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『アイドル・スタディーズ 研究のための視点、問い、方法』(明石書店)に寄稿しました

 田島悠来編『アイドル・スタディーズ――研究のための視点、問い、方法』(明石書店)に寄稿しました。

❝これまでの研究動向を整理しつつ、最新の研究事例や実践を紹介することで、アカデミックな領域でアイドル研究を行うことの意義と可能性を示す。アイドル研究/ファン研究に関心をもつ人すべてに、文化現象から社会を問いなおすための視点と問いの立て方、方法を提供。❞

明石書店公式HP内容紹介より

 香月の担当パートは、第4章「異性愛規範と「恋愛禁止」はいかに問い直されるか」とコラム3「アイドルに投影されるもの」の二つです。

 第4章「異性愛規範と「恋愛禁止」はいかに問い直されるか」では、アイドルにかかわる作り手やメディア、そして実践者であるアイドル自身の語りを手がかりに、ジャンル内で慣習化している事象や価値観がいかに維持されてきたのか、そのさまを概観しつつ、それら半ば当たり前とされてきた価値観を問い直す契機を今日、どのように見出すことができるのか考えていきます。

 具体的には、他の芸能ジャンルに関する先行研究にもふれながら、エンターテインメントの受け手が、自身のジェンダーに基づいて特定の属性をあてがわれたり評価づけされたりするような事象の観察からスタートします。関連して、特にアイドルというジャンルの内にみられる、異性愛を所与とする(それ以外のあり方を周縁化する)ような言説、またこれと結びつきながら慣習化された、いわゆる「恋愛禁止」と呼ばれる風潮がいかなる性質をもって保たれているのかを捉え、ではそのことがはらむ抑圧に対して、どのような問い直しが今日生まれつつあるのかをみていくことになります。

 この章の中では、他の芸能ジャンルの実践者とアイドル自身とが語り合う一節も引用していますが、それら各芸能ジャンルをとりまく環境が少し前の時代とどのような点で変化し、またどのような点で変化していないのかを考えてみるのも、現在地を測るうえで重要ではないかなと思います。

 コラム3「アイドルに投影されるもの」は各章のあいだに挟まるコラムなのでやや短めではありますが、第4章とも一部関連しつつ、アイドルの職能、主体/客体の捉えがたさ、受け手が演者に投影しようとするイメージ等に関して考える際の手がかりになっていればいいなと思います。問題意識としては今年7月に刊行した共編著『アイドルについて葛藤しながら考えてみた――ジェンダー/パーソナリティ/〈推し〉』(青弓社)とも通底しています。

『アイドル・スタディーズ』ではテーマ設定や問題関心、対象、方法などさまざまな論考が各章、各コラムに収録されています。それぞれの執筆者のアプローチにふれるなかで、読み手の方々自身の思考を整理したり、議論の枠組みを見つけたりしていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

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