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第58回 『源氏の物語』を引き出物に凱旋

五十日の祝いの席で公任が言った事からいつしか香子は「紫式部」と呼ばれるようになっていました。
「『藤式部』ではありきたりですからねえ」女房達は言いました。
さて、11月17日に中宮彰子が若宮と一緒に内裏還啓する事が決まりました。
10日には『源氏の物語』の冊子作りで女房が総動員されて大変です。祐筆が書いたものを糊で張り付けて冊子とするのです。

ここで香子が進上したのは初期の完成本で、武田宗俊先生の説により、54帖の内、17帖だという意見に賛成します。現在の帖の番号を付記しますと、
①桐壺・・・光源氏の誕生。母桐壺の更衣は亡くなり、藤壺が入内する。
⑤若紫・・・源氏は北山で10歳の若紫を見て、藤壺の姪と知り連れて帰る。
⑦紅葉賀・・懐妊した藤壺の前で源氏は青海波を舞う。藤壺は皇子を出産
     (後の冷泉帝)。源典侍も登場。
⑧花宴・・・政敵右大臣の姫、朧月夜と契ってしまう。
⑨葵・・・・葵祭で、葵上と六条の御息所が争う。葵上は夕霧を出産後、
      死。若紫と結婚。
⑩賢木・・・伊勢に下る六条の御息所との別れ。桐壺院崩御。藤壺出家。
      朧月夜との密会露見。
⑪花散里・・須磨へ下る事を温和な恋人、花散里に告げる。
⑫須磨・・・須磨での生活。暴風雨で明石に移る。
⑬明石・・・明石の入道の庇護を受け、明石の君と出会う。懐妊。
⑭澪標・・・源氏は許され、明石では姫が誕生。源氏は住吉大社に参る。
      ちょうど明石の君一行も来ていたが、気圧されて会わずに帰
      る。六条の御息所が亡くなり、その娘を我が子冷泉帝の女御に
      し、斎宮の女御そして梅壺の女御と呼ばれる。
⑰絵合・・・梅壺の女御と、源氏の義兄でもあり親友でもある頭中将の娘
      の女御との絵合があり、梅壺の女御方が勝ち、中宮となる。
⑱松風・・・明石の君は母の山荘がある大堰川近くに移る。源氏は生まれた
      姫君を子のいない紫の上の養女とする。
⑲薄雲・・・永遠の恋人・藤壺が37歳で亡くなる。冷泉帝は夜居の僧から
      出生の秘密を聞く。
⑳朝顔・・・藤壺の死後、源氏は従姉の斎院に心を寄せて、紫の上は嫉妬
      する。朝顔の斎院とは結婚せず、紫の上は安堵する。
㉑少女・・・源氏は息子夕霧をわざと低い官位からスタートさせる。夕霧は
      内大臣(頭中将)の娘・雲居の雁と恋仲だが許して貰えない。
㉜梅枝・・・明石の姫君が裳着を終え、東宮に入内する事が決まる。
㉝藤裏葉・・藤の宴で、内大臣は夕霧と雲居の雁の結婚を許す。明石の姫
      君が東宮に入内し、実母の明石の上が仕える。紫の上と初めて
      対面。源氏は准太政天皇となり六条院となる。紅葉の六条院へ
      朱雀院・冷泉帝も行幸し、太政大臣(内大臣から昇進)も揃
      って大団円の中、華やかに物語は終わる。

ポイントになるのは夕顔ですが、これは夕顔の話の元になる「大顔頓死事件」の具平親王がまだ存命なことです。それから夕顔・空蟬・末摘花など後から挿入したと思われる所には、上記の人々が出てきますが、初期のものには夕顔などが全く出てこないという事を根拠にされています。本当に血の滲むような研究有難うございます!お蔭で後進の者が速やかに楽しめます!

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