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ホラーゲームの作り方

今回はホラーゲームの作り方について考えてみます。

■ゲームの方針を決める

まずはホラーゲームで表現したい怖さを選びます。

"キャラクター" や "シナリオ" に焦点を当てる場合は、「ノベルゲーム」が良いです。例としては「弟切草」「かまいたちの夜」「ひぐらしのなく頃に」などです。ノベルゲームは長い文章を使って、細かい表現ができるので、人の内面や狂気に至るまでの過程、精神的な葛藤を描くことができます。

"ゲームシステム" で怖さを表現する場合には「探索」型が良いです。例えば「バイオハザード」「クロックタワー」「青鬼」「コープスパーティ」などのマップを移動して探索するタイプのゲームです。
探索型には、プレイヤーを調査して操作する "マップ移動タイプ" と、コマンド選択で移動を行う "コマンド移動タイプ" の2つが考えられます。マップ移動タイプの方が移動の自由度が高く、リアルタイムのアクション要素を付与しやすいです。コマンド移動タイプは画面をクリックして探索を行うもので、素材が一枚絵で済むため、素材作成と実装難易度が低く、じっくり考えるタイプのゲームとなります。

* マップ移動タイプ:マップの実装コストが高い。アクション要素を付与しやすい
* コマンド移動タイプ:実装コストが低い。ターン性や画面をクリックするゲームになる

マップ移動タイプにはカメラをどう扱うかの問題があります。三人称視点としてカメラを固定するか、一人称視点とするか。

* 三人称視点:わかりやすい操作性
* 一人称視点:迫力がある。没入感が得られやすい

三人称視点は、視界が広くて敵との距離を取りやすいというゲーム性でのメリットがありますが、迫力の面で一人称視点に劣ります。一人称視点を採用する場合は、操作性が犠牲となりやすいので、自動で目的のポイントに移動しやすくするなど、工夫が必要になりそうです。
一人称視点の良い例として、コマンド移動タイプの類型といえるかもしれませんが「Five Nights at Freddy's」のように、視点をある程度固定させるのも良いかもしれません。

「バイオハザード」は、お化け屋敷のようなアトラクション型で、どこから襲ってくるかわからない敵そのものに怖さを感じることができます。この類型としては「サイレントデバッガーズ」「エネミーゼロ」のような "敵の場所を音で表現する" といったシステムも恐怖を表現するのに有効です。

また、敵と戦うゲームとする場合、回復アイテムや武器の弾薬、セーブ回数などといったリソースを「制限」と "なんとか生き延びなければ" といったサバイバルホラー的なゲームシステムを構築することができます。

■あえて操作を不自由にする

アクション要素が強いゲームとする場合、操作方法をあえて不自由にすることで、より恐怖を増すことができます。例えば、バイオハザードは主人公キャラをラジコン操作で行います。これは、おそらくカメラを固定させる仕様にした際、画面によって操作方法の混乱を防ぐために採用されたのではないかと思います。
ただ結果として、ラジコン操作は直感的でないため、敵が突然出現したときに焦ってキャラクターをうまく操作できず、プレイヤーをよりパニック状態にさせやすい効果があります。
また操作性の悪さは、敵の攻撃回避にも影響を与えるので、ギリギリで回避することが難しく、プレイヤーに慎重にプレイさせる効果もあります。

ですが、2Dゲームでのキャラクターをラジコン操作にするのは、一般的にはあり得ないので「移動速度を遅くする」「ダッシュ移動に制限を持たせる」「攻撃開始までの発動フレームが長く存在する」「攻撃の射程範囲を短くする」など、操作キャラクターの機動性能や攻撃性能を控えめにした方が良いと思います。
ただ「青鬼」にて、倍速移動が高難易度や RTA をするプレイヤーに受け入れられたことを考えると、ゲームスピード全体を速くする仕様は幅広い遊びを提供する可能性があるかもしれません。

■即死にするか。体力制にするか

プレイヤーのミスによるペナルティをどのように扱うか、という問題があります。
「プレイヤーのミス=即死」にするとゲームに緊張感が生まれます。また、即死ということは回復アイテムも必要ないので、わかりやすいゲームシステムとなります。ただ、即死がシビアと感じるプレイヤーには厳しいゲームとなるかもしれません。

それに対して、体力制にすると、ゲームっぽさが出てしまい没入感が少し失われますが、体力の低下で危機を演出できる効果があります。

ひとまず、ホラーゲームを作り慣れないうちは即死が良いと思います。理由としては体力制にすると、ゲームがうまいプレイヤーはダメージをあまり受けず、怖さを感じずゲームをクリアしてしまうかもしれません。逆に、難しくしすぎるとクリアできなくなってしまいます。
といったように、体力制を導入するとゲームバランスを取るのが難しくなる、また要素が増えて複雑なゲームとなってしまうので、"即死" にした方がお手軽かと思います。

