見出し画像

56年かけて汚名を雪ぐ

初めに、私は専門家じゃない。
ただ、この作品のファンで、これはファンレターのようなものなのだけど。
ある日突然現れて、35年から40年ほど共に過ごして去っていく、生理の価値観が、現代になってようやく変わってきた事を伝えたい。


生理ちゃんという映画が11月に公開される。
ユニークに擬人化し、コミカルに女性と生理の関係性を描く作品だ。
元は漫画で、生理を擬人化して、月イチで人前に現れてはぐーパン食らわしたりやりたい放題だ。
デザインはふざけてるが、内容はとても真摯だ。


最近、#NoBagForMe 活動や、PMSについて認知が広まったり、生理休暇が企業で取れるようになったり、男女合同で生理に関する授業を行ったりと、生理に関して随分オープンになってきたな、と感じる。

しかし、私はずっと、生理は隠すものとして教育を受けてきた。
生理は、恥ずかしい事だと教え込まれ来た。


≪恥の歴史≫

男女別れての生理に関する授業を始め、生理用品が入ったポーチの存在すら同じクラスの男子に気づかせてはいけないので、服の中に隠してトイレに行った。
家でも、兄達にその存在を気づかせない為、巧妙に捨てなければいけない。

CMでは、清潔感あふれる女優が軽快に持ち歩いてるのに。
デザインは可愛らしく、オシャレなのに。
そんなものを表には出してはならないものだったのだ。

そんな風に刷り込まれてきたのは、生理=恥であるという認識が脈々と受け継がれてきたからだと大学で民俗学を取ったときに知った。

発端は、室町時代に「血盆経」というお経が日本に持ち込まれたことだと、話が始まった。

要約すると、女性はお産の際に血を流し、それで地を汚し、川を汚し、それと知らずに川の水を飲んだ人をも汚す罪があるので、女性はもれなく全員血の池地獄に落ちる、という内容のものだった。
これは、実は作られた偽の経典だったのだが、日本では生理の血も不浄なものとして全国に流布し、現在までの生理に対する認識を歪ませてしまった、というものだった。

室町時代。室町時代て。始まりは1338年だよね。
その間に日本で色々あったでしょ、と大学生時代の私には俄かには信じられなかった。


そう。色々あった。
けれど、『不浄』と汚名を与えられた生理は、軽んじられ、ひた隠しにされた。
そして遂に近年まで、生理という存在は羞恥という感情で踏みにじられ、ガッチリと固まってしまった。

日本で再び表に出てこれたのは、昭和38年に日本人用の生理用品が発売された時だ。
ここでようやく、生理は口に出すのを許される存在になった。

生理観の転換期が、やっと訪れたのだ。


≪情報発信の果てに≫

生理=恥 の考えは根深い。
平成になって結構経つのに、生理用品を男性の目から隠し続けなければいけない程に。

薬局やスーパーでは、堂々とその可愛らしいデザインで売られているのに、いざ買えば外側からは見えない袋に入れられる。

存在自体が受け容れられてるのに、隠し続けるという、捻れた状態があった。

年頃になった少女の前に突如現れて。
どんなものか知らない男子は興味本位で、傷つける言葉を投げかけて。
それが嫌で、やはり生理を嫌悪し、隠し続ける悪循環。

生理観を明るいものに変えるには、とても長く地道な努力が必要だった。

こんな努力が背景にあって、
昨今インターネットでは、冒頭に紹介した運動だけでなく、生理痛がいかに辛いのか、どういうものなのか積極的に個人が発信している動きがある。

生理=恥 という土壌が、ようやく緩んできた結果に、生理ちゃんの映画化がある。

映画、という媒体を取った事に、私は本当に驚いた。

というのも、インターネットで#NoBagForMe を広めても、生理ちゃんが正しい知識を訴えても、受け取る側は興味のある人に限定されてしまうからだ。

能動的に情報を趣旨選択して行くインターネットの特性故の弱点だ。
TVやラジオといった、受動的に情報を得られるものとは、受け取る層が限定される。

しかし、媒体を超え、有名女優を起用しても尚、『生理ちゃん』という題名を変えずにいる。
全国民に向けて、生理を隠さず堂々と発信している。

これは、1338年から不浄なものとされ、昭和38年を転換期に現在まで、56年かけて汚名を雪いできたからできたことだ。

映画にあたって、これから、CM、ポスター、ラジオと、様々な媒体で宣伝され、無作為に老若男女が目の当たりにする。
好む好まないを問わず、誰しも、これまでの比にならない数多の人たちに向けて。

室町時代に行脚して広まり根付いた、生理に対する認識は、現在に至って、映画という媒体を以って認識を改めようとしているのだ。




この記事が参加している募集

推薦図書

とても光栄です。 頂いたサポートは、今後の活動の励みにさせていただきます。 コメントやtwitterで絡んでいただければ更に喜びます。