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デザインと因数分解

人の価値観とデザインの話(価値観とデザイン)から製品価値の話に戻しましょう。「エッセンス・ベネフィット・スペック」のうち情緒的な価値を形作るための「感情を表す表現」はかなりざっくりしていると綴りましたが、その感情表現を食リポの様に因数分解(因果関係を紐解く)することでこのざっくりした感情表現を正しく定義、共有する事が出来ます。

この様な因数分解を製品価値の構造の中身 全てに反映することはコトバレベルでデザインの役割を規定することに繋がります。先の「80点と20点」(デザインコンセプトの怪)と表したデザインで伝えるべき項目と捉えていただいてもいいでしょう。製品価値の構造が決まったら、伝えるべき事柄を「何」で表現するかということを整理します。

ワイルドなクルマ

4輪駆動のクルマを例に挙げて初級編の説明をしてみましょう。ランクルとかジープラングラーなどを思い浮かべてください。この類いのクルマのエッセンス(ひとことで言うと何)を、「道なき道を切り開くワイルドな相棒(クルマ)」としておきましょう。パッと見てこの様な印象を与えるためには、「大きく太いタイヤ」・「腰高のバランス」・「頼れる雰囲気」・「威張れる存在感」などが必要になります。これらが先のエッセンスを構成する要素となるわけです。

そしてこの要素を更に因数分解することで、デザインで伝えるべき要素(ここでは主に視覚的に伝えるべき要素とします)が明確になります。
先の「威張れる存在感」について因数分解を行いそしてその結果を何で表現するかを仮説してみましょう。

「威張れる存在感」

「威張れる存在感」
「押し出しの強さ」+「悪路に打ち勝つ力強さ」+「風格のある佇まい」
と分解できそうです。

先ず、「押し出しの強さ」はワイルドな性格を伝える上で重要な要素です。その大役を果たすには、クルマの顔であるフロントグリル周辺がふさわしいでしょう。
次に「悪路に打ち勝つ力強さ」張り出したフェンダー
更に「風格のある佇まい」ボディ側面のプレスライン で...
などと因果関係を設定します。

この様な因数分解を残りの製品価値の構造「ベネフィット」と「スペック」に反映してゆきます。このやり方が難しかったら、「デザインしなければならない要素(意匠部品)」を先に洗い出し、その要素で表現しなければならない(又はしやすい)価値を紐付けても良いでしょう。そうすると、表現すべき価値が様々な要素と関係してくることが分かります。価値と形が相関してくるわけですね。

実は、以前の投稿で私が例で挙げたダイソンの掃除機アップルのノートPCは、価値と形の相関性が高いために、形を見るだけで何を伝えようとしているかが容易に読み取れるんです。もちろんデザインへの関与度合いによって読み取ることができる情報量は異なるでしょうが、一般の生活者が理解できるレベルであっても十分読み取ることが出来るからこそ共感を呼ぶ(売れる)わけですね。

製品で伝えるべき価値を因数分解し、デザインに繋げてゆくという事が少し身近に感じていただけたでしょうか?クルマの例示だったのでクルマに興味が無い方には??だったかもしれませんが、これはクルマに限ったことではなく、デザインを必要とする対象全てにあてはめることが出来る考え方であり、UX(顧客体験)の計画や、電子媒体(ランディングページなどのウェブサイト)の構築などの様々な表現や事象に適応できます。

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