■初見殺しをするかどうか

ホラーゲームは死の恐怖を前面にフィーチャーしたゲームジャンルです。死の恐怖を最も表現できるゲームの要素は「ゲームオーバーになるかもしれない」というものです

とはいえ「唐突に死亡イベントを発生させていいのか」という問題があります。
例えば、鏡を調べると手が伸びてきて、プレイヤーを殺すイベントが発生するとします。これはプレイヤーをドキっとさせる効果はありますが、突然ゲームオーバーになるのは理不尽です。もしこのようなイベントを作るのであれば事前に「この鏡は危険だ」ということを感じさせる警告を出すべきです。もちろんあからさまに直接的な危険性を示すと恐怖感が出なくなるので「なんとなく危険かも…」という予兆で十分です。

基本的には「初見殺しはよくない」と考えておいた方が間違いありません。ゲームオーバーはプレイヤーが納得できないと、再びプレイさせる動機を奪いかねません。なので、即死でゲームオーバーにするには正当な理由を用意しておく必要があります。その手間を考えると "初見殺し" は限られた場所だけに使った方が良いと思います。

もし初見殺しを多くしたい場合、どこでもセーブできるようにしたり、ゲームオーバー後、素早くリトライで直前に場所に戻れるようするのも1つの方法です。
例えば「クロックタワー」は初見殺しの即死トラップが多いですが、ゲームオーバーになっても直前からリトライできる仕組みを用意しています。ただ、これはこれで、死亡に対するリスクが減少しているので、死んでもデメリットは少ないと気づいてしまい、恐怖感が減るかもしれません。

■シンプルなゲーム性にする

ホラーゲームはシンプルなゲーム性にした方が、恐怖を演出しやすいです。
ルールが複雑だと、ゲームに入り込みづらくなってしまうためです。

例えば「青鬼」は "かくれんぼ"、"鬼ごっこ" ですし、「Five Nights at Freddy's」は、"だるまさんが転んだ" です。

子供のころの遊びをゲームシステムとして採用すると、世界に入りやすく恐怖を感じられるものになりそうです。

■一貫性の原則を破る

通常のゲームは一貫したルールを守るのが基本となります。しかしホラーゲームはあえてこのルールを破ることでプレイヤーに驚きを与えることができます。

例えば、動かない石像。
それまで単なる背景オブジェクトと思っていたものが、ゲーム後半で突然動いてプレイヤーを驚かせる、というのもギミックとしては良いです。ただし、それによりプレイヤーを直ちに殺してはいけません。だまし討ちの初見殺しはユーザーを不快にさせるだけだからです。

■探索・パズル要素

探索主体のゲームとする場合、プレイヤーに考えさせるためにパズル要素が入ることが多いです。というのも、敵と戦ったり、敵から逃げたりするだけでは、ゲームとして飽きられやすいからです。
暗号や図形パズルなど、ほどよく頭をつかう要素を入れるとゲームにメリハリが生まれます。

■物語の舞台や世界観・ストーリー

ホラーの舞台としては「人里離れた洋館」や「旧校舎」「だれも住んでいない家」「さびれた病院」「地下室」「廃墟」などの閉鎖空間がよく使われます。そういった空間に迷い込んだ主人公たちが閉じ込められてしまう…というのがよくあるパターンです。
そういった場所はあまり日が当たらなくて常に薄暗い雰囲気になっていることが多いです。

そして、その場所には何らかの怪異が住んでいて、何らかの理由で主人公たちをおいかけまわします。その怪異は「不死身」だったり「強大な力」を持っていて、完全に倒すことができません。そのため、主人公たちはその場所から何とかして脱出しようとします。

ホラーものの結末としてよくあるのが、以下のパターンではないかと思います

* 閉鎖空間の存在理由を破壊したため、その場所が崩壊し消滅した
* 怪異を倒して平和が訪れた…ように見えたが実は生き残っていた
* 怪異の存在を世間に公表にしようとしたが、証拠は何も残っていなかった
* 怪異は主人公たちと契約を結び、共生する道を選んだ
* 怪異(怨霊)は無念を晴らし、成仏して消滅した

■怖いサウンドを使う

怖さの演出としては、サウンドの使い方がとても重要です。
BGMは控えめにして、怖さを表現する不快なSEを使うと、お手軽に怖さを演出できます。またドアの開閉音をリバーブを深めにすると雰囲気が出ます。
メニューなどのシステムSEも怖さを感じる重めのものを使うとよいかと思います。

■既存の物語を借用する

物語や世界観を構築する場合は、空想上の怪物や、怪談、都市伝説などを借用すると恐怖のイメージが作りやすい気がします。

■実写画像をホラー素材として使う

実写画像は明度を下げて、色相を青に近づけると、怖い画像になります。

左が加工前で、右が加工後です。本来なら暗くするのであれば照明を消した画像を用意した方が良いですが、細かいことを気にしない場合は、こういった加工もありではないかと思います。

