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"タイト" なゲームの作り方を学ぶ方法

今回は "タイト" なゲームの作り方を学ぶ方法を紹介します。

■タイトなゲームとは?

タイトという言葉は「きつい」「ぴったりした」という意味です。服装がピチピチになっていたり、ビジネスの現場ではスケジュールがびっちり埋まっていて余裕がなく厳しい場合にこの言葉を使ったりします。

ゲームにおける「タイト」という言葉は、各要素が綿密に連携しており無駄が少ない状態を意味します。
例えば、ゲームを一定まで進めた際に ”ミニゲーム” が発生して、それをクリアしないと先に進めないとします。そして、ミニゲームはクリアすると2度と遊ぶことができない場合、ゲーム全体としてミニゲームの影響する役割は、一回の障害物として扱われただけなので "他のとの関連性が低い" と言えます。そのためこのミニゲームはタイトなゲーム要素とは言えません
しかし、そのミニゲームがクリア後も何度もプレイできて、高得点を獲得するとお金などの報酬を獲得できるとします。そしてそのお金を使ってキャラクターを強化できるとすれば、そのミニゲームはお金の要素について関連付けができて、少しだけタイトな要素に近づいたと言えます。

というように、"他との関連要素が多い要素" が多く採用されているゲームを「タイト」なゲームであるとします。

タイトなゲームの傾向として、ゲームを構成する要素が「少ない」場合には「タイト」になりやすいです。ゲームを成立させるためにはある程度の要素が必要となるため、要素が少ないとそれぞれが関連性を持たざる得ないからです。
例えば、マインスイーパーの各要素は無駄がなく相互に作用しています。これに対して要素が「多い」大規模のRPGなどでは、メインのゲームとは直接は無関係のミニゲームが多く含まれていて、タイトではない要素がいくつか存在します。

■タイトなゲームを作る意味

それなりの規模のゲームを作る場合、ゲームを膨らますための「新要素」を追加していくこととなります。
例えば、RPGを作る場合に基本となるフィールド移動とバトルシステムだけでは飽きてしまうので、クエストシステムを追加したり、収集要素、クラフト要素などを追加することになるかもしれません。
それらの要素がうまく他の要素と噛み合えば、プレイヤーは面白いと思ってやり込んでくれたり、寄り道をしてくれるかもしれません。しかし噛み合わない場合、本編だけをプレイしたり、頑張って作ったサブシステムで遊んでもらえないことになるかもしれません。

デジタルゲームの面白さは「作ってみないとわからない」という部分がありますが、それでも「とりあえず作ってみる」というのはとても時間がかかる作業なので、ある程度は組み込んだ結果を推測できるようになる、もしくは作り込む前に判断できるようになる能力はとても大事です。
そのためには「タイト」なゲームであるかどうか、というのは1つの基準となるのではないかと思います。

■「タイト」には明確な基準はない

なお、注意点として「タイト」の基準はほぼ主観的な概念となります。具体的な数値に変換できないこともないですが、評価基準は人によって異なる部分が多くなります。
例えば個人的には「オープンワールドゲーム」はマップが広大なためタイトと言えないゲームデザインと思っていますが、「広さがあってこそ自由度が生まれるから、そうではない」と考える人もいるかもしれません。
他にも、将棋において「歩」はコマの機能として弱く、それが一番多いコマとして存在しているのはタイトでないと感じる人もいるかもしれません。しかし「歩」によって果敢にコマの奪い合いが発生したり、敵陣営への切り込みをする役割を考えると「タイトではない」とも言い切れない側面もあります。

といったように「タイト」であるかそうでないか、という基準はその人が重視する要素や感覚に大きく左右されます
そのため「タイト」なゲームデザインを作るための練習をすることで、「どれがタイトなのか?」という審美眼を身につける、というのがこの記事の目的となります。

■タイトなゲームデザインを身につけるには?

タイトなゲームデザインを身につける方法の一つとして、「トランプ」を使ったゲームを考えます。なぜトランプを使うのかというと、4種各13枚の計52枚で構成されていて(ジョーカーを加えても 53枚)というシンプルな要素になっているためです。
またトランプは 100円ショップで安く買えるという理由もあります。

■トランプゲームの要素

トランプゲームの要素分析をするとおおよそ8つの要素が含まれていることがわかります。

1. 参加可能なプレイヤー数
2. 手札
: プレイヤーが所持するカード。所持枚数制限がある場合が多い
3. 山札: 手札もしくはフィールドに追加するカード
4. 捨て札: 不要になったカード
5. フィールド: 場に出ているカード。操作可能なカード
6. プレイの順番: 時計回りなど
7. ルール: カードの効果。捨てるルール。勝利敗北条件
8. メタルール: ローカルルール

トランプゲームはこの中の最低3つの要素が必要となります。

▼神経衰弱
* カードを並べるフィールド
* 順番
* カード獲得ルールと勝利条件
▼七並べ
* 手札
* カードを並べるフィールド
* 順番
* 配置可能となるルールと勝利条件、敗北ルール
▼ページワン
* 手札
* 場に出ているカード
* 山札
* 捨て札
* 順番
* カードを場に出すルールや勝利条件
* メタルールとしてドボンや特殊カード (8をワイルドカードとする) など

タイトなゲームデザインをするための練習方法として、最初の取っ掛かりとしては、既存のトランプゲームにローカルルールを加えてみることです。
例えばページワンでは、最後の一枚になった時に「ページワン」と言わないとペナルティになるルールは個人的にはあまり意味がないように思います。そこでメタルールとして「ページワンを宣言すると手札を公開してもよい」というものにします。そして手札を公開して次のターンで上がることができたら、他のプレイヤーのペナルティを2倍にする、という追加ルールです。リスクを大きくすることでリターンを大きくする方法です。もし上がれなかった場合、ページワンを宣言したプレイヤーは3枚カードを引く必要がある、としても良いかもしれません。

といったように、既存のゲームをルールの追加してどうなるか、を考えることはゲームデザインの練習になって良いです。ゲームプログラムのように実装コストもかかりません。
自由にルールを足したり引いたりして、タイトなゲーム作りを実践します
ローカルルール作りに慣れたら、基本ルールを大きく変えたり、基本ルールを作ることから始めてみるのも良いかもしれません。

また、既存のトランプゲームを分析するのも良いと思います。例えば以下は大富豪の個人的な分析です。

▼大富豪の分析
* セブンブリッジやページワンよりも、カードを出すタイミングが重要となっている。カードを温存して後から出す作戦で流れが大きく変わる
* ゲーム結果によって階級が決まるため、ゲームの流れに連続性が生まれている
* "都落ち" ルールによって、下位の階級のプレイヤーが共闘する戦略が生まれている
* 今ひとつな点としては手札で勝負が決まってしまうことが多い。しかし「エクストリーム大富豪」ルールを採用すると各カードに役割が生まれある程度解消可能になる。しかしルールを覚えるのが大変となる

■参考書籍

今回の記事は、この本の「6.3 タイトなデザイン」を参考にしました。

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