見出し画像

寒くても素敵な街なら住めるかと思ったけどやっぱ無理

2018.12.31 ベトナム・ダナンで山登りし野点
2019.12.31 インド・アジャンタの遺跡で野点
2020.12.31 東京でひきこもり
2021.12.31 長野・松本で雪見野点 ←new!

大晦日の朝は雪見野点

長野は関西からだと物理的距離以上に遠く、未知な存在。「おやき」も知らなかったし、美味しいそばに出会ったこともなかった。長野出身の後輩からそんじょそこらにいる「道祖神」の話を聞いた時はなんじゃそりゃと首を傾げた。善光寺は聞いたこともなかった。アルプスの山々が富士山級の標高であることも、水がきれいでわさびの産地であることも、鯉を食べることも、味噌も、知らなかった。
関西からは鉄道も通じてないし、山に隔たれた異文化圏。

過去に長野駅、松本駅、信濃大町駅エリアを訪れたが、長野で体験することは私にとって全て目新しく、心を奪われた。

そばが美味しくてビックリした。何にでもわさびががっつり入っていて目が覚める。おやきはおにぎりより軽くお惣菜がいっぱい入っていて食べやすい。善光寺は奈良の東大寺的なポジション。そんじょそこらにいる道祖神が可愛い。味噌が多いのは塩分過多を心配するが、長野は全国一の長寿県。今回の旅で初鯉も体験した。

スナックの前にも道祖神


特に松本は前に訪れた時に気に入って、何度でも行きたいなと思ってた。歴史と文化を感じさせる城下町、民芸運動が盛んでふと目に入るもののデザインが素敵。開智学校もある。草間彌生に代表されるアートと小澤征爾に代表される音楽の街でもある。そして何より、開運堂がある。お菓子フリークの私には「白鳥の湖」がたまらなくツボで、今回も御多分に洩れずスーツケースに納めた。

お菓子フリーク証拠写真

今回泊まった 松本十帖 という旅館も素晴らしくよかった。松本駅からバスで30分くらいの浅間温泉エリアにあり、全室露天風呂付、1万2千冊の蔵書、おこもりスペース多数、湯小屋、コーヒーや長野県産果物ジュース、お菓子、アイスが食べ放題、レストランだけでなく、おやき屋さん、パン屋さん、カフェを併設etc
地域活性化・周遊促進、環境配慮、障害者支援のフィロソフィーに基づき旅館が構成されており、旅館のコンセプト「本と出会う」が強く伝わってくる。

松本本箱


部屋のベランダに温泉掛け流しの露天風呂

何度入ったかカウント不能なほどお風呂に入り、露天風呂の中で雪見酒ならぬ雪見ジュースをしたり、普段読まない本に出会い、積読を解消し、おこもりスペースに身を預け、よく寝て、とっても良い滞在だった。
やっぱり松本好きやなー。また来たいなー。

そう思ってた。最後のあの時までは。

昨日の晩からしんしんと雪が降り、今朝は起きたら5-10cmほど積もっていた。本格的な雪がおそらく4年振りでわーきゃーはしゃいだ。ベランダで雪見野点もしてみた。抹茶で身体がシャキッとする。
最後まで旅館を満喫し、チェックアウト。バスで揺られること30分。

折角なので雪の松本城を見たい、と仰せつかり、一瞬
「私だけ先松本駅行って待ってよかな」
と思ったけど、それも薄情だなと思い直し、松本城のバス停で降りる。地面に落ちても融けない雪。ダウンの襟から吹き抜ける寒風。早足で天守閣近くへ向かう。ダウン、手袋、耳当て、マフラー、マスクもあって完全防備。

雪かぶりの松本城

天守閣は見た。白鳥も見た。なぜか白鳥が水面を走り出して、見てる人一同で爆笑した。飛べよ。

天守閣を見たら満足したので駅に向かう。もう何度も通ったので道を覚えた。松本城から駅までは徒歩15分。たった15分。雪が降っててもさすがに15分くらいは歩けるわ。

黙々と歩く。風が隙間から入ってこないように俯きながら一心不乱に足を進める。
スカートを選択したのはミスだった。厚い生地で裏地も付いておりかなり丈が長く、下に80デニールのタイツを履いてるとはいえ、足元から風が忍び込んだ。ランバンのショートブーツは徐々に地面と同じ温度に冷えてきた。
風は強まりダウンに雪が積もる。軽く乾いた雪の粒が縦に横にと舞い、吹き付ける。
裏起毛のぬくい手袋の指先から少しずつ感覚がなくなる。あぁ、寒い……。

寒い。寒いという感覚が私の中の黒い感情の蓋を開ける。
話しながらゆっくり歩いてる人がいると「さっさと歩けや
道端で子どもがぐずると「うっさい、黙って
コートの前を開け放しノーマフラーノー耳当てノー手袋で余裕かましながら歩いてる地元民らしき家族を見ると「見てる方が寒いわ!
 
松本駅に掲げられた温度計は

只今の気温 0℃

そりゃあ雪が融けへんねんから0℃やろな!

たった15分。僅か15分の耐寒歩行が私には耐えられませんでした。
普段はゆっくり歩いてる人がいたら無理に追い抜くことはしないし、子どもがぐずってても可愛いなぁ、地元民家族はほほえましいなぁと見てられるのに、寒さがそれを許さなかった。

それにしても、暖かい松本駅に逃げ込んでから、何であんな黒い感情が湧き上がってきたのか。不思議で仕方がない……。普段影を潜めている大阪の南の方の狭量な汚い心が寒さスイッチで先頭に踊り出てしまった。暖かい場所に来たら落ち着くのに。

元自衛隊の人が、

寝れない、食べられない、寒い、終わりが見えない の状況が揃うと誰でもイライラし喧嘩が始まる

と言っていた。
十分寝て、満腹で、終わりまであと15分と見えていても無理だった。
やはり私が寒い土地に住むのは無理なようです(よく京都住んでたなと思う)。

松本に比べると寒さがだいぶマシな東京に帰ってきたのでブラック毬乃は深層心理へ帰って行きました😊すっかり通常運転のホワイト毬乃です😊黒い感情を来年に持ち越さず一旦成仏できて安心です。

お正月も寒いようですが、皆様寒さには気をつけて、決して無理をせずお過ごしください。

《終わり》

この記事が参加している募集

泊まってよかった宿

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?