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デティ・クルニア:Detty Kurnia "Kulu Kulu Karawang Modern"

世界の歌姫たち」という我ながらベタな名前だなと思うマガジンを作って、愛している女性シンガーばかり、愛している思いのたけを週1、火曜日に投稿している。20回目の今日は、インドネシアからデティ・クルニアだ。

バンドゥンを中心都市とする西ジャワ・スンダ地方の、スンダ語で歌われる歌謡曲、ポップ・スンダの女王として君臨したのがデティだ。「君臨した」と過去形になっているのは、実は私もこの記事を書くにあたって調べて今さら知ったのだが、2010年に49歳の若さで亡くなったということだ。

私が彼女を知ったのは1986年日本でリリースされたLP、クルクル・カラワン・モデルン "Kulu Kulu Karawang Modern" だ。今では中古でしか入手できない。

1987年前後に購入したものだと思う。デティ・クルニアの日本発売 LP と現地のカセット

YouTube でLPをそのままアップしてあるのを見つけた。いずれ視聴できなくなることが予想されるので、LPの中古を探し回る前に聴いておきたいと思う向きは、こちらを今のうちに聴いてみてほしい。

LP実物では1曲目 (このYouTubeでは2曲目 (5'19''から))  がタイトル曲の、クルクル・カラワン・モデルンだ。メドレー形式になっていてポップな楽しい曲だ。チープなシンセの音とスリンという竹製の笛と軽いパーカッションの上に載って、独特の節回しのゆったりとしたかわいらしいチャーミングな歌声がいい感じだ。聴いていると突如、「しろぢに、にあかく、しのまーるそめて、あーうぅッ、つくしやー、にぃっぽん、ろはたわー」と日本語が飛び込んでくる。LPジャケット裏の解説を引用しておこう。

デティ・クルニアが日本語を話す、というのでも、日本の曲を歌った、というのでも、もちろん無い。耳で憶えていた(憶えさせられていた)日本の古い歌を、おもしろ半分に(あるいは意味も知らずに)歌詞の間に挿入したのであろう。1942年、日本がインドネシアを侵略し、3年にわたって占領していたなんて事は、インドネシアでは小さな子供でも知っている事実だが、その時代に強制的に歌わされていた歌を、メンバーかスタッフの誰かが憶えていたのかもしれない。しかし、内容は、日本への恨みを歌っているわけでではないようだ。

Kulu2 Karawang Modern LPジャケット裏側の金沢直人氏の解説

彼女が活躍した時代は、ほとんどがカセットテープで現地ローカルの範囲のみで流通していたせいか、今、音源を入手しようとするとなかなか見つからないようだ。LPやカセットも手元に残しておいてよかった。

Spotifyではベスト盤が聴ける。

Amazonで見てみたらラユンガン、そういえばジャケットは記憶にあるが、これは持っていない。

Rayunganは、Spotifyでも singleで聴ける。

https://open.spotify.com/track/5NxoUhj4CxO3nxYH9smejJ?si=f8e607fe382e45a2

多民族/多言語から成るインドネシアには、それぞれの地方にそれぞれの特徴ある民俗音楽があり、それをポップスにしたてたローカル色満点な歌謡曲が存在する。それぞれのジャンルで欧米のヒット曲をカバーするジャンルもあったりということで、それゆえに音楽の坩堝と言われていた。1990年ごろ以来、熱心に追いかけていないので最近の事情はあまり知らない。

ちなみにスンダ地方の中心都市、バンドンはジャワ島西部にある。

インドネシア・バンドン Google Map のスクリーンショット

最近のポップ・スンダはどんな曲があるのだろうか。YouTubeでちょっと検索してみた。たぶん地元のバンドゥン・ミュージックの official で2021年最新(2021年5月に)の動画がひっかかった。健在である。

Bandung Music の YouTube チャンネルはこちら。

Spotifyでは Play List があった。

竹笛スリンの音は欠かせない。独特のメロディとゆったりとしたリズム、軽いパーカッションと、サイケな雰囲気を醸し出すシンセといったアンサンブルが特徴的だ。エレクトリックギターが入ることもあるが、やっぱり若干チープな音作りで少し浮いてしまって野暮ったい感じもいい。現代風になって民俗色が薄れた歌もあるし、当時の音そのままのスタイルでの演奏もある。

さて、1987年だったと思うが、クルクル・カラワン・モデルンを紹介してもらったときに、「彼女には”ブル”というもっと激しい歌がある」と聞いていて、探しても見つからなかった。以来、ずっと心の奥底にひっかかっていた。この記事を書きながら、ふと、心の表層に浮上してきたので、さっそく調べてみた。なんと YouTubeにもあがっているし、Amazonで中古のCDがあるのも見つけた。こちらは、さっそくポチッた。

Detty Kunia "BULU"
注文した翌日に届いた。中古だがほぼ新品。
Indonesia の Dion Record からライセンスをうけ Alter-Pop Distribution から1990年発売の日本版、日本語解説もついているのがうれしい。


Spotifyではもう一枚、その名も "Pop Sunda" とタイトルするアルバムが上がっている。 


押しつけがましいコマーシャリズムが見え見えの音楽に少々飽きてきたり、そういえば最近、眉根に皺を寄せて音楽を聴くことが多くなったなぁ、などとふと我にかえったときには、こういう音楽を聴くのもよいと思うことだろう。

少しお気楽・コミカルな雰囲気のある楽曲と歌声を聴いていると、「なんとかなるさぁ」と不思議な元気が出てきて、ほっとして、いつのまにかクセになっていること間違いないだろう。

もし、まだご健在だったなら、もっと現代風な要素を入れながら伝統的なスンダの雰囲気を残したチャレンジングな楽曲をどんどんヒットさせたのでは、と思うと残念でならない。


■関連 note 記事

シティ・ヌールハリザの記事の中で、マレーシア歌謡の女王シーラ・マジッドについて少し紹介したうえで、別にこのマガジンに書くつもり、と記していた。忘れていた。次回はシーラ・マジッドについて書く。

そのあと、中国、アメリカ、と渡ったあとに、フランスに戻って最終回、そのあと番外編2として再度日本のミュージシャンを記事にして「世界の歌姫たち」は大団円とする予定だ。順調にいって3月まで続くことになる。

■ 関連 マガジン

1. 好きでよく聴いているミュージシャンを紹介。毎週木曜日に更新中。ギタリスト多め、たまに懐メロ。

2. 愛している女性シンガーに特化したのが、我ながらベタな名前だと思うが「世界の歌姫たち」。こちらはさらに愛している思いのたけのみの記事ばかり、週一、毎週火曜日に新しい記事を書いている。懐メロ多め。

3. いずれも、耳もあまりよくないし、知識も少ない、語彙力もない、なので、基本YouTubeやSpotifyのリンク貼り付けと「好きだー」「愛している」というだけの記事ばかりになっているし、そうなっていく。

「なんだ、超有名どころばかりじゃないか。やっぱり音楽のこと何もわかってないんじゃないの」という批判は甘んじて受ける。

私本人が楽しく書いていることだけは間違いない、それだけは伝わるだろう。

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