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ミレーヌ・ファルメール:Mylene Farmer "L'horloge" 「時計」

世界の歌姫たち」という我ながらベタな名前だなと思うマガジンを作って、愛している女性シンガーばかり、愛している思いのたけを週1、火曜日に投稿している。今日はその12回目、フランスからミレーヌ・ファルメール だ。

辛いとき悲しいときに聴く曲として、自分を元気づけてくれる、あるいは癒してくれる、というミュージシャンを聴きたいときもあれば、とことんまで暗い曲を聴いて力が抜けてしまうまでこの世の不条理と悲しみに浸りたいというときもあるだろう。

とことん落ち込みたいという向きにおススメの歌姫は、ミレーヌ・ファルメール。

1989年だったか、FMの電波に乗って「今、フランスではミレーヌ・ファルメールが流行っている、その独特の世界観の歌詞とローラン・ブトナとのセンスのよい音作り、そして、なんといってもドラマティックで完成度の高いステージが見事だ。」と 1988年のミリオンセラーのアルバム “Ansi Soit Je.. “が紹介されたのが出会いだったと思う。録音してテープが擦り切れるほど聴いた。

このアルバムからは後々ライブで定番で歌われることになるヒット曲が何曲もあり、特に “Ansi Soit Je” というタイトル曲は最高にいい。

2010年のTVでのライブが美しすぎてため息がでる。音域がひろく、切なく伸びる高音域の声が透明で美しい。

ピアノを弾いているのが、彼女の音楽の作曲とアレンジをひきうけるプロデューサー、ローラン・ブトナだ。

男の子になりたかったという自身の子供の頃を歌ったという "Sans Contrefaçon,” や “Pourvu Qu’ells Soient Douces,“ ミステリアスな歌詞の“Sans Logique” エドガー・アラン・ポーをテーマにしたという “Allan,” 「男がウイーンの庭で首つり自殺をした」と歌う “Jardin de Vienne”、など、歌詞は難解だが、どの曲も、死と不条理と悲しみ、そして引き裂かれる生と性、といったテーマが流れているように思う。

1曲目の “L’Horloge,” ロルジュ(時計)はボードレールの詩に曲をつけたものだ。

時計!
不吉で恐ろしくて無感動な神
その指は私達を脅かし「忘れるな!」と言っている

“L'Horloge” Charles Baudelaire

翌年の1989年にリリースされたライブアルバムでは一曲目を飾る。Ainsi Soit Je はトリを飾る。

ビデオクリップも美しい。たとえば、”Appelle Mon Numéro”。

”L'Amour n'est rien...”

今年、3枚組のベスト盤”Histoires de” がリリースされた。通しで聴くと 3時間45分にも及ぶ。オープニングの “libertine”から全部がファンにはおなじみの曲ばかりだ。しかし、このアルバムには、残念ながら”L’horloge”「時計」は収録されていなかった。

2019年にリリースされたライブアルバムでは、上に紹介した1989年ではオープニングだった”L’horloge”「時計」がエンディングになっている。アレンジもさらに洗練されていてドラマティックな展開で私の一番のお気に入りだ。ステージを是非見ていただきたいところだが、残念ながら、official 動画は見当たらない。


不気味に時を刻むイントロ、執拗に繰り返すモチーフ、バックの巨大なスクリーンに映し出される暗い灰色の廃墟と上空の厚く黒い雲、低空飛行でゆっくり流して俯瞰する陰鬱なイメージが浮かび上がる。時を刻むように単調なバックとメロディーに乗せて、赤いマントをまとったミレーヌが歌い上げる。どくろが積みあがった塚のようなイメージがスクリーンに現れ、ステージ全体が焔に包まれ、ミレーヌが祭壇を一歩一歩上がっていく。

時計。時は無慈悲で、自然は残酷だ。理性は人に要請し強制する。しかし、美しさは、儚く切なく、ときに不条理で、自然にも理性にも支配されることはない。


■ 関連 マガジン

1. 好きでよく聴いているミュージシャンを紹介。毎週木曜日に更新中。ギタリスト多め、たまに懐メロ。

2. 愛している女性シンガーに特化したのが、我ながらベタな名前だと思うが「世界の歌姫たち」。こちらはさらに愛している思いのたけのみの記事ばかり、週一、毎週火曜日に新しい記事を書いている。懐メロ多め。

3. いずれも、耳もあまりよくないし、知識も少ない、語彙力もない、なので、基本YouTubeやSpotifyのリンク貼り付けと「好きだー」「愛している」というだけの記事ばかりになっているし、そうなっていく。

私本人が楽しく書いていることだけは間違いない、それだけは伝わるだろう。






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