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ターゲットとデザインの話

情緒的な価値を定義する上で感情表現の因数分解が有効になると記しましたが、もう一つ定義しなければならない事があります。記述が前後してしまいましたが「ターゲット」のお話しです。

価値観でターゲティング

現在では、市場調査の手法が多様化したことや低コスト化によりターゲット分析が容易になりました。ところがまだまだ性、年齢、年収などデモグラフィック中心のターゲット情報を元に企画を行うケースに出会います。もちろん製品によってデモグラフィック情報でターゲティングする方が良い場合もありますが、「感情」を読み解く必要がある製品の企画には、デモグラフィック情報だけでは不十分です。例を挙げてみると、「日本の高級車」を購入する人と「ドイツの高級車」を購入する人のデモグラフィック情報はよく似ています。40〜50代後半の男性、会社役員、年収8百万以上、首都圏在住などと差があまり感じられない情報が並びます。しかし実際には、日本の高級車に乗る人とドイツの高級車に乗る人は全くと言っていいほど違います。そしてその違いには「価値観」が大きく影響しています。価値観とは「物事に対する評価基準」で商品選択に大きく作用します。この場合、日本の高級車を選択する基準には、「得意先の社長より高級なクルマに乗ってはいけない」とか「そもそも日本製であることに価値を感じている」などが挙げられます。反対にドイツの高級車の場合、「優越感を感じたい」であったり「世界で最高の選択をしたい」など明らかに異なる価値観が存在します。

価値観分析

前職で、デザインと平行してマーケティング業務を行う経験がありましたと自己紹介しましたが、その際に「日本人の価値観を分析しクラスタリングする」という調査分析業務に参加し、独立後も引き続きこの価値観調査分析に携わる事が出来ました。その結果、私はかれこれ20年以上価値観分析を元にしたターゲティングを行う機会に恵まれたことになります。折角なので、そこで得られた価値観に絡んだお話しを紹介してみましょう。

8つの価値観

この価値観の調査分析によるクラスタリングによって、日本人は大別すると8つのクラスターに分けることが出来ました。それぞれ
 01:自己向上による達成感と先進的生活を望む人たち
 02:流行に敏感で浪費型、周囲から羨望されたい人たち
 03:社会的なステータスを重んじ政治関心が高い人たち
 04:周りに自分の感性や個性を認めてもらいたいやや未成熟な人たち
 05:家族を大切にし賢い消費をしたいと思う人たち(いわゆるマス)
 06:保守的で変化を嫌い道徳心を重んじる人たち
 07:生活の向上を望むが一時の感情に流され浪費が絶えない人たち
 08:物事に達観し自分の世界に閉じこもりがちな人たち
となります。
これらの分類はそもそも価値観によるものであるため、分類された人たちが行う物事の選択の基準が浮き彫りになります。同時にデザインに対する関与度合いについても明確な差が現れます。洗練されたデザインを好む人たちや、デザインにエクストラコストをかけたくない人たち、全く関心が無い人たち等々。それらを理解するだけでも企画の早い段階で価値構造の検討やデザインの方向性を最適化できます。

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