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R.I.P. ウェイン・ショーター:Wayne Shorter "Nefertiti"

3月3日の午前3時ごろだったと思う。 Facebookのタイムラインに、Wayne Shorterのオフィシャルから衝撃的なpostが流れてきた。

Today at 4am, Wayne Shorter peacefully continued on his immense journey into the unknown. He was surrounded by loving...

Posted by Wayne Shorter on Thursday, March 2, 2023

以来、フォローしているミュージシャンたちからのウェイン・ショーターへのメッセージで埋め尽くされて、翌4日の朝まで何度 "sad", "care" ボタンを押したかわからない。私も呆然として、先週から仕事もちょいと苦しい状況であることも合わせて、心が麻痺したように過ごしている。

テナーサックスで誰が好きかと聞かれるととても困る。他にも巨人といえるジョン・コルトレーン、マイケル・ブレッカー、ブランフォード・マルサリス、最近なら女流のアダ・ロヴァッティやヌビア・ガルシアなど、皆好きでたまらない。しかし、一人だけ言えさもなくば死と拷問されたら、ウェイン・ショーター、と答えるに違いない。

ウェイン・ショーターを最初に聴いたのは大学にはいったばかりのころだと思う、マイルス・クインテットのアルバム、E.S.P.、そして Nefertiti だった。

特に1968年のネフェルティティはずっと愛聴盤だ。 1曲目の Nefertiti, 2曲目の Fall、6曲目の Pinocchio と6曲中 3曲がウェイン・ショーターの作曲だ。ちなみにこのアルバムは 3曲目の Hand Jive がトニー・ウィリアムス、4曲目のMadness 5曲目のRiot がハービー・ハンコックの作曲と、全曲がマイルス以外のバンドメンバーによる作曲だ。

1曲目のタイトルトラック、ネフェルティティは、マイルスとウェインが同じメロディを繰り返し、リズムセクションが自在に即興で演奏していくという珍しい曲だが、じわじわと引き込まれ、何より演奏者の高揚していく興奮状態が伝わって来る名演奏だ。他の曲も粒ぞろいで緊張感と高揚感が溢れる演奏ばかりで全てが楽しめる。

1965年のE.S.P.もいい。1曲目のタイトルトラックの E.S.P. もウェインの作曲だ。何度聴いても聴き惚れる。

こちらも甲乙つけがたくいいアルバムだ。

マイルスとウェイン、ハービー・ハンコックのピアノ、ロン・カーターのベースにトニー・ウィリアムスのドラムス、このカルテットの演奏はどれも硬派でタイト、聴きごたえ十分だ。

マイルス・バンドに加わる前後のブルーノートのリーダーアルバム3作を今日改めて聴いてみた。1964年の "Night Dreamer"、1965年の"JuJu"、そして 1966年の "Speak No Evil" 全てクインテットのフォーマットだが、それぞれメンバーが違う。皆腕利きのスーパースターでどちらかというとスタンダードな演奏で楽しめるが、ウェイン・ショーターの強い個性が一枚一枚花開いていっているように思えるが気のせいだろうか。どれもいいが、中でもSpeak No Evilは一番のお気に入りだ。

トランペットがフレディ・ハバード、ベースがロン・カーターにドラムスがエルヴィン・ジョーンズ。マイルスバンドより少し開放的な感じがするのはドラムスの感じと、そしてやはりトランペットだろうか。

そして、ピアノがハービー・ハンコック。

私はたぶん、ハービーのピアノがすごく好きなのだと思う。暗めのトーンでゴツゴツしたリズムのピアノ、テンションだけをぶつけてくるような固く緊張感あるボイシング、そしてエネルギッシュでときに流麗でリリカルなソロもいい。そしてヘッドハンターズやフューチャー・ショック、サウンドシステムなどのエレクトリックのバンドもどれも最高にいいし、枠にはまらない自由な広がりを感じさせて大好きだ。 

このころのウェイン・ショーターもいいが、魅力は後年になってますます発揮される。ウェザー・リポートでの演奏も悪くないが、やはりリーダー・アルバムがいい。ミルトン・ナシメントとの "Native Dancer"、2000年ごろのカルテットもいい。

それらについて「好きだ」と語るのは次回に続けて書こうと思う。

ウェイン・ショーターは、きっと、宇宙への航海に出たのに違いない。

R.I.P…



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