エンタメマーケティング15 紅白当落に見る新規顧客開拓の重要性

11月24日、第67回紅白歌合戦の出場歌手が発表された。伍代夏子、藤あや子、紅白常連の演歌歌手が紅白落選した。
その一方で、紅白で歌う曲がだいたい決まっている「石川さゆり」「坂本冬美」が出場する。

紅白の選考で重要視されたとされる3点
「今年の活躍」
「世論の支持」
「番組の企画・演出意図に合致するか」

三番目は放映されるまで解りませんが
1、2番目の今年の活躍は?世論の支持は?
それらをマーケティング的な目線で見ていく。

この二人、実は共通点がある。
演歌を聞かない年代でも二人を知っている人が多いといことだ。
ヒット曲の有無は紅白に出るほどの歌手だ、みんなヒット曲を持っている。

しかし、ここで大きな差として、彼女たち二人の活動がある。
それは
「演歌以外を歌っていること」

坂本冬美の場合は「夜桜お七」自体がそもそもロックナンバーとも言われていますが、それ以外にも彼女は忌野清志郎、細野晴臣とのユニット「HIS」で活動、歌謡曲等のカバーを拳を回しながら歌っている。
石川さゆりの天城越えのロックアレンジは、イチローがマリナーズ時代の入場曲にしていた事や、マーティ・フリードマンによるロックバージョン、さらにはロックフェスの出演、そして椎名林檎が楽曲提供をして話題となった「暗夜の心中立て」などで拳を回したロックな演歌を歌っている

「年寄りの曲」というイメージがついている演歌界において、演歌以外の活動を多くする二人の知名度は多くの年代で他の演歌歌手よりも高い。
演歌という市場だけで活動していると出会えない顧客層に、
ロックを通して接触することでファン層を広げている。

これは音楽以外でも言えることだ。本来は市場にいない、潜在的な顧客と接触する事は大切な市場拡大の一歩だ。

音楽もエンタメも関係ない商品で言えば、足裏の角質を剥がす商品だ。

ベビーフット
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定番商品となり10年近いが、この商品もともと中年男性向けの商品だった。
水虫予防商品として木酢の臭い匂いたっぷりの商品だった。
しかし薬事法や各法律の変更のタイミングで水虫予防とパッケージに書けなくなった。
どうしようかと思っているところ、女子社員が使ってみたいと言ったので
使わせると踵のガサつきがなくなると大喜びしたことが始まりで
現在の女性のフットケア商品として生まれ変わった。

この商品のようにたまたま、ターゲット外の顧客にめぐり合うことはごく稀だ。
しかし、音楽は明確なジャンル、市場分けがされている商品のひとつだ。
そして他ジャンルの市場の顧客への接触も容易なジャンルである。
フェス、対バン、コラボ、多くの方法がある。

演歌界は、CDバブルの前に市場縮小の恐ろしさを感じていた。
おそらく音楽のジャンルの中では一番「新しいファン」を作ることの大切さを理解しているジャンルだろう。
そのため「演歌をもっと知ってもらいたい」と考える演歌歌手は多い。
決して彼女たちはマーケティング的なことを考えてこれら活動を行ったわけではないだろう。
しかし、ひとつのきっかけにはなっている。
そして、それが話題性、世論の支持、今年の活躍に繋がり紅白の当落にも影響が出ているのではないだろうか?

よく「今のファンを大切にしないと」という人がいるが

紅白に出るような大御所演歌歌手ですら
若い人に、色々な人に演歌を聞いてもらえると新しい市場へ進出しているのだ。
新人アーテイストが今のファンをと必死になっていては負けて当然だ。

新規市場に進出するという点では、大御所演歌歌手も新人アーテイストも同じなのだ。
是非、新しい市場に出会うため、潜在顧客に出会うために、多種多様な角度から自分たちを分析して欲しい。

しかし、今回の紅白では坂本冬美は夜桜お七ではなく「女は抱かれて鮎になる」を歌うだろう。ランキングでもよく見かけた曲だ。

なんと上記したHISのアルバム「日本の人」が12月14日再発売する。

是非聞いてみて欲しい。

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