見出し画像

カービィボウルRTAの教科書

 こんにちは。カービィボウルというスーパーファミコンソフトのRTAをやっている者です。この競技の方法論についてできるだけ網羅的に説明しようというのがこの記事のねらいです。
 カービィボウルRTAを走ってみようという方の参考に、また見る専の方にも鑑賞のポイントが伝えられたらと思います。
 (ゲーム内部の理論的な部分はそれほど詳しくないので、おかしなことを言っていたりしたら、教えていただけるとありがたいです。連絡・質問はTwitterにでもください→@chochiku3

更新履歴
2022.3.27 公開
2022.4.26 がんばれボタンの挙動について追記(情報提供ありがとうございます)
2022.5.6 いくつかの説明動画へのリンクを追加
2024.2.28 いくつか追記(I-2.の角度調整、I-4.の水切りとがんばれボタン、II-3.のカップイン後の入力関連)


第I部 基本編

 前半では、カービィボウルの基本的なルールや操作法を説明していきます。ネットを探せばいくらでも同じような説明は見つかりますし、ゲーム内にもとても分かりやすいDEMO PLAYモードが用意されているので、そちらをあたってもらえれば十分なのですが、RTAをやる上で重要な点を拾いつつ、自分なりにまとめてみます。読者の方はご自身の理解レベルに応じて適宜飛ばし読みしてくださいね。

1.基本ルール

 カービィボウルは、ゴルフとビリヤードを組み合わせたようなルールのゲームです。各マップ(ゴルフのように「ホール」と呼びます)上には複数の敵が配置されており、カービィを操作してこれらの敵を倒していきます。(カービィが敵に触れると、倒したことになります。)ホール上の敵が残り1体になったとき、その敵がカップ(穴)に変身し、そのあとはゴルフのようにカップにカービィを入れると、そのホールはクリアとなります。
 ステージ構成としては、8つのホールで1つの「コース」を成しており、そのコースが全部で8つあります。コース1~コース8をクリアしたあと、ラスボスのメカデデデを倒すとエンディングです。また、このゲームにはNormalモードとExtraモードがあり、後者の各ホールは前者の対応するホールと同じ地形なのですが、敵の配置などが異なっていて難易度が上がっています。まとめると、NormalモードもExtraモードもそれぞれ8×8の64ホールから成り立っています。
 カービィボウルが一般のアクションゲームと異なるのが、ゴルフゲームのように「ショット」という形でしかカービィを操作できない点です。方向や強さなど、動きの初期値を決めてショットを打ち出した後は、基本的に地形や物理法則に従ってカービィが転がっていくのを眺めるだけになります。(後述のように調整できる要素もあります。 → 4.「ショット後の操作」)ミスをした場合でも、カービィが静止するまでは次の動作を行えないため、少しの操作の狂いが数秒~数十秒単位の大きなタイムロスにつながるのが、カービィボウルRTAの特徴と言えます。

2.ショットの要素

2.1.ゴロとフライ
 カービィを打ち出すショットには、大きく分けて「ゴロ」と「フライ」があります。フライを打ち出す角度は常に一定(地面に対し60°だとか)で調整はできません。

2.2.方向
 カービィは平面上のどの方向にでも、文字通り360°打ち出すことができます。と言うのも、方向を決める際に左右キーを1回押すとちょうど角度が1°変わります。(360回押せば元の方向に戻ります)
 また、LボタンRボタンを押すと一気に次の基本8方位(上下左右またはその間の斜め45°ちょうどの方向)を向くことができます。すでに基本8方位のどれかを向いた状態でLRを押すと、45°方向転換できることになります。RTAにおいては、例えば左キーを6回入れてショットを打つ、というふうに固定化した操作を行いますが、急ぎすぎて何回押したか分からなくなった場合に、LRキーで基本の方位にリセットしてやり直す、といった使い方もできます。
 左右キーのどちらかを押しっぱなしにした場合、角度が1度変わったあと、少し間をおいて、3度ずつ次々に向きが変わります。言い方を変えると、押しっぱなしにしたときの角度変化は「1+3n度」となります。例えば右に18度の方向で固定化したい場合、右押しっぱなしで16度進んだ後に右2回で18度を作る、もしくは行き過ぎてしまって19度になったら左1回で18度を作る、といったことができます。(3度の違いは目で見れば大体分かります)
 
