見出し画像

死期際彩

  死期際彩(しきさいさい)

                                               大鳳 万

 もしも春に死ぬならば、暖かく麗らかな午後がいい。人々が陽気に誘われて、楽しげな所に向かう中、まるでその流れに逆らうように、人気のない静かなところを求めてそこへ向かう。人々が行き交うのを横目に、緑茂る景色には似合わない、足さばきの良い軽やかなスカートを履いて。

そうして山間にかけられた高い橋に着いたら、一思いにそこから飛び降りるのだ。

ここから先は

1,431字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?