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思いわずらうことなく愉しく生きよ | 江國香織 | ☆☆☆☆

この人には、私とは違った景色が見えています。
江國香織は好きで、多分一番最初に読んだのはすいかの匂いで、私が23歳くらいの頃に読んだ気がするけど、それから何冊も読み、なんとなくうっすらこの人が掴む感性の彩度や切り取り方の角度が見えてきたような気がします。
すっかり晴れた秋の空、燦々と輝く太陽に手を当てると、少しだけ手が透き通って見えるような、これは私が今考えた、彼女の感性ってどんな感じ?を表現するために頑張って用意したものだけど、言い表すとそんな感じ。

ちょっといいところに住む、上品な、のびやかな心根を持つ三姉妹。彼女たちが過ごす日常を男女の関係に割とフォーカスして描かれてます。それぞれDVがあったり、男性に依存しちゃってたり、奔放に生きたり、いろいろな性格があって、それぞれ魅力的で、愛着がありました。読んでて面白かった。

三姉妹、キャラ勝ちだよな。世間知らずだとか、浮世離れしたようなところが垣間見えますけど、江國香織ならではの書き方で、現実的な雰囲気を残しているから、東京都内に住む普通の家族というイメージを持つことができます。

これが、いわゆるエンタメ小説か、純文学か、みたいなしょうもないカテゴライズの話に落とし込むほどの必要性を一切感じないのだけど、あえてその話を出そうとした理由として、私からすると、書き方がかなり特徴的と感じたからです。

特徴1: ひらがなの使い方

あえてひらがなを使うことで、文章がまろやかになるんですよねぇ。これは江國香織が使う魔法だなと思う事があります。意図的にひらがなにしている感じ。最初の頃に多かったです。

特徴2: 注釈

外国の小説に良くあるイメージなんですけど、言葉を修飾するような使い方で注釈が多く使われています。それがあることで、ただの物質的なイメージだけではなく、その背後にあるものが加わり、入ってくる情報に厚みが出てきます。場合によってはその注釈のおかげで愛着が湧くこともあります。うまく説明できないけど。

特徴3: スペースの使い方

場面を移動する時に、スペースがバンバン使われてます。特徴的かというと他の作家さんも良くやっていることなのであまり特別ではないですが、読む側としては場面毎に切り替えられるので読みやすさに貢献しています。

なぜこれが純文学か、エンタメ小説か、の違いに発展するかというと、私はこれらの特徴があるから、純文学になるのではないかと思ったからでした。ストーリーは、まぁ現実離れしてるところはありますけどそれほど、次が気になるということではないですし(長女が離婚するかどうかはものすごく気になった)、そういうところを考えると、江國香織が彼女なりに書きたいように書いた=純文学、という括りになるのかななんて思います。

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