小説 自分おこし ~拡散的思考編~

・申し込み

「これ、面白そう」

 暇を持て余していた大学2年生のころ、activoというボランティアに参加できるサービスを見て、ある活動に目を惹かれた。

「イベントで子どもたちと関わる」

 もう、数年前だから募集内容を細かくは覚えていないけれど、自分の可能性を模索して、不安がこんがらがっていた時期に、これに応募した。

「こんにちは、Yセンター(施設の架空の名前)で活動するTと申します。よろしくお願いします」

「お願いします」

 このように、ボランティアスタッフとメールのやり取りをして、実際に何をするのかはっきりとは意識していないけれど、「面白そう」といういつもの理由で、Yセンターに足を運んだ。


・顔合わせ


「しゅんくんですか?」

「そうです、初めまして」

 広々としたスペースに恐る恐る入ってみると、そこには開放的なTさん、Fさん、Aさんがいた。
 そして、僕と同じようにボランティアに参加すると思しき、数人の男女が、机が並べられた席に座っている。
 初めはどのように接すればいいかわからないから、とりあえず静かに席に座る。

「みなさん、初めまして。Tです。これから、説明を始めます」

 メールでやり取りした、爽やかな雰囲気のTさんの司会で始まる。話すのは、ボランティアの内容と今後の流れ。

「集まってくれた方は、サポーターとして、半年間活動していただきます」

 どうやら僕は、「サポーター」として活動するという。その内容は、Yセンターで通念行われているイベントに、サポーターとして1つの企画をするという内容だった。
 当時の僕は、その活動にウキウキしていたし、なぜか分からないけれど長い間活動に関わった。

「それでは、自己紹介からお願いします」

 このように、サポートスタッフのTさん、Fさん、Aさんの紹介から始まり、集った人が自分について話す。大学生は僕も含めて4人いて、他は社会人が5人いた。
 男女も半々くらいで、年齢もばらばらな人たちが、「サポーター」として任命された。


・紙分析


「はい、どうぞ」

  集まった1人1人の机の上には、紙が置いてあった。

(なんだこれ)

 茶菓子を口に含みながら、不思議そうに紙をながめる。すると、自分の得意なこととか、自分はどんな人かいう欄がある。

「みなさんの机上にシートがあります。それに、時間をとるので、書いてみてください。」

 僕は自分が嫌いなようで好きでもある。それは、情緒のバランスが揺さぶられた時に反転するけれど、その時は自分を紙に書く作業が楽しかった。
 好きなことは、確か、お笑い番組を見ることやスポーツをすることなど、当たり障りのないことを書いた。あとは忘れた。

 欄が埋まったから鉛筆を置いて、書く時間が終わる。

「それではみなさん、発表しましょう」

 活気のあるTさんの提案に、少し驚いたけれど、そりゃ、これから一緒に活動する人に心を開かなければ一つの企画なんて成立しない。
 サポーター間の交流と、企画提案の練習を、スタッフの方は用意してくれた。
 
 このように、各々が発表し合い、その後に歓迎会を開く。近くに中華料理のおいしいお店があったから、Tさんが連れていってくれて、みんなで食事を共にした。

 その会に、元サポーターの人も合流して、どのような活動をしていたのかという話も聞くことができた。

「これから、どんな感じで進んでいくのかな」

 学校教育や、大半の勤め先では「これ」という行動の正解がある。しかし、今回申し込んだ活動は、「自分たちで企画する」という、元はふわふわと頭の中にあるものを現実に落とし込む作業だ。

 何か、その活動に対する適性が動機にも表れるように、企画すらしていない初日から“わくわく”したのを覚えている。

※今後も章を、追加していきます。



・購入者の方へ

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