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第144回 以仁王の逃亡

以仁王が令旨を全国の源氏に送っている事はすぐに清盛の知るところとなりました。熊野の別当、湛増(たんぞう)が見て、飛脚をとばしたからです。
5月15日、書状を見た清盛は激怒しました。
「宮を源以光(もちてる)と改め、土佐の畑(はた)へ流せ!」
土佐の畑とは、かつて謀反人頼長の子、師長が流された所でした。
清盛は更に追捕使の一人に源頼政の子、兼綱を指名しました。まさか、頼政が以仁王の計画に加担しているとは知らなかったからです。

頼政は早速息子から聞き、以仁王に使者を送り、知らせました。
王の乳母子の六条宗信が手紙を開き、読みました。
「君のご謀反すでに明らかになり、土佐の畑に流さんとして官人たちが参ります。いそぎ御所を出て園城寺へいらして下さい。入道(頼政)もすぐに参ります」
宗信は、手紙を持つ手ががたがたと震え、以仁王も呆然としています。
以仁王に仕える長谷部信連(のぶつら)は王に指示しました。
「宮様、すぐに御所からお出ましを」
「どうやって」
「かつて兄君の二条の帝も女装されてお逃げ遊ばされました。その様に」(続く)

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