観察的な臨床研究データを解釈する際には、検討対象集団がどのような背景特性を有していたか想像せよ。

 例えば、睡眠時間の長さが、主観的な健康へどのような影響をもたらすのかを検討するために、自記式のアンケート調査を行ったとしよう。その結果、7~8時間の標準的な睡眠時間集団と比較して、6時間未満の短時間睡眠集団、9時間以上の長時間睡眠集団で、主観的な健康状態が悪いというデータが得られたとする。では、この結果をもってして睡眠時間が短いこと、もしくは長いことが健康へ悪影響をもたらすといえるだろうか?

 観察的研究データを前にしたら、“検討されている研究対象集団は、他にどんな曝露を有している可能性があるのだろう” と考えることが肝要である。この調査結果で言えば、睡眠時間が短い集団(あるいは長い集団)は他にどんな曝露を有している可能性が高いのか、つまり、どのような背景因子をもった集団なのか、想像してみるということだ。

 睡眠時間が短くなってしまう要因として、不眠症などの精神疾患を有する人、あるいは過酷な労働環境を強いられている人などを考えることができるだろう。また睡眠時間が長くなってしまう要因としては、寝たきり状態などを容易に想像することができる。

 つまり短時間睡眠、あるいは長時間睡眠が主観的な健康状態の悪化をもたらしているというわけではなく、睡眠時間が短くなる、あるいは長くなる要因が、睡眠時間とは独立して健康状態の悪化をもたらしているという可能性が高い。

 調べようとしている曝露以外の要因で、健康状態に影響を与える因子を疫学では「交絡因子」と呼ぶ。このアンケート調査においては、調べようとしている曝露はもちろん「睡眠時間」であるが、主観的な健康状態に影響を与えている睡眠時間以外の曝露である「精神疾患」や「長時間労働」、「長期臥床状態」は交絡因子に該当する。このような交絡因子により、曝露と健康状態の関連性が過大または過小に評価されてしまう現象が「交絡」である。

 ”交絡を考える”とは、『検討されている研究対象集団は、どんな曝露(交絡因子)を有している集団なのか想像してみる』ということであり、それはまた、観察的な研究データに示された曝露と健康状態の関連が、因果関係ではなく見かけの関連に過ぎないことを見抜き、真の原因がどこにあるのかを探究するプロセスに他ならない。

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青島周一

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