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【マッチレビュー】 まずは自分探しの旅へ 2019年 J1リーグ第4節 川崎フロンターレ×ガンバ大阪

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皆さんこんばんは。
今回は先週末の第4節。
川崎対ガンバの試合を振り返ります。
今までは1試合の振り返りをメインにやってきましたが今回は趣向を変えてみました。
今節の敗戦もそうですし開幕以降やや下降線を辿っている印象を持っています。その原因の1つはこれなんじゃないかと感じた部分があったので、そこを深掘りしていこうと思います。

それでは今回の目次です。

試合の振り返り(簡易版)

川崎フロンターレ(水色)
GK 1チョンソンリョン
DF 27ラルフ 3奈良 5谷口 7車屋
MF 25田中 34山村 41家長 14中村 16長谷川
FW 20知念
ガンバ大阪(白)
GK 1東口 
DF 5三浦 13菅沼 19キムヨングォン 4藤春
MF 28高 10倉田 8小野瀬 7遠藤 9アデミウソン
FW 16ファンウィジョ

川崎は、けが人+コンディション不良の選手が続出中で小林までも欠場。
大島守田もスタメンから外れており、CHは今回は3試合連続スタメンの田中碧と新加入の山村のコンビに。右SBはACLで途中出場したラルフが今季初スタメンでした。
ガンバはミッドウィークのメンバーとほぼ変わらず。
特記事項は三浦が右SBに入り菅沼が今季初スタメンとなったことでした。

試合は川崎がボールを保持しガンバがブロックを作ってカウンターを狙う構図。家長や好調の長谷川を中心に左サイドから攻撃を繰り返すも決定的な場面を作り出すことは出来ませんでした。
ガンバは守りながらもファンウィジョ・アデミウソンの強い速いコンビ+遠藤・小野瀬・倉田が絡み強力なカウンターで何度も川崎ゴール前に迫っていきました。
川崎は今まで中盤でタクトを振っていた大島・守田の役割を右SH家長に託して攻撃を組み立てます。本来居るべき場所に家長が居ないので、ボールロストしたとき川崎の右サイドは下図のように設計されていたと思います。

※イメージ図

この形で抑えることは出来ていましたが、それ以上にボールロストの回数が多く何度も自陣に戻らされ、それがボディブローのようにじわじわと効いてきて、後半に決壊することになります。
ボール保持でのミスが目立ち、ピッチの11人の目が揃っていないせいか、相手を見る余裕のなさを感じる試合展開でした。
試合は後半ロスタイムにこの試合右SBで出ていた日本代表三浦のゴールが決まり1-0でガンバが勝利。ゴールシーンの数分前からガンバのボール保持時間が長くなっていて、川崎は守備の人数は揃っていてもパスの受け手を抑えに行くのが遅れてしまいズルズルとラインを下げさせられていました。
決勝アシストは左SBの藤春。相手の両SBがゴールに絡んだことは偶然ではなく、CH不在を補う形を実行するもミスが続いてスタミナを削られたことで生まれたゴールだったと思います。
今節の敗戦はチームのやり方的に起こりうる形で、そこを突かれた結果だったと思っています。
ここからは、チームのやり方について家長とCHに焦点を当てて書いていきます。

ボール保持時の家長とCH

※イメージ図

川崎のボール保持ではどの局面でも右SH家長が顔を出してきます。
左サイドからビルドアップ。もしくは崩しにかかる局面でも同様です。
上の1枚目は左サイドからボールを前進させようという場面(ビルドアップ)。家長はCHのような位置に入りボール回しに参加します。後方から組み立てる事は勿論、守備ブロックの間に入ったりして相手の守備基準をズラすことも目的に含まれている思います。
この時本来のCHは家長とポジションが被らないように34山村は右SHの位置へと移動しています。この試合では家長とポジションを入れ替えるのは山村が殆どでした。
家長が後ろで作って、CHはバランスを取り、SBは幅を取り、2列目の選手が相手の第3レイヤー(中盤ラインとDFラインの間)で待ち受けるというのが最近の川崎のビルドアップの形です。
なぜ右SHの家長にこのような役割を与えているのかは、川崎CHの役割と大島守田の不在が関係していると思っています。詳しくは次の項で。

