緑)
GK 1守田
DF 5今井 31橋内 15エドゥアルド
MF 3田中 35宮阪 14パウリーニョ 42高橋
FW 7前田 8セルジーニョ 10レアンドロペレイラ

●噛み合わせ
各ケースでの状態と、注目ポイントをまとめています。

松本のボール非保持の形

試合開始から積極的に前からプレスをかけたのは松本。
川崎最終ラインに対して同数でプレスをかける攻撃的な守備で試合の主導権を握りにきていました。
まずはその松本のボール非保持の形から見ていきます。

ボール非保持時の松本は2シャドーをSHの位置に降ろして5-4-1の配置にするのではなく、シャドーの立ち位置をキープさせます。フォメ表記するなら5-2-2-1のような形をとっていました。
シャドーにはなるべく高い位置をキープさせて守→攻の切り替え(ポジティブトランジション)を速くして相手ゴールに迫る狙いと、それを伺わせることで相手DFラインにプレッシャーをかける狙いがあったと思います。
松本の非保持の形はざっくり2パターンに分けられます。

イメージ図

1つは中央を封鎖する形。前の5人が5角形になる配置を作り、その中にボールが入ると圧縮してボールを奪いカウンターを狙う。

イメージ図

もう一つはサイドにボールが出た時にボールサイドの選手が大きくスライドして囲い込んで奪いカウンターを狙う。
特に川崎RSBラルフのところを狙いどころとしていました。

どちらも高い位置で奪ってカウンターを狙うことを目的としていたと思います。そしてCHにはかなりの運動量が求められる形です。
前プレでもセットDFでもシャドーをカウンターに備えて高い位置をキープさせるために、その裏のカバーを任されてました。
但し、2シャドーも常に高い位置にいるわけではなく状況次第ではCHと同じ高さ(5-4-1のSHのポジション)にまでは降りてDFをする場面も見られました。
前半序盤は前プレがハマり川崎の後ろを混乱させることに成功していました。高い位置で奪ってエリアに迫るシーンを作れていましたが、チャンスに繫げる前にミスが続いたために決定機には至らなかったですね。
でも試合の入り方が良かったのは松本の方だったと思います。

価値の高かった一手

イメージ図

バタバタしてしまった試合序盤の川崎。
ボールが前に来ないし、安心して前に出ることも出来ないのでまずは後ろを立て直すことから始めます。
殆どのポジションで1対1を作られていた中でSHが1列降りて時間を作ります。
上図は41家長が降りた時の場面。
SHが降りたのは上図のようなシャドーの脇のスペースだったと思います。
ここに降りることで、まずは後ろで数的有利となり落ち着いてボールを持てるようになりました。
上図のスペースでSHがボールを持つとシャドーが当たりに来てそれに合わせてCHが前に出るのでその裏に大きなスペースを得ることに成功。
バタつきを抑えると共に、松本の前線の守備を無力化し、更に相手の中盤とDFラインの間(第3レイヤー)に入り込み攻撃を展開できるようになりました。まさに一石三鳥。飛先の歩交換に3つの得あり。価値の高い一手だったと思います。

前節までの松本の試合を観れていなかったんですが、前半8分には上図の対応を川崎がしていたので松本の守備の仕方は今までと大きく変わっていなかったのかなと。違うかもしれませんが。

スペースと時間をどこで得たいのか

川崎でも良く見られる、選手が列やレーンを移動して立ち位置を変える動きですが、この目的は相手に新たな判断を強いる事。と↑記事でらいかーるとさんが仰っていて、僕もその通りだなと思います。
そして、相手に新たな判断を強いた先に、スペースと時間を得ることが出来るんじゃないかと僕は思っています。
判断を強いることで相手を動かす・判断が遅くれ動きが遅くなるとかで自分たちの使いたいスペースとプレーするための時間を得る事が出来て、よりゴールを奪う確率を上げられるということかなと思います。

前項で書いた家長が相手のシャドー脇に列を降りた場面では、CHと家長どちらを見るか?という判断をシャドーに強いています。それと同時に相手CHにも留まるか前に出るかの判断を強いてもいると思います。
その結果、後ろで持つ時間と相手CH裏のスペースが使えるようになりました。
スペースと時間をどこで得たいのか。というのは攻撃時の狙いはどこか。と同義だと思います。その川崎の狙いはWBの裏とバイタルエリアだったと思います。

