老人ホームの種類_2

介護老人保健施設の今後を考察

介護老人保健施設について。
具体的な内容としては2018年度の介護報酬改定にフォーカスをあて、経営面から分析しております。

①介護老人保健施設とは

簡単に言うと「病院と在宅の中間施設」や
「在宅生活が心配な方による一時的な入所施設」と表すことができます。
介護保険サービスで利用できる公的施設である介護保険3施設のうちの一つです。ご入所対象者は加療の必要がない要介護1〜5の方で、リハビリが必要とされる方になります。

老健の起源を遡ると介護保険法の施工前になります。1982年に老人保健法が制定され、医療と福祉の中間施設として1986年に老人保健施設が制度化されました。それが老健の始まりです。

現在、全国の老健の棟数は7,299棟(2017年10月1日時点)です。

その運営母体は75%が医療法人で15%が社会福祉法人とこの2つだけで90%も占めていることがわかります。

※「介護サービス施設・事業所調査」より筆者作成。


②2018年介護報酬改定

大きなインパクトをもたらした2018年度の介護報酬改定について見ていきます。
2018年2月1日のメディ・ウォッチの記事「2018年度診療・介護報酬改定」がとてもわかりやすかったので、参考にさせていただきました。

従来までの老健は在宅復帰機能に応じて、在宅強化型・加算型・従来型の3区分に分かれていました。しかし、2018年度の改定でその区分は5つに細分化されることとなりました。

機能が高い順に⑴超強化型 ⑵在宅強化型 ⑶加算型 ⑷基本型 ⑸その他型 となります。

在宅復帰・在宅療養支援機能に対する評価の算定要件に基づいて、最高点数90点のうち、70点以上で超強化型、60点以上で在宅強化型、40点以上で加算型、20点以上で基本型、それ以下がその他型です。

超強化型とその他型では同じ条件の利用者を受け入れたとしても1日あたり約140単位の差が生まれてしまいます。
そのため、どこの区分に位置するかということはとても重要な要素となってきます。

③超強化型老健への要件

超強化型の要件を満たすためには、在宅復帰・在宅療養支援機能に対する評価の算定要件で90点中70点以上が必要となってきます。
項目は全部で10項目あり、各項目ごとに配点が定められています。

・在宅復帰率
・ベット回転率
・入所前後訪問指導割合
・居宅サービスの実施数
・リハ専門職の配置割合
・要介護4、5の割合
・喀痰吸引の実施割合
・経管栄養の実施割合

※20点以上であっても*計画的なリハビリの実施*退所時に家族らに退所後の療養の指導の実施*退所後1ヶ月間のモニタリング
という3つの項目のいずれかを満たしていなければ、強制的にその他型になってしまいます。
※超強化型と在宅強化型はリハビリを最低週3回以上の実施が求められます。

出典 : 厚生労働省「平成30年度介護報酬改定について」

上の表を見て頂ければわかるように、10項目の中で、とりわけ配点の高い項目が、「在宅復帰率」と「ベット回転率」となります。
この2項目で配点の40%を超えます。

以下でこの2項目について細かく見ていきます。

(1) 在宅復帰率
直近6ヶ月間の実績を計算して算定します。
ただし、在宅復帰者に含まれるのは入所期間が1ヶ月を超える者に限ります。

計算式は以下の通りです。

51%以上 20点
31%〜50% 10点
30%以下 0点

在宅復帰者の復帰先としては、ご自宅以外に有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅なども含まれます。


(2)ベット回転率
直近3ヶ月間の実績を計算します。

10%以上 20点
5%以上10%未満 10点
5%未満 0点

④老健の経営戦略を考察

先述の算定項目10個のうち、高比重の「在宅復帰率」と「ベット回転率」に力を入れていくのが、今後の戦略としては必須になることが予想されます。

さらに、それと並行して新規の入所者も確保しなければなりません。
なぜならば、「在宅復帰率」と「ベット回転率」を上げていくことは、入所者を減らすことにつながり、収益の悪化をもたらしてしまうからです。

ここで、問題になってくるのが同じく2018年の診療報酬改定で、地域包括ケア病棟の在宅復帰先から老健施設が除外されたことが挙げられます。

これに伴って、在宅復帰率を確保したい病院は、退院先を老健にしづらくなりました。

つまり、老健からすると新規の入所者の供給が減少することになりました。

出典 : 社保審-介護給付費分科会 H29.8.4

上記の資料は、2018年度、介護報酬改定前の老健における、入所前の居所について在宅復帰率別で表されているものになります。

在宅復帰率が10%以下の老健の供給先は「医療施設」が72.4%であるのに対して、在宅復帰率が50%を超える老健の供給先は「本人の家等」が50.8%と過半数を占めています。

このことから、在宅復帰率の低い施設ほど、医療施設からの集客に依存していたということがわかります。

つまり、2018年度の改正によって、もともと在宅復帰率が低かった老健はさらに経営面で難しい状況に立たされることが予想されると言えます。

ポイントは3つ
(1) 入所者の供給先の確保
(2) 施設内の対応力向上(主にリハビリ)
(3) ご自宅に戻れない方の退所先の確保

病院では7:1病棟や10:1病棟などリハビリのニーズが高く、なおかつ病院側が在宅復帰加算を取れるところがターゲットとなってくるでしょう。
一方で、在宅からの紹介もキーポイントになってくるでしょう。
在宅介護で一番キーとなる専門職はケアマネージャーです。
下記の図の通り、居宅介護支援事業所数も高齢者の増加と共に年々増加しています。

居宅介護支援事業所は数も多いので、老健側からのアウトリーチが重要になってくるでしょう。そして、地道に関係性を構築して信頼を得る必要があるでしょう。

老健の評価項目に「リハビリテーションマネジメント」と「充実したリハ」があります。このことから、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の充実した体制と計画されたリハビリの実施も重要な要素と考えられます。

そして、一定期間のリハビリを終え、次は在宅復帰へと導く機能が求められます。退所先として加算要件を満たすのは「病院・診療所・介護保険3施設以外」です。
ここで、地域とのつなぎの役割を果たすソーシャルワークを担う人材が重要になってきます。

⑤まとめ

2018年度の介護報酬改定により、老健はリハビリテーションと在宅復帰支援の推進を高いレベルで求められることとなりました。地域資源を最大限活用して、運営していく経営戦略が必要となるでしょう。


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