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R.I.P. ウェイン・ショーター 2:Wayne Shorter "Native Dancer"

先週、ウェイン・ショーターが旅立ってしまったということでとても悲しく、マイルス・バンドでの "Nefertiti" と "E.S.P."が特に好きでたまらない、と書いた。

その最後に、ハービー・ハンコックとの "Maiden Voyage" (「処女航海」)の動画リンクを貼った。1998年のライブだというが、あまりに自由すぎてオリジナルとあまりに違っているから「こんなの私の好きな「処女航海」とは違う!」などと言い出す人がいそうだ。しかし、これはハービー・ハンコックの曲なのだ。自身の世界を自ら壊して再構成して新しい魅力を見せる。ハービー・ハンコックやウェイン・ショーターのどこが好きかって、そういう枠を感じさせない自由さが大好きだ。

ウェイン・ショーターのサックスは自由奔放に歌っているようだ。他のテナーサックスの巨人は、もっと枠をきちっと抑えながらブリブリ吹きまくる求道者っぽくスピリチュアルな雰囲気の人が多い印象だが、ウェイン・ショーターはそういうところは微塵も感じさせず一線を画すると感じる。

マイルスバンドに加入前のソロアルバムはもっと固い感じがあるが、後年はその自由さにますます磨きがかかっていったように思う。

まずは、ウェイン・ショーターといったら多くの人が好きだととりあげる 1975年の "Native Dancer"。ミルトン・ナシメントを全面的にフィーチャーした最高傑作とも評されるアルバムだ。

どの曲も素晴らしい。1, 3, 4, 6, 8曲目はミルトン・ナシメントの楽曲で私の好きな曲ばかり、ミルトンの歌声も素晴らしいし、ハービー・ハンコックや脇を固めるメンバーも調和のとれたいい演奏で、その上で伸び伸びと歌うように踊るようなサックスが楽しめる。また、このアルバムはジャケ写も気に入っている。

1970年から1985年まで、ウエザー・リポートに参加してジョー・ザヴィヌルを支えていた。いい曲ばかりでヒット曲が多いが、私はその中でもとくに、"Black Market," "Birdland" あたりが好みだ。ウエザー・リポートはがっちりと作りこんだ曲が多いと思うが、奔放でエキサイティングなライブ演奏がいい。

1985年にウェザーリポートを離れた直後にリリースしたソロアルバム、"Atlantis"は本人のソロというより楽曲、アンサンブルを聴かせる感じだ。電子楽器をうまく使った音作りだと思う。

なかでもタイトル曲 "Atlantis" は不思議な時空間のゆがみや拡がりを感じさせる面白い曲だ。

そして1曲目の "Endangered Species"、シンセ・ベースだろうか、軽快なリズムで楽しい曲展開がいい。

女流のベーシスト・ボーカルのエスペランザ・スポールディングの持ち歌でもあって、よく演奏している。2018年の Kennedy Center Honor のパフォーマンスが素晴らしい。

"Atlantis"のあと、1987年の "Phantom Navigator", 1988年の "Joy Ryder" どれもポップな音作りだが、やはりウェイン・ショーターならではの不思議な感覚が感じられる。

2000年ごろの彼のカルテットもなかなか悪くない。たとえば、2002年のライブ "Footprints"。2003年の "Alegria"は、さらに共演者を増やし、また、管楽器のアンサンブルも聴かせ、多彩なアコースティックの音作りを楽しむことができる。一部の曲は初期に作曲されたものの再演ではあるが、ずっと自由でクロスオーヴァーなアレンジでまったく新しい曲に生まれ変わっているようだ。



1967年のアルバム "Adam's Apple"に収録されている "Footprints" をエスペランザ・スポールディングとデュエットで演奏した2014年ごろのライブが動画で上がっていた。これも印象的だ。


最後に、ミルトン・ナシメントのライブ、ウェイン・ショーターに、ハービー・ハンコック、エスペランザ・スポールディングをバックに従えた2013年の演奏で "Travessia"。



R. I. P. ….

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