ラルフ
「相手のウィングバックを引き出すことを意識しながら、あとは相手のカウンターのケアのところ。自分のところで相手の守備のスイッチを入れられていたので、そこはポジショニングが悪かった。裏に抜けるのか、前もって足元に引くのか。前半の最初は引っかかったので、そこの判断は、自分のところで修正していった。あとは右サイドでアキさん(家長昭博)とケンゴさん(中村憲剛)でボールを回しながら、隙を作ることもできていたと思う。」
https://www.frontale.co.jp/goto_game/2019/j_league1/05.html より抜粋

まず1つ目のWBの裏について。
この日もRSBで出場したラルフの試合後コメントからも、WBを引き出したかったということは分かります。
試合の中でもWBを食いつかせてWB-CB間に家長が走りこむといった流れは多く見られました。
実際に先制点の場面も列を降りる鈴木にWBが食いついて広がったWB-CB間を家長が抜け出したことで相手エリアに侵入したことがキッカケでした。
こんなの言わずもがなだろって言われちゃうかもしれませんが。。

反町監督
「両サイドバックが高く、ボールサイドのボランチもという中で、粘り強くディフェンスすること、サイドからのボールに対応できるかということをやってきたのですが、ある程度、自分達の分かっている中でやられてしまったということは少し残念でした。」
「例えばスピード感であるとか、サッカーはスピード勝負になりますので、足が速いというスピードだけでは無く、今日も見ていれば分かりますがそれだけではない。そのスピードを上げるべく努力はしていきますし、狭いエリアでボールを動かすということも、同じエリアで同数でやったらうちはボールを取れないと思います。うちはすぐに取られてしまうと思います。同じトレーニングを5対5でやったとしても、でもそれでも我々は6対5にしていかなければいけない。7対5にしていかなければいけない、その7対5にしていくためにはそれなりの覚悟と運動量が必要になりますし、簡単に言えばそういうことになりますね。」
https://www.frontale.co.jp/goto_game/2019/j_league1/05.html より抜粋

そして2つ目のCH。
前項で書いた通り松本のCHは任されているエリアが広く、ピッチのいたるところをカバーしていました。
試合後のコメントからも指示であることは感じられました。
松本のボール非保持のところでも書きましたが、CHはサイドのフォローに真ん中にと縦横無尽に動いていました。
先に書いた事の繰り返しになりますが、松本はシャドーを高い位置になるべく残しておきたいからこそCHのカバーエリアが広くなっているからだと思います。
で、川崎は松本の守備の仕方を利用してCHをつり出して中央にスペースを得ようと考えていたと思います。

イメージ図

上図では既に松本の2CHがサイドに引き出されています。(35と14)
この場面になる前に、一度WB裏からサイド深くに前進→家長・守田がボールに寄っていくのを2CHが捕まえにいってそのままサイドに引き連れていく→ボールを一度下げる→上図の状態という感じです。
2CHを動かして中央にスペースを作りましたが、ボールホルダーの6番守田は再び右サイド奥へ侵入することを選択しましたが中央でフリーの選手を作り出せていました。
このシーンの後、16分40秒ごろにベンチ?から「守田、阿部を見ろ」と指示が出ていたのを聞いた人も多いと思います。
上記シーンほどじゃないにしても相手CHをスライドさせて出来たスペースに阿部が入り込むも守田は前の知念への縦パスを選択したことによるものだったと思います。おそらく2度続けてそこのスペースを使えなかったことで、そういった指示が出たんじゃないかと。

重心を下げざるを得なかった松本

ここまで書いたように川崎は松本のCHを動かすことで優位に試合を進めていました。
その前にシャドーを動かすことで松本の前線の守備を機能不全にしていたからこそでもあると思いますが。
そのCHが動かされてできたスペースを2シャドーが降りて埋める場面が増えてきて5-4-1の状態で松本はプレーするようになります。
ただ、2シャドーが降りて守るようになったのはベンチからの指示だったようには感じません。

イメージ図(35と14がCH)


