[文献]病院薬剤師によるstopp criteria ver.2を用いた介入効果(コホート研究PMID: 28039932)

Kimura T.et.al. Potentially inappropriate medications in elderly Japanese patients: effects of pharmacists' assessment and intervention based on Screening Tool of Older Persons' Potentially Inappropriate Prescriptions criteria ver.2. J Clin Pharm Ther. 2016 Dec 31. [Epub ahead of print] PMID: 28039932

[背景と目的] The Screening Tool of Older Persons' Potentially Inappropriate Prescriptions (stopp)クライテリアは2014年に更新されたが(stopp criteria ver.2)、その有用性を検討した報告は限定的である。本前向き観察研究では、潜在的不適切処方(PIMs)の存在割合、そしてstopp criteria ver.2.に基づいた病院薬剤師による評価及び介入の効果について検討した。

[方法]本研究は2015年4月~2016年5月にかけて、神戸大病院の3つの医療部門で行われた。薬剤師はstopp criteria ver.2に基づいて、PIMsを同定、評価、各患者の入院時において、処方変更のための患者の想いを熟慮した。薬剤師は、ベネフィットが処方変更のリスクを上回り、患者が薬を変更することに同意した場合、医師に処方変更を推奨した。入院時に薬を変更することが困難であると判断した場合、または患者が薬を変更することに同意しなかった場合、薬を変更することは推奨されなかった。薬剤師と医師はPIMsの変更有無について、協議し最終決定した。PIMsの処方された患者数、PIMs数、薬剤師による介入後の薬剤数変化が解析された。

[結果]65歳以上で、1日1回以上の薬剤が投与された新規入院822例が解析に含まれた。年齢中央値は75歳(IQR71~80)、54.9%が男性であった。クライテリアに従うと、42.1%にあたる346例でPIMsが1剤以上処方されていた。PIMsを処方された患者は、そうでない患者よりより多くの薬剤投与を受けていた。(10剤[7.0~13.0]対6剤[4.0~9.0] P < 0•001)薬剤師による評価介入後、PIMSの総数は651(%?)のうち47.6%(310例)が変更を推奨され、651のPIMsのうち292(44.9%)が最終的に中止もしくは変更された。

PIMsはZ-ドラックを含むベンゾジアゼピンが最も多く、詳細な分類は以下の通りである(変更/合計)
①ベンゾジアゼピンを4週間以上(75/205)
②高齢者の転倒リスクを高める薬剤(ベンゾジアゼピン)(30/67)
③高齢者の転倒リスクを高める薬剤(Z-ドラック) (15/31)

[結論] 高齢患者の40%以上がPIMを処方されており、stopp criteria ver.2に基づく薬剤師による評価と介入はPIMの検出と処方修正に有用であった。

[コメント]神戸大病院、木村先生の論文。(誤訳がありましたらすみません…)Stoppを用いた介入研究は複数報告されているが(Hill-Taylor B,.et.al. J Clin Pharm Ther. 2016 Apr;41(2):158-69. PMID: 26990017)2015年に公開されたversion2を用いた研究は限定的であった。(というか僕の知る限り比較的規模の大きい研究は存在しない)旧バージョンのクライテリアによる薬剤関連問題同定精度の限界は既に示唆されているが(Verdoorn S et.al. Eur J Clin Pharmacol. 2015 Oct;71(10):1255-62. PMID: 26249851)version2に関しては未知数である。

なお、クライテリアによる介入でPIMsは減るという研究は多いが、その多くは海外の研究であり、処方権を完全に持たない本邦の薬剤師により、介入の実効性が示された意義は大きいように思える。チーム医療の一つの形式としてクライテリアの有用性が示唆されている。

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