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66歳の母と初めてのダイビング

突然の親子ふたり沖縄旅が決定

会社のサバティカル休暇制度を使い、4月から3ヶ月会社を休んでいる。

せっかくの長い休みなので、行ったことのない沖縄でひとり、目的のない旅行でもしようかと思っていた。

20年ほど前はひとり気ままにアジア各国をフラフラグルグルするだけのバックパッカーだった私なので「旅行はひとりが良いに決っている」と思い込んでいたわけだが、土曜から日曜にかけて実家に1泊させてもらったところ、母に「一緒に沖縄に行きたい」と言われてしまった。

サバティカル休暇に入る前になんとなく話していた沖縄行きについて、母は覚えていたようだ。

これまで自由に生きてこれたのは両親あってのこと。父が他界した今、母のその申し出を断ることができるだろうか。

3日後の水曜日のフライトチケットを予約する。帰宅は金曜日の夜で、2泊3日の旅行である。

母の沖縄行きは3回目、私は初めての沖縄になる。ふたりで行くのであれば、母親のやりたいことを目的にしたいと考えていた。聞くところによると、どうやらスキューバダイビングがしたいらしい。

高齢者の受け入れは難しい

母の年齢は66歳。高齢者のダイビングを受け入れてくれるダイビングショップはほとんどないが、ダイビングのための正式な診断書(PADI病歴/診断書)があれば受け入れ可能というショップがあった。

念のため電話でも確認し、翌日月曜日にはショップのアドバイス通りに診断書を用意したのだが、その診断書を写真に撮りメールで送付したところ、もう少し追記が欲しいと言われてしまった。下の項目のチェックがあっても所見の欄が不十分というショップの判断だった。

医師による診断
□ ダイビングに不適格であると考えられるような、医学的な障害は見受けられません。

66歳ともなるとパーフェクトな健康体とはいかないので、ショップ側が慎重になるのは仕方のないことだ。

その日の関東には強い風が吹き大雨が降っていた。原付バイクで病院を2往復した母に追記について告げると「んー、あきらめる」と。この雨のなかで3往復目はしたくないとのことだった。まぁそうだよなぁ、せっかく往復したのに残念だな。旅行の目的もなくなってしまった。

沖縄初日

羽田から那覇、那覇から北へ万座毛を経て、ブセナ海中公園へ。ブセナ海中公園は、海面下へ階段で降りて行きアクリルの小窓から沖縄の海の生物を見ることができるところ。ダイビングができないので、せめて小窓からでもと。

小窓を覗いてみえる魚に楽しそうな母。そして「診断書は持ってきた」というダイビングをあきらめきれていない告白をされた私にプレッシャーがかかる。

その後、ブセナ海中公園から北へ移動。海がみえる宿にチェックインし、夕飯までまだ時間があるので車で1時間ほど先にある「美ら海水族館」へ。ヒトデを触ったり、なまこを触ったり、ジンベイザメを眺めたり。

水族館から宿に戻って1日目が終了。シュノーケリングでもいいから受け入れてくれそうなショップをひたすら探すことにした。

宿の前の海で素潜りしてみると

明けて沖縄2日目。夜中に検索し、目星をつけていたショップにひたすら電話をかける。

「3歳から可、60歳以上も可」とあるシュノーケリングも上限は65歳までで、66歳は断られてしまう。シュノーケリングでも厳しい。

そんななか「シュノーケリングであればいいですよ」と快く受け入れてくれるショップがやっと見つかった。持参したPADIの診断書についても話を聞いてくれた。

ひとまずこの旅行の目的ができたことに安堵し、宿の目の前の海を素潜りしてみる。浜辺から50メートルも遠くない海にルリスズメダイがいる衝撃。砂浜で待つ母に「青い魚いっぱいいるよ!」と叫んでしまった。

ちょっとのつもりで入った海に、夢中になって1時間以上も浮かんでいた。これならシュノーケリングでみる海も絶対に素晴らしい。母もよろこぶであろうと確信した。

マリンショップへ

宿をチェックアウトし、66歳のシュノーケリングを快く受け入れてくれた「マリンサービスむるぬーし」へ。PADIの診断書を確認してくれて「ダイビングオッケーのチェックありますし、ダイビングでもいいですよ」と。

紆余曲折あり、66歳母は初のダイビングをすることができた。私も初ダイビング。私は魚をみる時間より母の横顔をみている時間のほうが長かった。

「高齢でも海をみせてあげたいと思ってますよ」と言ってくれたインストラクターのイッシーありがとう。陸にあがった瞬間ホッとしたね。高齢者とのダイビングはほんとにプレッシャーだと思うし、受け入れるショップが少ないというのも当然だなぁと。潜ってわかる大変さ。

むるぬーしのスタッフの皆さんも、よくしてくれてありがとうございました。いい思い出になりました。

親子ふたり旅も悪くないね。「最後の沖縄かもしれないし」なんてお土産をたくさん買い込んでいたけど、また一緒に行けばいいんじゃない?


愛犬のおやつを買います。