2.3.パワー
 ショットを打ち出すパワーは、上下に動くパワーゲージを止めて決定します。ゲージは白い補助目盛りで4分割されており、止める際の目安になります。

パワーゲージ

 パワーの強さは0~63の64段階に分かれており、ゲージがピンク色になる一瞬で止めた場合にパワー63で最大の強さとなります。

パワー63

 ゲージが上まで届いているが黄色のままの場合はパワー62です。

パワー62

 次にゲージが下の図のように止められた場合ですが、このときパワーは61になっているときと60になっているときがあり、見た目では区別がつきません。ゲージをよく見ると、ドット32行で描画されているため、パワー2~61の間は全て2段階ごとに同じゲージの長さで表されることになります。(0と1も見分けはつきます。)

パワー61か60

 ◎余談◎
 パワーゲージが上下するときの効果音は、(文字では表しづらいですが)
 ↗↗↗↗→↘↘
 という風に7音に分割されています。これに対してゲージの見た目は行きと帰り合わせて8区画となっており、音と見た目が微妙にズレています。このことにより、音を聞いて合わせてもフルパワーなどのちょうどいいタイミングで止められないようになっていて、難易度が絶妙だなと思っています。 

2.4.スピン(カーブ)
 打ち出したカービィに回転をかけ、様々な軌道のショットを打つことができます。
 ゴロの場合、かける回転の強さを左右それぞれ6段階で調節できます。この回転のことも公式では「スピン」と呼んでいるのですが、フライの場合の「スピン」と区別したいため、個人的には「カーブ」と呼びたいと思っています。
 フライの場合、左スピン右スピンのそれぞれ6段階に加えて、トップスピンとバックスピンもそれぞれ6段階かけることができます。左右13段階と前後13段階をかけあわせると(スピンなしも含めて)169通りのスピンがかけられることになります。
 スピンの強さについて補足しておくと、バックスピン6で打った場合、パワーにもよりますが、何もしなければ大体もとの場所で止まることができます。またバックスピン3~4は、最初にバウンドする場所付近に止めたいときに便利です。

2.5.ショットまとめ
 本章で述べた各要素の組み合わせにより、打ち出したカービィの動きは、膨大ではありますが有限個のパターンに定まり、そこにランダム要素は入りません。(ランダムではないが、わずかな差が大きな違いに膨らむことがあり、力学の用語でいうカオス的なところがあります。)
 ゴロ:360(方向)×64(強さ)×15(カーブ)
 フライ:360(方向)×64(強さ)×169(スピン)
 RTAにおいては全てのショットの入力パラメータを事前に覚えて、決まった通りに実行していくことになりますが、パワー調整だけは1フレーム(単位時間=60分の1秒)ごとに段階的に変化するため必ずしも完璧に制御できるわけではありません。そのため、「50パーセントより少し上」というようにある程度の幅を持って覚えておき、ショットを打ってから理想とのズレを認知して微調整していくこととなります。

3.ガイド

 「ガイド」とは、ショットの方向等を決める際に表示される、カービィの軌道を表した目印です。(この記事のヘッダー画像をご参照ください。)
 RTAにおいてはどういうショットを打つかは決まっていますので、ほぼガイドは見ずに進行します。(方向を決める際に、左右キーの入力回数を固定するのではなく、ガイドの見た目を見て調節することはあります。→II.3.2.「ショット決定の入力を速く」)
 ここでは、いくつか重要な仕様がありますので説明しておきます。

