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2018年 J1第29節 鹿島アントラーズ対川崎フロンターレ

今更ですが、10月7日に行われた鹿島アントラーズ対川崎フロンターレをレポートしていきます。
この時点で鹿島は勝ち点45の3位。川崎は勝ち点56の1位。
前日に首位の川崎と勝ち点の並ぶ2位の広島が敗れた為、
川崎は2位との差を広げるチャンス。鹿島は優勝争いに復帰するためのラストチャンスという位置づけとなった29節のビッグマッチ。
J1終盤戦の大一番は鹿島スタジアムで13時キックオフとなりました。

リーグ戦の前半戦では川崎が4-1で大勝。
ただ、9月に行われたルヴァンカップ準々決勝では2戦合計4-2で鹿島の勝利。代表ウィークと被っていたこともあり、ベストメンバーではなかったにしろ、今シーズンもバチバチにやりあっている両チーム。
どの試合もインテンシティとテクニックが国内屈指の戦いであり、今節も同様に熱い戦いが期待できる試合でした。


両チームのスタメンはコチラ。
鹿島は、西・昌子がケガで欠場。
川崎は家長が累積警告で欠場となりました。
※鹿島CBの5番の名前が間違っておりました。正しくはチョンスンヒョンでした。


鹿島は伝統の4-4-2。
川崎はボール保持時は、両SBを高い位置に上げて主に大島(場面によっては守田・中村)が最終ラインに下がって、3-4-2-1を形成します。
常時ではありませんでしたが、鹿島の2列目・両SHは川崎の両SBのポジショニングを警戒してやや開き気味にポジションをとるようにしていました。
川崎としてはハーフスペースに位置するCB→SHへの縦パスを入れられると一気にチャンスとなったかと思いますが、楔のパスが入ることはありませんでした。これは、お互いの距離が遠かったこと・鹿島SHの位置取りが縦パスも警戒してか大きく開かなかったことが原因と考えています。


●●前半
●川崎のアイソレーション

この試合では、特に右SBのエウシーニョが高い位置で攻める機会が多くありました。鹿島左SHの安部を低い位置に押し込みたいと考えてのことかと。
形としては左サイドでボールを持つことにより、鹿島をサイドに偏らせます。
鹿島の左サイドの安部と山本はやや逆サイド寄りにポジションを取ってはいましたが、車屋→大島→中村→エウシーニョとレーンを一つ飛ばしでボールを繋ぎアタッキングゾーンに侵入させていました。
図の場面は9分に小林悠のシュートがポストに当たりゴールとはなりませんでしたが、この試合の川崎の狙いの1つが見えたシーンでした。



●川崎のユニット攻撃


川崎はトップ下の中村がSH・SBとユニットを形成して自分たちのポジションチェンジによって相手DFを動かしてスペースを作り出してアタッキングゾーンに侵入していきます。
このシーンでは中村がボールを持ちながら鹿島SB山本をサイドに引っ張り、その斜め後ろでは阿部が同じようにCH三竿をサイドにひきつけます。
それと同時に、サイドのエウシーニョがハーフスペースにスライド。勿論、安部もついていきます。
鹿島CB犬飼とSB山本の距離が空き、そこにエウシーニョは侵入。
中村からボールを受けた阿部が浮き球でエウシーニョにパスをしてチャンスとなりました。トラップがうまくいかずクリアされてしまいましたが、デザインされた攻撃だったんだろうと思います。
因みにこの時、逆サイドでは鹿島SH遠藤が車屋に引っ張られて最終ラインに吸収されており、バイタルにはレオシルバのみ。
三竿がついていくとバイタルがスカスカになってしまいますが、そうすると阿部・中村に対して山本が1人で対応せねばならずサイドを突破されてしまいます。
更に、CB犬飼との距離が空いていたためサイドを突破された場合に決定的なピンチになりかねないと判断してのことでもあったのかもしれません。
ニアゾーンへの侵入orバイタルからミドルという選択肢を持ってポゼッションをしていたようでした。川崎は幅をとって相手のスライド時にできたスペースを確実についてくるチームですね。勿論、鹿島の守り方を見てみてやり方を判断しているとも思います。


またまた川崎の攻撃で申し訳ありませんが、こちらはPKを獲得した場面。


こちらも左に寄せたうえでの右のエウシーニョに展開した場面。
川崎SH阿部がサイドに寄ることで、鹿島SBの山本だけでなくCB犬飼も引っ張て来ました。
原因としては、鹿島SH安部のポジションが戻るには遠すぎたためにサイドでの数的不利が出来かけていた為かと。
そのことで、今回は鹿島CB間にスペースが出来て小林へのパスを通されてしまいました。一度はチョンスンヒョンが小林の前に体を入れたのですが小林が優位な位置を奪い返し、後ろから倒す形となりPKとなりました。
このPKはクォンスンテが防いで鹿島はピンチを脱したわけですが。。