※イメージ図

こちらの図は崩しの局面。
ここでも家長は左サイドに寄って崩しに関わります。
左サイドの4人はポジションを入れ替えながら矢印の通りに白いゾーンに侵入する機会を伺います。
ここでも家長は相手の守備ブロックを突破するための動きをしますが、自分自身が白いゾーンに入り込むこともしていきます。これは昨年のプレーでも見られました形で、エリア内でシュートもしくはシュートに繋がるパスを供給する役割を担っています。
そして2CHですが、この試合では碧がボールロスト後の守備やこぼれ球を拾って2次攻撃に繫げる為にやや後方で待機をしていました。
ガンバの遠藤もボールを奪った後に素早く攻めるために待機していたのでそこを抑えるのもあったと思います。
山村は逆サイドでアデミウソンを警戒しつつもエリア内に侵入するタイミングを伺います。図では知念がニアサイド、山村がファーサイドに矢印を書きましたが逆に入ることもありました。
このように2CHはチーム全体の攻守バランスを考えたポジショニングをしなければならず、ボールが両チームの陣地を行ったり来たりする回数が増えるほど、他のポジション以上に運動量が求められます。
この試合でもガンバは何度も前線のファンウィジョ・アデミウソンから速い攻撃を繰り返しており、徐々に2CHのスタミナを削られていきました。
この役割自体は大島と守田に代わっても概ね変わりません。
小林・阿部・ダミアンなど前線のキャラクターによってCHが入っていくポジションやボールを供給するエリアに変化はありますが。
ただ、大島・守田が入ったときの家長の役割は変わります。
Jリーグでは個人のヒートマップが出されていないので印象になってしまいますが、今季の開幕戦では家長は多くの時間を左SHの位置でプレーしていたと思います。今節、家長がやっていた組み立てを開幕戦ではCHの大島・守田が担っていたからです。その2人が欠場した今節では右SHの家長が本来のポジションから離れてCHのポジションに入り組み立てを担当していました。

川崎CHのタスク

川崎のCHはボール保持時はビルドアップの入口や自らが持って前進をさせ、崩しの局面では相手DFにスペースを作る役割からフィニッシュに関わるところまで多岐にわたります。
試合の組み立てについてもCHが担いますが憲剛、大島、家長が主に担当します。
その大島が欠場となり組み立てをする選手が減ったことで家長がCHの位置でプレーするようになっていると思います。
なぜ憲剛ではなく家長なのか?それは本来の役割を代用できるかどうかかなと思ってます。
家長が前でプレーする場合には、前線でタメを作ること、崩しの局面でのコンビネーション、シュートもしくはその一個前のプレーを担います。
これは今節で言えば知念、長谷川、ラルフが担っていたところです。
そして憲剛も崩しの局面やシュートもしくはその一個前のプレーには絡みます。ただ、前で相手のビルドアップに制限をかけるプレーやコーチング(ネガティブトランジションでも同様)は今のところでは代用不可だと思います。
その2つを天秤にかけて家長に主にプレーをさせているんじゃないかと。憲剛が後ろでプレーすることもあるのは、相手の守備基準をズラすことや相手を引き出す意図があったりするからだと思います。

話を戻して川崎CHのタスクについて図を作って説明を。。と思ってましたがものすごく分かりやすく纏められているツイートがあったのでこちらを!

