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海外HRテクノロジー最新動向 【随時アップデート中】

本記事は、昨年ラスベガスにて開催されたHR Technology Conference & Exposition 2018にて、総数400社超の企業ブース群を駆けずり回って仕入れてきた情報を取りまとめたものになります。10月にラスベガスを再訪するにあたり、自分の中での整理を兼ねて、記事として公開させて頂きます。

0.はじめに

こんにちは、亀山と申します。タレンタという会社で人事系クラウドサービスの導入支援&カスタマーサクセスを担当しています。初めましての方がほとんどかと思いますので、本編に入る前に少しだけ私たちのことをお話させてください。

タレンタは「Work Happy! な世の中を創る」をミッションに、海外の人事・人材系のクラウドサービスを、日本国内に展開している会社です。(ちなみにSalesforce, Marketo, Concurなどの国内事業展開を牽引してきたサンブリッジという会社のグループ企業になります)

そのような立ち場上、アメリカで開催される世界最大級の展示会であるHR Technology Conference & Expositionには毎年参加し、新しいパートナーとなり得る「活きの良い会社」を探しまわっています。

近年、日本国内でもHRテクノロジーへの注目が集まってきたこともあり、日本のベンダーさんやお客様も本イベントに参加されることが増えて参りましたが、私たちのように「継続的」かつ「全領域」をウォッチしている企業・個人はあまり多くないのではないかと思っています。

この記事を通じて、私たちがこれまで培ってきた知見を、少しでも多くの方にお伝えできれば幸いです。

1.AIリクルーター

母集団形成に関するソリューション群は、HRテクノロジー全領域を見渡してもAI活用が特に活発な分野で、各社とも精度を向上させるのに躍起になっています。

日本でのサービスは各媒体に転職希望者が職務経歴情報などを登録して、その情報がデータベースとなるのが一般的です。一方海外の場合、FacebookやLinkedinに登録されている情報をクローリングして、ジョブマッチングを実施→候補者レコメンドというところまでAIが自動で行ってくれるサービスがここ数年で急激に増えてきています。前回のExpoではARYA, enteloなどの数社が出展していましたが、ここ一年で多くのサービスが立ち上がったようで、群雄割拠の様相を呈しています。

また、少々変わり種ですが、キャリア採用において最初の接点となる「ジョブディスクリプション」の文章をAIが添削してくれるサービスもあります。より対象の求職者層に響きやすい単語や言い回しをレコメンドしてくれるため、経験が浅いリクルーターでも魅力的な文章が簡単に書けるようになります。

最近はジョブディスクリプションだけでなくスカウトメールの文面も添削してくれるようになったようです。私自身も自社でスカウトメールを送る時がありますが、文章に込めた熱量でかなり返信率が違うなと実感しています。AIを活用して文章作成することで、時間をかけずに魅力的な文章が書けるようになり、時間効率に大きな差が出そうですね。

2.採用マーケティング

採用活動とマーケティングの類似性・親和性については今更説明するまでも無いかと思いますが、マーケティング領域における「オートメーション」のトレンドが、そのまま採用領域にも展開してきました。

これらの製品は、タレントプールの潜在応募者群に対して、属性に応じたナーチャリングを実施し、徐々にエンゲージメントを高めて、応募につなげることを目的としており、分析機能などにも強みがあります。

BeameryやSmashFlyのような専業ベンダーもいますが、Avature, Workable, green houseなどの採用管理システムベンダーが手を広げている場合もあります(個人的な予想ですが、キャリア採用の増加・新卒の通年採用化を受けて日本の採用管理システムベンダーも今後この領域に力を入れてくるのではないかと思っています)

また、応募のハードルを下げたり、事務的なコミュニケーションの負荷低減をするために「チャットボット」の活用も広がっています。

以前はチャット上で面接の日程調整ができるという程度でしたが、一年間で大幅に機能強化しており「夜間の勤務がありえるポジションですが大丈夫ですか?」というような、簡単な条件面のスクリーニングなどもチャットボットが自動で確認してくれるようです。

文章解析の基礎技術が向上したことで、採用領域以外も含めチャットボットのソリューションは非常に多く立ち上がってきた印象です。今年どのような進化をしているのか、新規プレイヤーが増えるのか(または淘汰されていくのか?)ひそかに注目している分野です。

3.採用選考

プログラミングなどのスキルテスト、ウェブ面接、適性検査なども古くからある領域ではありますが、引き続き多くのプレイヤーがしのぎを削っています。

この領域は(自社で取り扱っているというひいき目が多分にあるものの)、HireVueがあらゆる面で他社の数歩先を行っているという印象があります。

Web面接、プログラミングテスト、ゲームベース適性検査など単体でも価値の高い機能群をワンストップで提供しており、さらにそれらをAIによる分析で「公平・高精度・自動」で評価することができるのは、HireVueだけだと思います(営業トークみたいになってしまって恐縮ですが…)

