金密輸増が映すマイナス金利のひずみ

金の密輸入が急増しています。密輸であげた利益は反社会勢力の新たな資金源ともなっており、税関当局は監視を強化しているようです。しかし、取り締まりの強化だけでは解決できないかもしれません。今の財政・金融政策の方針が背景にあるからです。

密輸入が増えた原因は(1)消費税率の引き上げ(2)金価格の上昇--の2つとみられています。記事にあるように、日本国内の貴金属販売店では、金の投資用地金や金貨は消費税込みの価格で取引されるので、消費税を払わないで金を密輸入して国内で売却すれば、消費税分がもうけになります。2014年に消費税率が5%から8%に引き上げられ、密輸の「うまみ」が増した格好です。

今後、消費税率がさらに引き上げられたり、金価格が高騰したりするようだと、密輸はさらに増える可能性があります。どちらもその可能性は小さくありません。政府は消費税率引き上げを2019年10月に実施する方針に変わりはないとしています。金価格上昇を支える世界的な金融緩和は、米国が利上げに転じてはいるものの、地政学リスクもあり、先行きは不透明です。

密輸が増えるのは、国内で金の需要が高まっているからでもあります。銀行に預けていても手数料を差し引けば実質マイナス金利なら、金購入に回してみようと考える人が増えるのは無理もないことです。本人確認の基準などをさらに厳しくすれば、購入者の利便を損ないかねません。金密輸の増加は、出口の見えない金融緩和のひずみを映しているように見えます。

http://www.nikkei.com/article/DGXKZO18391770T00C17A7PE8000/

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