俳句の無力さについてー福本啓介句集『保健室登校』ー
福本啓介が上梓した『保健室登校』(文學の森)は、わずか六〇句からなる小さな句集である。あとがきによれば『大花野』を上梓した小山正見に「句の数が少ない句集を上梓する際の心得」を学んだともあるが、昨年小山が上梓した『大花野』はアルツハイマー型の認知症である妻との日々を詠んだ句集で、やはりわずか三六句のみの句集であった。句集といえば、ある程度の期間のなかで詠んださまざまな句をまとめて一冊にしたものが多いが、『保健室登校』も『大花野』もひとつのテーマに絞ってまとめられたものである。