AIによる選考で「できること、できないこと」については、多くの方から良く聞かれる質問なので、別途記事にしたいなと思います。

あと、面白いアプローチだと思ったのはイスラエル発のVR適性検査ベンダーのActiViewですね。VRコンテンツを使って、ワークサンプル型の適性検査などを受験できるという特徴的なソリューションです。まだ顧客事例は見当たらないようですが、これからの動きに注目です。

4.パフォーマンスマネジメント

日本企業ではまだまだ「年次評価」の考え方が主流ですが、海外ではこのような方式は完全に時代遅れとなっており、「リアルタイムフィードバック」「1on1」などのトレンドを取り入れたソリューションが主流になっていました。人事施策に関して「日本では海外から5年遅れてトレンドがやってくる」と言われていますが、そのようなギャップをヒシヒシと感じました。

5.ラーニングマネジメント

本イベントに参加するまでは、ラーニングの領域のテクノロジー適用というと「eラーニング」程度しか考えておらず、正直あまり注目をしていない領域でした。しかし、実際にブースを回ってみると「いかに学習を継続し、成長し続けるか?」という点にフォーカスした魅力的な製品が数多く存在し、いい意味で期待を裏切られた結果となりました。

特に面白かった製品を2点だけ紹介させてもらいます。

一つ目はDegreedという製品です。Degreedは企業向け・個人向けの両サイドでサービスを展開しており、最初に自分が興味のある/今後伸ばしていきたい分野を登録しておくと、その希望に応じてオンライン講座やニュース記事をレコメンドしてくれるサービスになります。
企業向けサービスでは既存の研修管理システムと連携し、各社独自の教育コンテンツを配信することもできますし、受講状況などを一元管理することも可能です。また、個人向けに「Degreed独自の認定資格」を提供し、学習と個人のキャリア形成を繋げている点も特徴的でした。

二つ目のサービスはBridgeという製品です。こちらの製品は、単体の機能で派手な特徴は無いのですが、パフォーマンスマネジメント・1on1ミーティングの管理機能などが統合されており、UXが非常に優れていると感じました。

例えば、従業員一人ひとりの成績、1on1の実施履歴、研修受講履歴などがタイムライン形式で一覧化されており、直感的に個人の成長履歴や今後のキャリア形成についてのディスカッションができたり(画像中央)、組織のスキル保持状況を一元的に可視化して組織の研修計画の立案に使えたり(画像右)「あったら便利」と思う機能が、過不足なく用意されている印象でした。

6.レコグニション

従業員同士で褒め合い、ポイントを送り合うような製品(日本だとUniposさんとかですね)も数多く出展していましたが、特に面白かったのがBravoという製品です。

この製品が特徴的なのは、社内のメーラーやチャットと連携して「AさんにXX回『ありがとう』と言ったからポイントを送ってみよう!」といった形で、AIが少々おせっかいなくらい行動をレコメンドしてくる点です。

「導入した直後は流行ったけど、しばらくすると形骸化してしまった人事制度・システム」というのは人事部全員が耳の痛いあるあるネタかと思いますが、その課題に先回りして「いかに自然に使われるようになるか?」を含めたUX設計になっているというのは、施策の浸透・定着化という観点で非常に重要だなと感じました。

7.ウェルネス

単純な身体の健康だけではなく、精神的、社会的に良好な状態を目指す「Well-being」に目を向けた製品が多く出展していたのが印象的でした。(考えてみれば当たり前で、身体が健康でも、メンタルが疲労してたら仕事に打ち込めませんよね)

チャットボット経由でカウンセラーに相談ができるgingerや、サーベイ機能やマインドフルネスのガイドを受けることができるmeQuilibrium、ちょっと変わり種だとVRコンテンツを使ってリラックス効果を得るHealiumなど様々なアプローチのソリューションが出展されていました。

8.おわりに

おそらく3日間で50社以上のブースを見て回りましたが、全体的なトレンドとして以下を感じました。

・AI活用の広まりと深まり
・製品のUXが重要な差別化要素

特に一点目のAIについて、前回前々回と比較して、本当に多くのベンダーがAI活用を推進してきたなという印象があります。

よく「AIで人事の仕事が無くなるのでは?」という懸念も聞かれますが、今回の出張で「定型業務の多くが自動化・省力化されるのは間違いない」と感じました。ただ一方で、人事戦略立案、制度設計、従業員のコーチングなど「人が行うべき付加価値の高い業務」は却って重要度が増すのではないかと思っています。

少々逆説的に聞こえるかもしれませんが、テクノロジーの力を借りることで、ようやく人事部が純粋に「人」に向き合うことができるようになってきたのではないかなと考えています。

また、何よりUSにおけるHRテクノロジー業界の勢いや熱気を直に感じ取ることができたのが一番大きな収穫でした。
今年も10月に本イベントに参加し、現地で得た情報を皆さんにご提供できればと思いますので、どうぞご期待ください!
(フォローしていただけると大変嬉しいです!!)

※ 記事中の製品画面・ロゴ等は各社の公式HPより引用しています。問題がある場合は修正致しますので、亀山のTwitterアカウントまでご連絡ください

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