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夢を見たのと祖母は言う

祖父が旅立ってから10年以上経つが、未だに祖母の暮らす部屋には亡き人の気配が色濃く残る。
揺り椅子は主人の帰りを待ち続け、本には栞が挟んだままだ。

数え年で100歳になる祖母は、幸い元気に暮らしているが、偶に顔を見せる私には弱音を漏らす事がある。

「あの人の背には羽があって、ふわりふわりとお伽話の世界に私の手を取り連れて行ってくれた。
2人で過ごした時間は楽しくて、あっという間に過ぎ去って。
今思えば、あの人との日々は全て夢じゃ無いかと思ってしまう。
昨夜も2人で砂漠の国に行っていて、いない事が夢だと思っていたのに、目が醒めたら1人きり」

そう呟く祖母の肩が小さくて、私はたまらず庭に出て、花を1輪手折ってみる。

祖父は海に還したから。
雨や風には祖父がきっと宿ってる。

「朝降った雨に忍んで会いに来てくれたよ」

今朝は雨が優しく葉を叩いたから気づけなかったんだよと花を渡せば、彼女は残る雫を可憐に撫でた。

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