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小説『ある予備校生の四季』

また短い小説を書いてみました。春夏秋冬に分かれ、全部5分ほどで読み切れると思います。お読みいただけると嬉しいです。 「ある予備校生の四季」 春 高校を卒業し、春の訪れとともに大学受験に失敗した僕を迎えたのは、ある大手の予備校だった。『第一志望はゆずれない!』がキャッチフレーズだ。 集まる生徒もどこか精彩を欠き、あるものはこの世の終わりみたいな顔をし、あるものは、から元気を身にまとい、僕もそんな中の一人だったと思う。 唯一共通していたことは、今年こそ勉強をして志望の大

    • 小説『不安発作または感覚過敏症』

       それは夕食を食べてリラックスしているときだった。僕は部屋に引き上げベランダで煙草を吸っているときに声が聴こえてくるのだ。 「もう眠った方がいいよ、おやすみ」 「煙草を吸ったら横になろうね」 「薬飲んだ方がいいよ」 そして突然不安発作が僕を襲った。それは強烈で立っている事も出来なく、外の音や内側の声、光、感覚すべてが一気に押し寄せて来るのだった。 僕はたまらず頓服の薬を多めに飲み、部屋の電気とパソコンのディスプレイを消して、ふとんに横になり目をつぶった。こういう時は仰向

      • 器の中身(小説)

        前編 うとうとしてどこかの駅を通り過ぎた時、窓側の席に座っていた僕に圧巻の景色が待っていた。 インドの西、ムンバイから中央のハイデラバードへと向かう2等の列車の旅。向かい合わせの席で一緒に乗り合わせたのは、インド人の家族連れだった。 「君はどこに行くんだい?」 「南インドの聖地を周りたいんです」 するとバックパックにくくられている3ウェイの寝袋を見て、 「その寝袋の中身は羽毛かな?ヒンズーの寺院では殺傷を嫌うよ」 「そうでしたか………」 その寝袋は、池袋のアウトド

        • 明日は通院だから、もう寝よう。

        小説『ある予備校生の四季』