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第143回 人相見・伊長(これなが)

人相見の藤原伊長とは、かつて待賢門院璋子と密通の噂のあった季通(すえみち)という美男の子でした。季通は璋子の琴の師匠だったのです。
季通も世が世なら、その兄伊通の様に太政大臣までなれる家柄でしたが、璋子との事で白河法皇から睨まれ、出世を遮断されてしまいました。そのこ、伊長も出世を諦め、技を磨いて人相身として身を立てたのでした。

年老いた伊長は、かつて父が昇進を棒に振った女性の孫(璋子の子、後白河法皇の子)である以仁王をおもむろに見て言いました。
「天子の位におつきになる相(そう)でございます。あきらめなさるな」
伊長の微笑みに、まだ固い表情となっていた以仁王は笑顔になっていきました。そして以仁王は決意しました。
「予は令旨を書くぞ!頼政に伝えよ」
「ははっ」以仁王の乳母子の六条宗信は頼政の所へ走って行きました。

それから日夜、以仁王はせっせと「平家追討の令旨」を書き、それは諸国の源氏の元へと運ばれていきました。(続く)

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