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宮本茂のゲームデザイン〜オクルージョン

宮本茂さんのゲームデザインについて調べていたところ、面白い記事が見つかったので紹介します。

ここで公演された方は、スターフォックスの開発に関わり、宮本茂さんと仕事をしてその経験から「オクルージョン」という方法を学んだそうです。そしてその後、自身の会社「キューゲームズ」で「PixelJunk」シリーズを作るときにその方法が役に立ったそうです。

■オクルージョンとは

オクルージョン(occlusion)という単語の意味は「閉塞、閉鎖」です。
3Dプログラムでおなじみの「オクルージョン・カリング」は、あるオブジェクトが他のオブジェクトに隠されてカメラに映らない場合に、隠れているオブジェクトのレンダリングを無効にしてパフォーマンスを向上させる仕組みです。

公演された方が技術者であることを考えると、"オクルージョン"という言葉はこの辺りから拝借したのではないかと思われます。
ゲームにおけるオクルージョンとは、ゲームを作るにあたって邪魔をする"何か"で、それは「クールな技術」だったり「優れたアイデア」であったりするそうです。

■オクルージョンを除外するには

そのような邪魔者の「オクルージョン」を除外したりそれを活用するには、以下の3つを行う必要があるとのことです。

1. ゲーム作りにおいて絶対必要な要素は存在しない。たとえそれが優れたアイデアとしても邪魔になることがある
2. ゲームの前提になっているものが本当に必要なのか、もう一度検討し直す
3. アイデアを作っては不十分であれば壊し、壊すことで新しいアイデアが見つかる

スターフォックスは当初は「3D空間を自由に動き回れるゲーム」を作ろうとしていましたが、アイデアがまとまらずに迷走していたそうです。そこで宮本茂さんのアイデアにより「決められた方向に自動的に進行する」というルールにしたところ、すべてうまくいくことがわかりました。

・移動の自由を制限したことで、武器のコントロールやボスバトルに集中できるようになってより楽しくなった
・一人称視点から三人称視点になり、翼へのダメージやローリングもわかりやすくなった
・決められた進路をたどるので、敵との遭遇が“イベント”になりパターン構築や難易度調整がやりやすくなった

このように「自由度が高い」というクールなアイデアをあえて制限したことで、結果としてゲームとしての方向性やクオリティを確保できることとなったそうです。
こうした制限は他の任天堂のゲームでも有効に働いています。

* ゼルダの伝説:ゲーム開始時の武器を排除。それにより武器の使い方を自然に覚えることができた
* ゼルダの伝説 時のオカリナ:ジャンプキーを排除
* カービィボウル:"打つ角度を自由にできる" と軌道予測通りに動かせるので排除。これにより打つ力加減を制御する面白さが生まれた

そして自身が作ったゲーム「PixelJunk」でも"オクルージョン"を排除した結果生まれたとのことです。PixelJunk Monsters では武器をなくし、PixelJunk Shooter ではHPや重力の概念を排除したようです。

オクルージョンとなるアイデアは、一見優れているように見えても、実は別のアイデアを隠している側面があり、アイデアを壊すことで別のアイデアを見つけることができる……、ということとなります。


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