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第60回 ノーベル賞を取りたい人

ノーベル賞は、現代においてやはり最高の栄誉です。
1939年11月。戦争中ではありましたが、アメリカ・カリフォルニア大の、
オッペンハイマーの同僚アーネスト・ローレンスが「サイクロトロンの開発及び人工放射性元素の研究」でノーベル物理学賞を受賞しました。サイクロトロンとは加速器とも言われ、ウランを高速で分離できる機械でした。

この受賞に、3歳下のオッペンハイマーの心は大打撃を受けました。幼い頃から「秀才、天才」と持てはやされてきたプライドが散々に打ち砕かれたのです。
オッペンハイマーの論文は「ノーベル賞には値せず」ーその噂は聞いており、自他共にそう思っていました。
「僕は敗北者だ」と、オッペンハイマーは周囲にもローレンスにもつぶやきました。
しかしオッペンハイマーは、「こんな筈ではない。このままでは終われない。何かで名声を得たい」と心に野望が芽生えていました。それはふつふつお、どす黒い大蛇の様に湧き上がっていったんです。(続く)

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