このツイートの発端はマリノスのボール保持の形からということみたいですが、ビルドアップ~崩しの局面にかけて優位を作っていくことは川崎にも当てはまる部分で、川崎ではそれの大部分を2CHが担っています。
重要なのは数的優位を作る事ではなく優位を保って前進をすることです。
プレーの例を挙げると守田や大島がよくやるCBからのパスをトラップするふりしてボールに触れずに前進するアレとか。ビルドアップに時間をかけて相手を引き出してから一気に前進するやつとかもそうだと思います。
昨季もあったことですが、川崎対策の1つとしてCBにプレスをかけずにCHやSBなどの最後列より1列前にボールが入った時に当たりにくという守備してくるので、ここの重要性は増していると考えています。

※イメージ図

上図は崩しの局面での例。今季の開幕戦の1シーンを切り取ってます。
ここでのCHの役割は前項でも触れたことと被りますが、ボールロスト後の対応(ネガティブトランジション)に備える事、前線に良い状態でボールを届ける事、自分自身もエリアに侵入しゴールに直結する仕事をすることです。
図を見てもらうと分かる通り、比較的ブロックの外でプレーする時間が長く攻撃をやり直す時にボールが戻ってくることが多いポジションでもあります。ボールが一度下がった時相手DFはラインを上げます。そこで間髪入れずに裏のスペースや大外にボールを供給するのもCHの2人が主にやっていることでした。上のツイートの4枚目に書かれていることと同じだと思います。
最前線に駆け上がってチャンスに絡み、ピンチの場面ではゴール前にスプリントしてゴールを守るというタスクを担うCHはハードなポジションで大島が怪我に悩まされる原因もここなんじゃないかと思ってしまいます。

ここで見て頂きたいのが大島・守田のプレー動画です。
〇〇選手のプレー集ってテクニカルな選手であればあるほど、相手を抜くとかトラップとかの技術面をクローズアップしがちですが(偏見です。すみません。)、その選手がどこでどんな状況で何をしているのかに注目してみると面白いということに最近ようやく気づきました。幾つか下にピックしたのでその場面だけでも見て頂ければと思います。
※大島のだけでピックした数が多くなってしまったので守田のは時間があればじっくり見てみてください。下記ピックアップシーンは該当シーンのリンクになってるのでそちらからも視聴できます。

ピックアップシーン
3:07~ ブロックの外へロブパス 鹿島戦・セレッソ戦
4:14~ DFラインを上げさせて裏取り 清水戦 
4:33~ ビルドアップ 仙台戦
4:43~ 崩しの局面 神戸戦
5:43~ ブロックの外から縦パス 広島戦・ガンバ戦・浦和戦
6:47~ DFラインを上げさせて裏取り 横浜戦 

ピックアップシーンの中でも特に私が注目したのはスピードアップさせるための中長距離パスです。プレッシャー来ないなら出しちゃうよ?って感じで裏のスペースやブロックを切り裂いて一気にゴールへと迫るパス。あれがあると相手も前に出ざるを得ないです。CHをケアしに前に出てくれば守備ブロックにスペースが出来てブロックを崩すことも出来るようになります。
逆に言うと、この脅威が無いと分かれば相手のDFはブロックを崩されないように構えて守るぞ!とシンプルにプレーできるようになってしまいます。
相手を引き出して自分達の使いたいスペースを作る作業が必要かなと思います。
今、川崎が陥っているのは自分たちのプレーで相手を迷わせられていないということだと思います。これは自分達に迷いを感じていることが原因なんじゃないかと。自分たちに迷いがあると味方同士のボール回しにミスが出て、今節のように何度もカウンターをくらうことになります。終盤には戦う力が残っておらずゲームオーバーに。そんな展開にならない為にも相手を見る余裕を持つところにステージを戻さなければいけません。
それが出来た頃にはCHの過負荷問題も軽減できているはずです。