■ホラーゲームを作るのに参考になる記事

探索型ホラーゲームを作られている方のインタビュー記事です。ホラーに限らずゲーム製作に役立つ話があってとても勉強になります。例えば、マップには物語性を持たせた方が説得力のあるマップが作れる、といった話をされています。

「青鬼2016」に関わった方のホラーゲームの考察がとても参考になります。ルールをシンプルにすること、アイテムの使い方に頭を使う、死んだキャラがそのまま生き返るのはNG、など。

▼頭を使わせるアイテムの使い道
1. 複数のアイテムを組み合わせる
2. 別の場所から見ると使うことができる
3. 一つのアイテムに複数の効果や使い道がある
4. 意外な場面でアイテムが役に立つ、もしくはアイテムを入手できる

簡単にホラーゲームを作る方法について考察された記事がまとめられています。「怖いBGM」と「怖い顔が迫ってくる」という2つのポイントにより怖いゲームが作れる、という仮定を元に作った「エレベーターの呪い」は確かに怖かったです。ただ、怖さの本質は「怪奇現象が起こりそうだけれど、それがいつ起こるかわからない」という状態が続き、意外なタイミングで怪奇現象が起こった時に恐怖を感じる、としています。

こちらの記事では、低解像度、単色といったチープなグラフィックが逆に想像力を掻き立てられ「未知のものに対する怖さ」の演出に向いている、ということを主張しています。
あと、「ロトスコープ」という表現方法も手軽に作れて、とても良いと思います。

もう1つ,アニメーション手法の1つ「ロトスコープ」を取り入れたこともポイントであるという。ようは写真や動画をPCに取り込み,画像編集ソフトを使って15fpsで動く手書き風のアニメーションを作ったというわけだ。
 トレイラー動画にも出てきたが,このアニメーションシーンは低解像度で色数も少ないグラフィックスによって,実に気持ち悪いものに仕上がっている。
ちなみに,アニメーションのもとになった実写の動画は,Smith氏自身がモデルとなって作ったものとのこと。いかにもインディーズゲームらしい手作り感といったところか。

子供の遊びがまとまっています。ここからホラー向きのゲームシステムを考えてみるのも良いかもしれません。

■TRPGでホラーシナリオの作り方を学ぶ

シナリオ作成にひょっとしたら役立つかもしれません。
実際に遊んでみた記事は「のびのびTRPG ザ・ホラー 〜1人リプレイ」にまとめています。

■クロックタワーの恐怖の演出まとめ

クロックタワーをプレイして "怖い" と思った部分をまとめてみました。

(※ネタバレを含みます)

* プレイヤーの操作とは別に突然物音を立てる小道具(ドア、カーテン、テレビ、軋む床など)。原因は自然の風や軋み音だったりで意味はない、もしくは怪異現象による単なるいたずら、だがプレイヤーをドキッとさせる効果がある
* いきなり登場人物を殺すのではなく、「悲鳴が聞こえる」「その場所にいたはずの人がいなくなる」といった前振りを入れる
* 鏡を調べると中から手が伸びてくる。調べるとなぜか突如割れる鏡
* 写真・人物画を調べると、なぜか目から血を流す
* 物陰から黒猫が突如登場する
* 「霧が出てきて何か嫌なことがある」と思わせる予兆的な演出を入れる
* シャワー室のカーテンを開けると中には死体が……! いきなり死体を見せるのではなく、プレイヤーのアクションによって発見させるのが良い
* 恐怖の演出はキャラクターのリアクションで効果が倍増する。クロックタワーではショッキングな場面に遭遇すると主人公の目がアップになる。顔芸は大事
* 効果音はリバーブを深めにすると怖さが増す。それによりやたら響く足音。効果音を目立たせるためにBGMは控えめにする
* 鳴り続ける電話のベルの音。受話器はどこにも見当たらない (後で電話線が切断されていることがわかる)
* 鎧の中には友人の死体が……
* 大量に並べられたマネキン・人形。調べると首がもげたり倒れたりする。人形の中からシザーマンが登場
* シザーマンから逃げようとして走る主人公。何もないところで転んでしまう
* 睡眠薬を飲まされて地下牢に閉じ込められる。食べ物を与えられず飢えていた人間に喰べられてしまう
* エレベーターに乗って助かったと思ったらシザーマンと相乗り
* コンセントがささっていないのに不快な音を再生するレコードプレイヤー
* 天井の板が突然落下してくる。シャンデリアが突然落下する
* 部屋に誰もいないのに「誰かに見られている気がする」というセリフを入れる
* 突然怪異が出現すると入り口の扉に鍵がかかる
* 黒幕に殺された時の、黒幕キャラのドヤの顔芸
* シザーマンを倒したと思って安心していたら、黒幕が物陰から襲いかかってくる



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