わたしにとっての過去に今もいるあなたへ

新卒で入った会社を辞めたのは、今から6年くらい前のこと。

とにかくすべてが嫌になって辞めた会社だったので心の底から辞めてよかったと思っているし、少なくともわたしにとってはあそこは地獄の一種だった。「地獄だった」と笑って言えるくらいには、あの場所はわたしにとって過去になっている。嫌なことをしてきた理不尽な上司は忘却の彼方へ放ったし、ありえない社内規定もあの会社だけの常識だったと自信を持って主張できるくらいには時間も流れた。

でも、ふと思ってしまった。

わたしの同期は今もあの会社で過ごしているんだよな。

6年前、わたしが辞めたあの日の後も、毎日あの橋を渡って倉庫みたいな職場に行って、社有車で営業に行っているんだろう。時にはわたしが心底軽蔑していたおじさんたちに何かを守るために頭を下げているのかもしれない。

わたしにとっては過去だけど、彼らにとっては今も現在進行系の場所。

フリーランスになってからはどうしてあんな窮屈な会社にいることができたのだろうとぼんやりと思うこともあるけれど、わたしの大事な同期は今もあそこにいる。別に彼らに会社を抜け出してほしいとかそういうことは一切思わない。人には向き不向きがある。わたしにあの職場は向かなかっただけだから。

ただ、たまに申し訳なくなる。

勝手に過去にしてごめんなさい。あなたが今もあの場所で必死に戦っていることを忘れて、あのとき話を聞いてくれたあなたを過去にしてごめんなさい。

なんて思ってしまうことが、ごくたまにある。

忘れっぽいあの人は、もう忘れてしまっているかもしれない。わたしと同じようにわたしを記憶の彼方に、過去にしてくれていたらそれでいいんだけど。

だけど、わたしは今もあの会社にいる同期を思い出したあと、いつもほんの少し、ほんのちょっとの切なさを感じてから、再起を誓う。


明日もがんばるよ。
たまに逃げるかもしれないけど、基本がんばるから。


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