迷いの払拭は自分(達)探しから。

前の項で書いた中長距離パスについて。
今節全く見られなかったかというとそんなこともなく、CBの2人から裏のスペースや相手のSB-CB間を抜けるパスも見られました。
この試合で中長距離のパスにより前進に成功もしくは攻撃のスピードアップに貢献したのは途中交代した山村で、CHとしてプレーしていた30分強で5本のパスを供給していました。
(※自己集計の為に誤差はあるかと思います)
受け手は長谷川・知念・ラルフの3人。3人とも当初は控えとされていたメンバーだと思います。
そして山村もその1人と考えられます。
層が厚くなってきたね!ということが言いたいのではなく、一緒にプレーする時間の長さは必要だろうということです。
この試合で攻撃の組み立てを任されていた家長と前線で受け手となる知念、長谷川、ラルフは一昨年〜昨年一緒にプレーしているとはいえ直近でどれだけの時間を共にしてきているか分かりませんが、阿部や小林に比べれば少ないことは確実です。公式戦で一緒にやっている選手同士よりもズレが生まれてしまうのは仕方がないことだと思います。

ただ出し手とのタイミングが合っていた山村から上記の3人へのパスも、そこからチャンスに結び付いたかというとそうではなく、詰まってボールを戻すことになっていました。
上のプレー集を見たらわかると思いますが、大島や守田からパスが出るとシュートまで繋がる場面が殆どでチャンスを作り出していたはずです。

家長「やっぱりグラウンドの上で0.5秒、1秒、サポートに入るのが遅くなっている。出す側も迷いがあると思うし、もらう側も多少の迷いを感じていると思う。そういう小さいところが積み重なって自分たちらしい形が減ってきている。ゲームだけじゃなく、練習の中からちょっとしたズレはあると思う」
※上の記事より抜粋

この家長のコメントのようにズレがあるとプレーの成功率が下がってしまいます。角度が1度違う2つの線も距離間が近ければ気になりません。しかし何十メートルも離れると全く違う方向に伸びてしまう。というように、パス交換の距離が近ければ補えるズレでも、遠くなればなるほどズレというのは大きくなり、補うことが難しくなっていきます。
また、出し手も受け手も迷いを感じていると、迷う時間が出来ることによりタイミングがずれてしまう。というのも想像できると思います。
このタイミングのズレも距離間が遠くなるほどに実行した時の成功率は下がるでしょう。
仮にパスが通ったとしても今節のようにその後のサポートが遅れるとチャンスに結び付けられません。
中長距離パスというキッカケから同じ絵を描いてゴールに迫れるか。当たり前だと言われそうですがこれを練習で突き詰めていくことで目標達成に近づけると思います。

また今季の特徴として、ケガやコンディション調整で昨年の主力を出せない影響もあり、昨季よりも少ない試合数で起用人数は上回っています。
誰が出ても問題はないと家長は言っていましたが、これは内容ではなくベクトルの話と捉えており、まだ内容的にはそこまでには達していないと私は感じています。
ただ、4冠を目指すのであればそういうチームにならないといけないとも思いますし、ベクトルが合っているのであれば後は内容を突き詰めるだけ。主力の欠場(人数が多い事に関しては)は想定外だと思いますが、それをプラスに転じられるようにまずはこの中断期間を上手く使ってほしいところです。

最後に

今節Twitter上でも多くの方々が言っていましたが、ゴールされた後の選手の姿を見て自分もショックを受けました。
今までであれば相手に先制されたら、一気にギアを上げてチーム全体で相手ゴールに迫っていくプレーが見られたんですが、今年はそれが無いなーと思います。
小さなズレが大きく広がって全体に影響を及ぼし、選手たち自身が自信を失いかけているようにも感じました。
終盤で先制された試合で私が思い出すのは昨年のホーム広島戦。
ミスジャッジもあり負けてしまったけれど、選手だけじゃなくスタジアム全体で点を取りに行く雰囲気があり、観ているこっちも行けるかもと思える状態が作れていました。それはサポーターからかもしれないし、選手の自信からかもしれない。何がキッカケでそうなったかは私には分かりません。
また、私1人がピッチにいる選手に自信を持たせることは出来るとも思いません。
だけど”絶対に勝てる”という空気を作るための声を出す1人になら、なれると思います。
”俺は諦めないぞ!お前たちはどうだ!?”という気持ちでこれからも私はピッチに声をかけていきたいと思います。
今回はこの辺で。それでは!


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