3.1.ガイドの軌道と実際のショットの関係
 ガイドは、フルパワーすなわちパワー63(→ 2.3.「パワー」)で打った場合の軌道を表します。ゴロの場合は単純な直線なので意識する必要はありませんが、フライやスピン・カーブ、坂の傾斜が絡むショットでは、パワーが少しでも弱いとガイドの軌道からズレるので注意が必要です。トランポリンやバンカーなど、「ヤクモノ」と呼ばれる特殊な地形の影響も、ガイドの軌道には反映されていません。
 また、ガイドは途中までの軌道であり、止まる位置とは関係がありません。ゴロの状態で下キーを押すとガイドが長くなって遠くまで見渡せますが、実際のショットの強さには全く影響しないため、RTAではほぼ使用しません。

3.2.ガイドの初期方向
 プレイヤーが操作する前、デフォルトでカービィがどの方向を向くかは、最も近くにいる敵(またはカップ)の位置によって決まります。ただし、完全にそちらの方を向くのではなく、最も角度が近い基本8方位が選ばれます。同じ距離に複数の敵がいる場合は、画面向かって左下の方向が最も優先され、そこから反時計回りに優先度が低くなっていきます。
 ホールの初めはカービィと敵の位置が決まっているので、ひとつひとつのホールについて初期の方向を覚えれば済む話ですが、途中で予定外の位置に止まってしまった場合などに、次に向く方向を早めに予測しておくことは、RTAにおいてはとても大事になってきます。
 この話は実際の画面を見た方が分かりやすいので、解説動画を作りました。よければご覧ください。

4.ショット後の操作

 カービィボウルではショットを打った後もカービィの動きに変化を与えることができ、その咄嗟の判断とテクニックがゲームの醍醐味となっています。ショット後に操作できる要素としては「がんばれボタン」と「コピー能力」の2種類があります。

4.1.がんばれボタン
 カービィが動いている最中にAボタンを押すことで、カービィが少しだけがんばり、距離を伸ばすことができます。
 ゴロの場合は減速の度合いをゆるめるというイメージで、打ち出しはじめの方にAを押した方が影響が強くかかり、止まりかけのときに押しても距離はあまり変わりません。
 フライの場合、バウンドの瞬間にAを押すことで結構な飛距離の差が生まれます。「バウンドの瞬間」とは言ったものの、有効フレームはかなり広めで、地上の敵を空中から倒す際、敵に触れる前にAボタンを押しても割と有効になります。敵(コピー能力を持っている場合)を倒すのと同時にAを押すと押した判定にならないこともあるので、少し早めに押すのもテクニックです。ちなみに、フライの滞空中はAを押しても全く影響がありません。(よく、祈るような気持ちで押していることがありますが、本当に意味がありません。)
 また、緑色のバンパーに当たる瞬間にAを押すと、特に勢いよくはね返ります。これを「バンパー加速」と呼び、ぶつかる前よりも一時的に速度が上がります。平行なバンパーの間でバンパー加速を続ければ、理論上は永久にカービィを止めないでおくこともできます。
 ちなみに、トップスピンで水面を水切りするときに頑張れボタンを押しても基本的に軌道は変わりません。トップスピン6だと2回、トップスピン4~5だと1回、必ず水切りができ、その後のバウンドで水に沈みますが、ここでAボタンをタイミングよく押すと水切りが継続します(がこの動きはRTAではほぼ使いません)。
 坂道での挙動も面白く、上り坂にさしかかるタイミングでAを押すと、がんばりの効果が強く現れます。また、下り坂でAを押すと逆に減速する(加速が弱まる)ことが分かっています。

4.2.コピー能力
 特定の敵を倒すことで、コピー能力を得ることができ、それをショットの途中で発動させられます。コピー能力を持っている敵はうっすらと発光(?)しており、倒すときの音が通常の敵と異なります。また、コピー能力が使える状態のカービィも、輪郭が発光(?)するようになります。
 取得したコピー能力は次のホールに持ちこせますが、コースクリアするとリセットされます。
 コピー能力は全部で10種あり、それぞれの挙動については語ることが山ほどあるのですが、全部説明していると大変なので、ここでは基本的な効果と、案外知られていないかもしれない性質に軽く触れるにとどめておきます。