●鹿島のカウンター


鹿島は川崎がボールを持つ時間が長くなることは織り込み済みで、狙いは川崎SB-CB間を起点にしたカウンターだったかと。
ここに2トップの一角が流れて後ろからのパスを2列目に落とします。
もう1人のFWにボールを入れてスピードを落とさずにアタッキングゾーンへと入っていこうとしていたんじゃないかと思います。
ただ、前半45分間でカウンターからエリアに侵入したのは3度。
そのうちシュートで終われたのは2回ありましたが、決定機とまではいきませんでした。

30分過ぎから鹿島が押し返す時間帯もありましたが、全体的には川崎が押し込む時間が長かった前半でした。
ですが川崎が押し込む時間が長かったとはいえ、鹿島は相手DFラインまでハイプレスをかけたり、人へのあたりが激しく川崎にストレスを少なからず与えられていたと思います。鹿島にとって誤算だったのは季節外れの暑さ。夏場に近い気温となった為(前半20分過ぎにはクーリングブレイクが行われたほど)、ハイプレスを長く続けられなかったのは鹿島にとってはマイナスでした。
また、川崎はポスト直撃とPK獲得とチャンスを作りながらもゴールを奪えず、スコアレスで前半を終了しました。
比較的後半での得点が多いチームですし、前半はボールを動かすことで鹿島を消耗させられましたので、先制出来なかったこと以外はほぼプラン通りだったのかなと感じました。

●●後半

お互いに選手交代は無く後半に入りました。
序盤は前半と同様に川崎がボールを持ち押し込む展開。
川崎は鹿島DFに捕まる前にボールを回そうと、パススピードの速さ・ボールタッチの少なさが際立っていました。
しかし、50分過ぎくらいから徐々に鹿島が主導権を握り始めました。


●鹿島のハーフラインからのプレス


鹿島は自陣で守るときは川崎CHにボールが入ると厳しくあたりにいきます。
レオシルバが大島を捕まえてFWと挟んだり、ハーフライン付近からそのように守る形になっていました。

●鹿島SBのインナーラップ


今節は西の代わりに右SBに入った安西。
機動力があり、縦への推進力のある選手です。
ボールを奪った後の攻撃でも存在感がありました。
上の場面では、ハーフスペースに位置する川崎CH守田→阿部への縦パスをカットしてからのボールと安西の動きを追っています。
①で安西がパスをカット。②で近くの遠藤に預けてFWセルジーニョが流れたスペースへと走りこみます。③で遠藤からセルジーニョへと縦パスが入ったときにはハーフラインを超えた位置に入ってきました。
その後セルジーニョがサイドを上がり、アタッキングゾーンで安西がボールを受けチャンスに絡んでいました。
安西に限らず、鹿島の右SBは西や内田もFWがサイドに流れた後の内側のスペースに侵入していきます。


他にもパスがカットされましたが安西はインナーラップを仕掛けていました。
①で遠藤より斜め前で安西がパスを受けます。
②でセルジーニョがサイドに流れてきたところにパスを出し
③で安西はセルジーニョがいた場所に侵入しようと動いていました。
このセルジーニョへのパスは川崎左SB車屋にカットされてしまいましたが、鹿島が狙っていた形でした。
特に右サイドではFW-SH-SBのユニットでアタッキングゾーンへと侵入していく傾向がありました。
セルジーニョもそういうプレーが得意なのかもしれません。

鹿島は58分に安部に代えて土居を投入
左SB山本が高い位置を取り、川崎右SBを引き付けてできたスペースに土居が侵入してアタッキングゾーンに侵入するシーンがあり、前半よりボールを持てる展開になったこともありますが、安部がいる時間では見られない動きがありました。
クーリングブレイクが入るまでの約20分は鹿島がポゼッション・川崎が引いてカウンターという構図は変わりませんでした。
川崎は65分に守田→知念に交代。
フォーメーションを4-2-3-1から4-4-2に変更。
中村をCHに落として知念と小林の2トップとなりました。
知念が入ったことで、裏に抜ける動きやエリア内でキープするなど、
小林1トップとは違うカラーが出てきました。
68分にスローインと知念のキープから阿部がヘディングで狙うシーンがありましたが、川崎のチャンスらしいチャンスはこの試合では最後となりました。2度ほどカウンターでチャンスになりかけていましたが、登里と周りの意図が合わずアタッキングゾーンへの侵入にも至りませんでした。

クーリングブレイク後はまた川崎が優勢に進める時間になりました。
鹿島としては完全に流れが切られてしまいやりづらかったでしょうし、川崎としては立て直しの時間が出来るため流れノッているかノッていないかでの運不運があったように思います。
77分遠藤→内田・82分セルジーニョ→永木と立て続けに交代。
終盤に鹿島は畳みかけてきた中で、89分に鹿島のカウンターをファウルで止めた阿部が退場。
ロスタイム5分間は鹿島のセットプレーが続きましたがゴールを割る事はなく、スコアレスで終了となりました。

川崎は勝ち点1を得て広島との差を広げ鹿島を優勝争いから退けることに成功しましたが、阿部の退場・守田の累積警告・小林のケガと大きな代償を払うこととなりました。

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