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友だちの恋人

最近ロメールの映画を観ている。
最初に観たのは「緑の光線」。これで心を掴まれた。

緑の光線、海辺のポーリーヌ、飛行士の妻、美しき結婚、満月の夜の順に観て、今回のが6作目。飛行士の妻が一番好きだったが、この「友だちの恋人」を観たことで順位が変わりそうだ。

主役に共感できること。印象的な映画、小説はいつもそうだ。
「友だちの恋人」の主役、ブロンシュの性格はとてもよかった。友だちが話している時の話に入れない感じ、遊んでいる途中で「家に帰りたい」という気持ち、結局落ち着くのは肉体派・王道のハンサムボーイではなく、考えの合うナヨナヨした、ちょっとニッチな男性。

この映画は最初から夢中にさせるほどのインパクトはない。
僕が思わず「良いねえ」とつぶやいたのは、ブロンシュが草原で泣くシーン。僕も同じ状況なら泣きたくなっただろう。ここであれが欲しいというシーンでちゃんとそれが来る。視聴者と監督の意気が合っている。

またブロンシュが好きな人と会ったあと、全然喋れずに家で「私、ダメな女」と鏡を見て泣くシーンも良かった。ここは必要だっただろうし。

また単純に、ブロンシュが僕のタイプであったことも大きい。映画の中では「容姿が悪いわけじゃないが、まあ普通の女性」という立ち位置だったが、現実のフランスでもそうなのだろうか? 多分、色気の問題だと思うけど。友だち役のリアは色気があって、本場でもそっちの方が人気なのだろう。

友だちの恋人であるファビアンも、性格が良かった。かなり感情移入できた。レアではなく、ブロンシュに行きたがる感じ、また草原の上で衝動的にキスするシーンなんかも、とてもリアルだった。

草原で2人が抱き合うシーン。ここはびっくりするほど生々しかった。映画でここまで恥ずかしくなるというか、自分がその場にいるような感覚に襲われたのは初めてかもしれない。多分、僕がブロンシュの顔と性格が好きだったからだろう。だからファビアンが彼女のキャミソールの中に手を入れた時、こっちもゾワっとした。ブロンシュが公務員の真面目な女性だからこそ、こういうシーンで妙に色っぽく感じるのは必然である。

この映画は、ロメールの中では一番日本的かもしれない。ブロンシュのようなシャイな女性は、日本でも結構いるだろうから。しかしもちろん撮影場所がフランスなだけあり、カフェ、パーティー、ウインドサーフィン、アパルトマン、服装など、日常風景は非日常的に映る。ロメールはテーマ自体はありきたりなのに、会話や仕草で毎回爪痕を残してくれる。一番難しいことだと思うけど。

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