青島周一

薬剤師です。本を出しました▶ISBN-10: 4822200981 noteでは医療に対する僕の考えを、科学的な根拠を提示しながら考察していきます。一部、有料テキストとなりますが、内容の質の担保、継続的な更新のためご理解いただけると嬉しいです。一般の方にも読みやすく書いていきます

時代を想う時-昭和の少しと平成と令和のあいだ

ぼくは昭和生まれではあるけれど、物心ついたときには既に平成の社会を生きていた。だから昭和の記憶はほとんどない。今でも微かに覚えているのは、実家にほど近い団地街の一角にあった魚屋で、母親がサンマを買っている後ろ姿だ。ぼくは海水で満たされた青いバケツの中で、ピュッと水を吹き出すあさりの姿に見とれていた。

 コトバは物の名前ではない……。ソシュールに言われるまでもなく、元号は物の名前なのではなく、歴史

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【書籍紹介】ゆるく考える ―ラジカルにゆるく

東浩紀さんのエッセイ集「ゆるく考える」を読んだ。

『友と敵の境界をクリアに引かず、「ゆるく」考えることは、最近のぼくにとって大きな課題になっている(ゆるく考えるp326)』

 本書のあとがきに書かれている一文である。2019年1月2日付の文章であるけれども、クリアに線引きしないというのは、東さんの思想全般に通じるテーマの一つではないかと思うし、ぼくもそうした“ゆるさ”に魅かれた一人である。

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疾病を予防するとはどういうことか?

一般的に疾病を予防することは、健康関連アウトカムの中でも重要なアウトカムの一つだと考えられる。例えばワクチンによる感染症予防効果や、スタチン系薬剤による心血管疾患の予防効果は、医学的介入において重視すべきアウトカムであろう。

 臨床試験データを読み解くうえで、検討されているアウトカムが『真のアウトカム』であるかどうかは熟慮せねばならない。

 ただ、患者にとって真に重要なアウトカムとは何かを考え

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インパクトのある大規模臨床試験結果がもたらすものと”Rule of Three”

慢性心不全では心拍出量低下の代償として、交感神経系の活性化と、それに伴いレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(Renin-Angiotensin-Aldosterone System:RAAS)が活性化している。したがって、アルドステロン分泌が促され、体液貯留が起きやすい状態にある。

 RASSの活性化が慢性化すると、心筋の線維化や心筋肥大、つまり心筋リモデリングを助長することにつながる。

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侮れない出版バイアス:メタ分析の結果をゆがめるものとは何か

複数のランダム化比較試験を網羅的に検索し、統計的に統合解析を行うシステマティック・レビュー&メタ分析は、一般的にエビデンスレベルが高い研究などといわれる。確かに一つの研究だけでは曖昧だった統計指標のディテールが、メタ分析によって鮮明に映し出されることもあろう。とはいえ、医学的介入の効果を真に表現できているかどうかと問われれば、そこには議論の余地がある。

 システマティック・レビュー&メタ分析の結

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患者の真のアウトカムを想像せよ。

「アウトカム」とは日本語で「結果」、あるいは「成果」などを表す言葉であるが、医療の文脈では検査値の改善度や合併症の発生率、死亡率など、治療や予防による臨床上の成り行きを指す。

 例えば糖尿病患者に対して、血糖降下薬を投与した場合、血糖値が下がるというのも一つのアウトカムである。しかし、糖尿病の薬物治療において、最終的に目指すべきところは健康寿命の延伸であることに異論は少ないはずだ。あるいは、健康

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