ドネペジルで除脈がおこったら…継続要否における実臨床でのジレンマ

認知症治療に用いられる代表的薬剤にドネペジル(アリセプト®)があります。その有害事象として徐脈の有害事象は良く知られています。
PLoS Med. 2009 Sep;6(9):e1000157. PMID: 19787032

また除脈のみならず、それに伴う、失神、骨折リスク等の増加まで報告されています。例えば、カナダオンタリオ州の健康データベースを用いたコホート研究(解析対象81302例、平均年齢:80.4歳)では、中枢性コリンエステラーゼ阻害薬の使用で、失神による医療機関受診、徐脈による医療機関受診、永続的なペースメーカーの設置、大腿骨頸部骨折による入院、いずれも有意に増加しました。(図1)
Arch Intern Med. 2009 May 11;169(9):867-73PMID: 19433698

(図1)ドネペジルによる徐脈/失神等リスク(Arch Intern Med. 2009 May 11;169(9):867-73.より引用)

従って、高齢者の失神においては、ドネペジルの服用歴を考慮しておく必要があります。

[ドネペジルの有効性]

ドネペジルの有効性は二重盲検ランダム化比較試験23件のメタ分析が報告されており、軽度~重度のアルツハイマー型認知症患者に対するADAS-Cogはプラセボに比べて2~2.8点/70点、機能低下を抑制することが示されています。(Cochrane Database Syst Rev. 2006 Jan 25;(1):CD001190. PMID: 16437430)

24週時点での認知機能(ADAS-Cog)
ドネペジル5mg/日
 平均差-2.01ポイント[95%信頼区間-2.69~-1.34]
●ドネペジル10mg/日
 平均差-2.80ポイント[95%信頼区間-3.74~-2.10]
▶プラセボに比べて2~2.8点/70点、機能低下を抑制する。

(※)Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscale:認知機能を評価するための方法。0~70点で点数が高いほど重症。経時的変化を見るのに使う

高度に認知機能が低下しているケースでは、統計的有意なスコア低下といえど、臨床的有意かと言われれば、悩ましいところもあります。実際のところ、高度の認知機能障害患者においてはその有効性はほぼ無いと考えても良い印象です。

では、認知機能が高度に低下した高齢者において、その患者が除脈傾向にある場合、ドネペジルのリスクこそあれど、ベネフィットは小さいとして、すぐにでも投与を中止した方が良いのでしょうか。

”ドネペジルで除脈が起きたら”…このテーマを突き詰めて考えていくと、様々な”ジレンマ”が浮き彫りとなります。本記事は、なんらかの解決策を提示するものではありません。臨床上のリアル悩みを言語化したに過ぎないかもしれません。それでも、読む方の立場によっては、価値判断の参考になるかもしれません。

[目次]
1.ドネペジルの中止タイミングと中止のリスク
2.ドネペジルの延命効果?
3.認知症患者の予後予測
4.どんなことを考慮しないといけないのか

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ドネペジルで除脈がおこったら…継続要否における実臨床でのジレンマ

青島周一

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