出りょく 6

会社にいる年下の先輩が、仕事が忙しいときに腹が減ると
「マックが食べたくなる。ジャンクなものが」
と、よく言う。
仕事が忙しくて且つ腹が減ったときという状況は違えど、自分も似たようなことはある。ただしマクドナルドではない。
スーパーの菓子パンコーナーとかにある8㎝CDぐらいの小さくてパッサパサのハンバーガー。レンジで温めたらパンがグニュっと水っぽくなる上に、リトルフィートに切られたの?程度に小さく縮む、肉の原材料を確認してはいけない気がするあのジャンクな『ハンバーガー』を無性に食べたくなることがある。
と、その年下の先輩が「マックが食べたい」と言うたびに「自分は…」と思い、「ジャンクなら負けねぇッス」とセリフだけ聞くとロビンマスクのようなアピールになるのも、血の海地獄になるのもイヤなので言い淀んでしまう。


小学校に入学したころ、父親から「本を読んだ方がいい」と言われ、何冊か買ってもらった。
父親としては、自分が読んだことがあり、そして当人的には間違いないだろうと思う『海底二万マイル』『十五少年漂流記』を「これ、子供のころ父さんが読んでなぁ…!」とテンション上がり気味に買ってくれた。
が、やはり自分で選びたかったので、父親に言って『西遊記』も買ってもらった。
当然読み始めるのは『西遊記』からで、結局『海底二万マイル』『十五少年漂流記』は、読んだ記憶はあるが内容についてはほとんど記憶にない。西遊記に関しては挿絵まで鮮明に覚えているが…

と、小学2年生ぐらいまでは読書をする子だったし、宿題もキチンとする、なんなら勉強もできる方だったと記憶している。

そもそも本を読む子だったのだ。
大人になって「本を読むぞ!」と決心なんぞしなくても。

小学3年生になるまでは。

これまでの『人生の岐路』を振り返るならば、そのひとつは間違いなく小学3年生のときだと思う。選択しようのない岐路。


自分の小学校時代の話になるとよく話すのが
「転校したこともないのに、小学校6年間で担任の先生が5回も変わった」
っていう話。
するとこう聞かれる。
「生徒に問題児が多くて?」
バカ言うな
「PTAとか親御さん絡みの心労だ」
とんでもない
いわゆる学級崩壊やモンスターペアレンツなんてまだまだ存在しない、昭和の、それも地方の市街地の小学校で、だ。
この話、ある種の自慢というか「普通あんまり無いよねー」的な感じで言われるのでネタとして話せる『陽』の話。
ただ、学級崩壊もモンスターペアレンツも存在していなかったが、一方では『叩かれる』『殴られる』『廊下に立たされる』『給食食べ終わるまで授業が始まろうが片付けられない帰れない』なんてのは当たり前にあった時代で、これらはドン引きされるので話せない『陰』の話だ。

ウチの小学校は全4クラスで、1・2年、3・4年、5・6年の2年間は同じクラスになる。

小学3年生になったとき、クラス替えが行われた。

この時点で担任となる先生は、自分にとって4人目の担任の先生。

「次の担任、どんな先生だろ」

25%の確率で、この学級、そしてこの担任になったことこそが、それまで「読書をする、宿題もキチンとする、なんならちょっと出来が良かったんじゃないかっていう小学生」が壊れる発端だった。

(つづく)

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