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第145回 延暦寺と園城寺

以仁王は宗信と共に、高倉を北へ近衛を東へ、賀茂川を渡り如意山に入りました。以仁王は、かつて保元の乱の折に伯父崇徳上皇も敗北して如意山に登ったと聞いた事を思い出しました。足からは血が噴き出ていました。
「上皇様も足に血を出しながら登られたのだろうか」
以仁王はそう思い、それから以仁王と宗信は明け方に園城寺に着きました。

以仁王を迎え入れた園城寺にはまもなく平家から引き渡しの使者が来ました。しかし園城寺ではそれを断り、戦いになるとして、比叡山、興福寺、東大寺に味方を求めました。園城寺は同じ天台宗である比叡山延暦寺に手紙を出しました。
「延暦、園城両寺は、門跡二つに相分かるといえども、同じ天台宗。たとえば鳥の左右の翼のごとし。また車の二つの輪に似たり。合力(ごうりき)して年来の遺恨を忘れて、同じ山に住んでいた昔に戻りましょう」

しかし延暦寺ではこれを嘲笑しました。
「こはいかに。園城寺は当山の末寺でありながら鳥の左右の翼のごとし、また車の二つの輪に似たりなど、奇っ怪(きっかい)な!」
そして返事を送りませんでした。

清盛はこの動きをすぐに掴みました。(続く)

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