・ストーン
 ゴロで使うとその場で止まります。フライで使うと地面に垂直に落ちます。坂で使うとずり落ちるのに長時間かかってしまうので注意です。

・パラソル
 ゴロで使うとブレーキがかかり、少し進んで止まります。フライで使うとゆっくりと下降しながら、左右キーで方向を調節できます。

・バーニング
 進行方向に強く打ち出されます(上下方向の速度はリセットされます)

・ニードル
 ゴロで使うとその場で止まります。フライで使うと、使わないときと比べて少し減速した軌道を描き、地面に着いたところで止まります。坂でも止まることができます。

・トルネード
 進行方向に一定の強さで押し出され、左右キーで方向を調節できるようになります。トルネード状態では通常時より減速が緩やかです。フライ状態で使ったときは上下の方向も保存されるため、上向きに動いている場合はフワッとした動きに、下向きに動いている場合は地面に打ちつけられるような動きになります。空中では左右キーは効かず、地面についたときはバウンドしません。

・ホイール
 障害物にぶつかるか、コースの外に落ちるまで、同じ方向に一定の速度で走り続けます。

・スパーク
 障害物であるクラッコとウィスパーウッズを倒して進むことができます。一度発動すると静止するまでがんばれボタンを押せなくなるのも意外と大きなポイントです。

・ハイジャンプ
 高くジャンプします。

・フリーズ
 水を氷にして表面を滑ることができます。普通の地面で使っても、通常時よりよく滑り、距離が伸びます。(がんばれボタンは押せません)フライ状態で使うと、フライの軌道には影響を与えませんが、地面でバウンドしなくなります。

・UFO
 発動時の速度を維持したまま、一定時間の間進み続けることができます。また、90°の方向転換を何度も行えます。

第Ⅱ部 RTA編

 後半では、カービィボウルRTAについての諸々を解説していきます。(RTAとは、言うまでもなく、いかに早くゲームクリアできるかを目指す遊び方のことです。)引き続き、観るだけの人も自分でやってみようという人も、自身の理解度に合わせて拾い読みしていただければ幸いです。

1.カテゴリ

 カービィボウルRTAのカテゴリは、クリアするコースによって「Normal Courses」「Extra Courses」「Normal + Extra」の3つに大きく分かれます。(speedrun.com上での表記。複数形にするかどうかはあまり定まっていないように思います。)また、このゲームには2P対戦用のコース(8ホール×4コース、こちらもNormalとExtraがある)もあり、そちらのRTAも存在します。
 通常プレイのほか、プレイする際に縛りを設けるカテゴリがあり、Gold Medals(各コース規定打数以内(金メダル)でクリアする)、3 Keys(A, B, 上キーのみしか使えない)、Blindfolded(目隠し)などが存在します。
 目隠しは、私が(おそらく世界で初めて?)記録を出してみたのですが、Extraコースを通した人はまだいないと思うので、どなたか挑戦してみてはいかがでしょうか。→動画
 他にも、別のボタンで縛ってみるなど、まだまだ未知の楽しい遊び方が提唱される可能性があります。既存のカテゴリも、まだ走者は全然多くないので、これから始めてもやり甲斐のあるRTAだと思っています。
 ちなみにこの記事は基本的に縛りなしのプレイを頭において書いていますが、他のカテゴリにも応用が利くことを企図しています。これから伸び代があるのはむしろ縛りありのカテゴリや2Pモードだと思います。

 なお、タイマースタートのタイミングはNAME ENTRYで"OK"を押した瞬間(Extra Coursesではファイルを選択した瞬間)、タイマーストップのタイミングはメカデデデに最後の一撃を当てた瞬間、というのが一般的です。
 (これはおそらく海外発祥の基準で、speedrun.comの基本カテゴリではこのルールになっていますが、ニコニコ動画を中心とする日本で昔から行われていたRTAではエンディングの"END"が出た瞬間にタイマーストップとするのが一般的であったようです。現在、3 Keysおよび目隠しを走る走者はそれを踏襲しています。)