というのも、2シャドーが明確に本来SHが立つ位置に入った訳ではなくCHが空けたスペースを埋めるように動いていたので、中盤ラインの並びが"CH-CH-シャドー-シャドー"のようになることが多かったからです。※上図参照
指示があったにしろ無かったにしろカウンター要員としていた2シャドーが下がり押し込まれる時間が長くなっていき、孤立した1トップのレアンドロペレイラまで下がることになった松本のポゼッション率は試合が進むに連れて下がっていくこととなりました。※下図参照
CHを留めてもその脇を使われるだろうし、WBが迎撃に行くとSBやSHがそのギャップを使ってくるだろうしでシャドーを下ろして人数をかけて守るしかなくなってしまい松本は押し返すことができなくなりました。

http://www.football-lab.jp/mats/report/ より抜粋

まとめ

まとめとなっていますがほんの少しだけ後半にも触れます。
後半は川崎が前半の反省を活かして主導権を握るべく、前からプレスをかけてサイドに誘い込んでボールを奪取。松本も負けじと前に出ますが、前半と同様の形で川崎は落ち着いて対応していました。
松本は前線3人を総入れ替えしたり、終盤にエドゥアルドを前線に上げて攻勢に出るも決定機を作ることは出来ず試合は終了。内容的にも川崎の完勝と言っていいかなと思います。

松本は後半から変化があるかなと思いましたが、2CHがややステイするようになったように見えたくらいで大きな変化は感じられませんでした。
前線の3人はカウンターで力を発揮できるメンバーだったと思いますが、そこに届ける前の段階で上手くいっていなかったと思います。
アバウトなボールに対しても川崎がしっかり守れていた場面もありましたが、使いたいスペースとタイミングが違ったり被ったりとチグハグな印象でした。松本の時間帯は試合序盤の5~10分弱くらいだったと思います。
川崎はガンバ戦と比較して各選手のタスクが整理された印象を受けました。
例えば、知念は前節まででは降りて起点になる動きが多くありましたが、今節では基本的には相手DFラインとの勝負に専念しており、DFを背負ったプレーや裏に抜ける動きが多く見られました。エリア内でプレーする時間も長かったんじゃないかと思います。今節ゴールを決めたのもフィニッシュワークのウエイトを増やしたところに要因があると思います。
他にも家長のスプリント数が戻ってきたり、阿部が後ろのフォローから前線のスペースを使う動きに奔走したり、ノボリとか碧とか11人がロジカルに動けていたと感じました。

中村憲剛
「自分たちがやりたいことはある程度できたと思う。目が揃っているメンツというか、やりたいことをある程度理解しているメンバーだったので、大体こういう展開になるかなというのは予測していた。相手も前半頑張っていたが、そういう流れのなかで前半最後に点を取ることができた。相手を見ながらのプレーはできていたかなと。」
「まだまだ相手に読まれる範疇でプレーしているところもある。ただ、そこを見すぎて自分たちがやれることをやらなければ本末転倒なので。自分たちがやってきたことは何かを思い出す意味では、ひとつ結果が出たいいゲームだった。」
https://www.frontale.co.jp/goto_game/2019/j_league1/05.html より抜粋

今節は憲剛のコメントの通り、目が揃っているメンバーだったので相手を見ることに集中して試合を進める事が出来たと思います。
松本のやり方に対しても「そのパターンも知ってる」という赤木に対する河田のような横綱感が出せてました。
前節までは自分たちを見る事にリソースを割かれて相手を見てプレーすることが出来なくなっていたと思うので内容も改善されましたね。
これもコメントの通りですが、自分達が立ち返る場所にまずは戻ることが出来た事が収穫だったかなと思います。昨シーズンの自分達の形を見つけ出せたのは良かったですね。開幕からチグハグな状態でマイナススタートだったのでプラスマイナスゼロに戻せたかなと思います。
そして新戦力をここに加えていかないといけませんが、鬼さんにはバランスを崩さないように気を付けてマネジメントしていって欲しいと思います。
試合終盤に失点するという課題は一先ずクリア出来ましたが、昨年から課題のままになっている4-4・5-4の強固なブロックを作られた相手に対しても、今日のような試合が出来てようやく前進だと思います。こっちの課題については先送りになったということは忘れないでおこう。
と、勝った試合で本当はめちゃ嬉しいけどちょっとだけツンデレ感を出して終わりたいと思います。
久しぶりの勝ち試合で本当はもっと色々書きたいけど、長くなりそうなのでこの辺で。それでは。

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