医療・健康情報に関して、日々チェックしたいオススメジャーナル3つ!!

 医療・健康情報に関する情報コンテンツ作成には、臨床医学論文の参照が欠かせません。情報内容の科学的妥当性は、臨床医学に関する一次情報をどれだけ踏まえているかに依存しています。
 平成26年度の東京大学教養学部学位記伝達式の式辞で、当時の教養学部長、石井洋二郎先生は以下のように述べていました 。

『あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること、この健全な批判精神こそが、文系・理系を問わず、「教養」というものの本質』

 また、2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学名誉教授の本庶佑先生が、記者会で見述べられていた内容も印象的です。

『常に疑いを持って「本当はどうなっているのだろう」と。自分の目で、ものを見る。そして納得する。そこまで諦めない』

 目の前のある情報を鵜呑みにせず、その情報の出典(臨床医学論文)に立ち返って、自分自身で情報を吟味をしながら意見を作り上げる。健康や医療に関する情報コンテンツの作成に当たっては、これほど重要なことはないように思います。

 しかしながら、臨床学に関する情報は、膨大な量が日々アップデートされています。報告されているすべての医学論文をキャッチアップする作業はとても不可能ですし、身近な健康問題とはあまり関係ない専門的な領域の情報も多く、効率的な情報収集には向いていません。

 科学的根拠に基づく医療、EBMの教科書「Evidence-based Medicine;How to practice and teach EBM 4th ed」 には「cancel your full-text journal subscriptions」という記載があります。なんと「(臨床医学に関する)原著論文の購読などやめてしまえ!」というわけです。

 実は、臨床における行動に、変更を迫るようなインパクトのある論文は世界5大医学雑誌(New England Journal of Medicine、The Lancet、JAMA 【Journal of the American Medical Association】 、BMJ 【British Medical Journal】、Annals of Internal Medicine)においても86~107文献に1文献(約1%)にすぎません (PMID: 15350200)。実用的な情報収集戦略としては、あまりにも効率が悪いのです。

 原著論文の購読はやめてしまえ、というのは少し大袈裟かもしれませんが、効率的な情報収集のためにも、取捨選択という作業プロセスは肝要です。

 そんな中、身近な健康問題や医療情報の掲載頻度が高い、臨床医学系のジャーナルを3つご紹介したいと思います。

【Journal of Epidemiology(日本疫学会誌)】
 日本疫学会のオフィシャルジャーナルです。身近な健康問題に関して、日本人を対象とした疫学研究論文も多く掲載されます。

■Electronic Links
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/journals/2072/
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jea

身近な健康問題をテーマとした過去の論文
入浴頻度と身体機能障害の関連
J Epidemiol. 2018 Oct 27. [Epub ahead of print] PMID: 30369512
高齢者の肺炎死亡とウォーキングの関連
J Epidemiol. 2018 Sep 22. [Epub ahead of print] PMID: 30249944
日本人の飲酒と死亡リスク
J Epidemiol. 2018 Mar 5;28(3):140-148. PMID: 29129895
血液型と消化性潰瘍リスク
J Epidemiol. 2018 Jan 5;28(1):34-40. PMID: 29093357
休日の運動量とうつ病リスク
J Epidemiol. 2018 Feb 5;28(2):94-98. PMID: 29093360
飲酒と休肝日と死亡リスクの関係
J Epidemiol. 2017 Nov 11. [Epub ahead of print] PMID: 29129895
野菜・果物摂取と発がんリスクの関係
J Epidemiol. 2017 Apr;27(4):152-162. PMID: 28142032

【British medical journal(英国医師会誌)】
 世界5大医学雑誌の一つで、英国医師会によって発行されている医学誌です。クリスマス前の金曜日に発行される年末特集号では、皮肉を込めたジョーク論文を何本か載せるのが恒例となっています。身近な健康問題に加え、プライマリケア領域において、使用頻度の高い薬剤に関する文献も多く掲載されています。

■Electronic Links
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/journals/182/#brmedj
https://www.bmj.com/

身近な健康問題をテーマとした過去の論文
フライドチキンや魚介の揚げ物は体に悪いかも?
BMJ. 2019 Jan 23;364:k5420. PMID: 30674467
朝食摂取と体重、摂取カロリーの関係
BMJ. 2019 Jan 30;364:l42. PMID: 30700403
ACE阻害薬で肺がんが増えるかもしれない
BMJ. 2018 Oct 24;363:k4209. PMID: 30355745
ジクロフェナクは心臓に悪いかもしれない
BMJ. 2018 Sep 4;362:k3426. PMID: 30181258
高齢者におけるスタチンの一次予防効果
BMJ. 2018 Sep 5;362:k3359. PMID: 30185425
抗うつ薬と体重増加
BMJ. 2018 May 23;361:k1951PMID: 29793997
運動プログラムの実施で認知機能低下は予防できるか
BMJ. 2018 May 16;361:k1675. PMID: 29769247
抗コリン薬と認知症リスク
BMJ. 2018 Apr 25;361:k1315. PMID: 29695481
オーソライズドジェネリックは先発品への戻り率が低いかもしれない
BMJ. 2018 Apr 3;361:k1180. PMID: 29615391

【JAMA Internal Medicine】
 JAMA Internal Medicineは、JAMA(アメリカ医学協会誌)を主力とする医学研究ジャーナルの一種であるJAMA Networkの13ジャーナルの1つです。内科領域において臨床で遭遇する数多くの疑問に答えるような論文が多数掲載されています。

■Electronic Links:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nlmcatalog/101589534
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine

身近な健康問題をテーマとした過去の論文
低リスク軽度高血圧に対する降圧治療は有害かもしれない
JAMA Intern Med. 2018 Dec 1;178(12):1626-1634PMID: 30383082
水分を多めにとっていると、膀胱炎再発が少ないかもしれない
JAMA Intern Med. 2018 Oct 1. PMID: 30285042
慢性腰痛に対するアミトリプチリンの効果
JAMA Intern Med. 2018 Oct 1. [Epub ahead of print] PMID: 30285054
SGLT-2阻害薬と下肢切断リスク
JAMA Intern Med. 2018 Aug 13. [Epub ahead of print] PMID: 30105373
尿路結石に対するタムスロシンの有効性
JAMA Intern Med. 2018 Jun 18. [Epub ahead of print] PMID: 29913020
メトホルミンと乳酸アシドーシス
JAMA Intern Med. 2018 Jun 4. PMID: 29868840
多面的な薬剤師による介入による再入院リスクへの影響
JAMA Intern Med. 2018 Jan 29. [Epub ahead of print] PMID: 29379953
ゲーム的に運動をすると運動量が増えるかもしれない
JAMA Intern Med. 2017 Oct 2. [Epub ahead of print] PMID: 28973115
胃酸分泌抑制薬と再発性CDIリスク
JAMA Intern Med. 2017 Jun 1;177(6):784-791. PMID: 28346595
やせるなら1日おきの断食か、毎日のカロリー制限か
JAMA Intern Med. 2017 May 1. [Epub ahead of print] PMID: 28459931
製薬企業による食事接待で薬の処方割合は増える?
JAMA Intern Med. 2016 Jun 20. [Epub ahead of print] PMID: 27322350

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