2.チャート構築の考え方

 先にお断りしておくと、この記事では「ルート」と「チャート」という用語は厳密な区別なく使用しています。
 また、この記事では、敢えて具体的なチャートの説明はしません。「ここをこうした方が速くなるかも?」という改善のためのヒントとなるような考え方を以下では説明しています。まずはとにかく自分のやり方で通してみて、そこから試行錯誤して、他の人の動画も参考にしつつ、とやっていったほうが楽しいし、身につくのも早いし、何より誰も考えつかなかった新ルートがそこで発明されるかも知れないからです。

2.1.ホールインワンは遅い
 そもそもカービィボウルというゲームが、ゴルフを題材としているだけあって、いかに少ない打数でクリアするかというところに主眼を置いてデザインされています。カービィボウル学会と呼ばれる研究活動も、主には打数削減を目標として発展してきました。
 しかしながら、タイム削減を目標とした場合、打数が少ないことが必ずしも善では無くなります。代表的な事実として「ホールインワンをすると遅くなる」ということが知られています。ホールインワンをすると花火が上がる演出が入るため、これを見るぐらいなら余計な1打を打った方が2秒ほど時間の短縮になります。
 では2打に分ければ何でも良いかというとそうではなく、最初に弱いパワーでちょっとだけ打って2打目で普通にショットを打つのが最も効率が良くなります。逆に1打目でカップの近くに止め、2打目を弱いショットとした場合、カップインからクリア判定までに謎の時間が1秒ほど挟まってしまいます。ホールインワンするよりは早いですが、短縮幅は減ることとなります。
 (この現象には、カメラ移動の処理が関わっている気がするのですが、私はよく分かっていません。とりあえずカップイン時のこの遅延現象を「カメラ待ち」と名付けてみます。)

2.2.コースクリア時のリセット
 これはチャート構築以前の、RTAの基本テクニックですが、各コースの最終ホールでは、カップイン直後にL+R+Start+Selectの同時押しでソフトリセットをして次のコースに向かいます。(3 Keysではこれらのボタンを押せないため、この方法は禁止となっています。)これにより、コース終了後の結果発表とカービィダンスの時間を丸々カットできます。
 また、これによりホールインワン時の花火の演出も見なくて済むので、各コースのホール8だけは1打でクリアしてよいということになります。(3 Keysではやはり2打の方が早いです。)
 コースクリアの判定が出るタイミングですが、カービィの姿がカップに入って見えなくなった瞬間と思って良いようです。個人的には、カップインの音が鳴り始めたらOKと考えています。ただしここで気を付けたいのが、短い距離でカップインをした場合です。前述の「カメラ待ち」が発生している間はクリア判定が出ていませんので、カメラが動くまでリセットを待つ必要があります。(カップのふちが虹色に光り出していれば絶対に安全です)

2.3.フライ・ハイジャンプは遅い
 フライのショットはゴロに比べてxy方向の速度(高さを無視した速度)が非常にゆっくりとしています。ショットの途中で発動するハイジャンプも同様です。最適なチャートを考えるにあたり、フライ・ハイジャンプを使わずに済むならば使わない方がよいということが一般的に言えます。例えば坂の上の敵を倒すために、ゴロで登りきれるならばゴロの方がよいということになります。
 逆にフライ・ハイジャンプを使わざるを得ないのは、坂を上ったり超えたりするだけの勢いがつけられないとき、床にあるバンカーや傾斜芝を避けたいとき、上空に敵がいるとき、等です。
 参考動画:Extra7-1 ハイジャンプ使わないルート

2.4.カメラ移動は遅い
 カービィボウルの世界のカメラ(視点)は基本的にカービィを追いかけるように移動しています。ただし常にカービィが画面中央にいるわけではなく、速く移動しているときには進行方向にズレるようになっており、内部で複雑に計算されているようです。(例によって私はよく分かっていません)
 RTAでカメラ移動が特に問題になるのは、カップが出現するタイミングです。各ホールで最後から2体目の敵を倒した瞬間、①カービィほか全てのオブジェクトの動きが止まり、②最後の敵のところまでカメラが移動し、③敵がカップに変わるモーションが流れ、④①の視点までカメラが戻る、という一連の動きが発生します。しかし、①の瞬間に最後の敵が画面の枠内に収まっている場合(厳密には、収まっていても外れの方だとダメだったりします)、②および④のカメラ移動が発生せず、時間短縮になります。もちろん、カップが遠ければ遠いほどカメラ移動に時間がかかるのですが、少しでも移動が発生するか、全く移動しないかで、意外とタイムが変わってきます。
 このため、敵を倒す順番や、カービィの軌道を調整することで、カップ出現時のカメラ移動を無くし、時間を短縮することができます
  参考動画:Normal 2-6 カメラ移動の省略

2.5.コンベアは遅い
 ベルトコンベアに乗って移動するとかなりの時間がかかってしまいますので、できれば避けたいです。コンベアと同じ方向に進みながらコンベアに乗る瞬間にがんばれボタンを押すと前方に強く押し出される仕様があるので、うまく活用しましょう(Normal3-2が代表例です。)
 Extra5-8はいかにコンベアに乗らないかが大事なホールです。参考動画での説明をご覧ください。

2.6.コピー能力をうまく持ち越す
 複雑なショットを決めるために様々なコピー能力を活用すべきことは言うまでもありませんが、敵を倒す順番を工夫することで、次のホールに持ち越す能力が選べることにも注意が必要です。持ち越す能力次第で未知のルートが開拓される可能性があります。
 Normalコース7の前半は顕著な例ですので説明しておきます。7-1では、UFO、スパーク、ストーン、パラソルと4種類のコピー能力を持った敵が配置されていますが、普通にプレイすれば一番手前にいるUFOを最初に倒しがちになります。しかし敢えてこのUFOを残し、最後(から2番目)に倒すことで、次のホール以降7-5までを最強のコピー能力UFOで攻略できるようになります。7-1単体で見るとホールを往復するため少し時間がかかりますが、それを補ってあまりあるほど、次以降のホールで時間短縮をすることができます。

2.7.チャート構築まとめ
 以上に述べたのは、時間短縮の可能性の一例であり、他にも短縮できるポイントはあるかも知れません。気になる箇所があったら短縮の可能性がないか是非考えてみてください。

3.少しでも早くクリアするために

 始めの方に書きましたが、カービィボウルRTAはミスによるタイムロスが非常に大きな競技です。できるだけミスをしないのが記録短縮の王道ですが、下記に述べる細かいテクニックでも各ホール1秒前後の差はついてきます。積もり積もれば8×8ホールで64秒の差となります。

3.1.ショット決定の入力を速く
 ここではショット決定までのコントローラの操作法について考えます。ショット決定の流れは次の通りです。
 ①カービィが静止して、プレイヤーの入力が可能になる。
 ②ショットの方向と、ゴロかフライかを選択して、Aボタンで決定
 (この段階でスピンを調整することもできますが、時間がかかるため次で入力します)
 ③スピン(カーブ)の強さを決定し、Aボタンでパワーゲージスタート
 ④Aボタンでパワーゲージを止め、パワーを決定

 打ちたいショットが初期方向(→I.3.2.「ガイドの初期方向」)のままでいい場合、②で操作することはありませんので、Aボタンを連打しながら①の瞬間を待ちます。
 初期方向のままフライを打ちたい場合は上キーを押しっぱなしにして①を待てばOKです。ここでAを連打すると、上入力が入らないままAが先に入って③に移行してしまうことがあるため、程よいタイミングでAを押す必要があります。上入力がちゃんと入ったかどうかは、ピッという音が鳴ったかどうかで判断できます。(見た目だと一瞬のことなのでよく見えません)
 LRおよび左右キーを押すショットの場合、迅速な入力に技術を要します。おおむね10度以上の角度変更が必要な場合、必要回数分左右キーを押すよりも、押しっぱなしにした方が早く動かせます。ただし正確にどれだけ角度変更したかをコントロールするのは難しいので(Ⅰ-2.ショットの要素>2.方向 の項目も参照)、ガイドの見た目を参考に調節することになります。ショットごとにどれくらいの角度のズレが許容されるのか、感覚で覚えていくしかありません。
 ③および④の区間は、適切に入力すれば理論上の最速となるので、ミスをしないように気を付けることが大事です。(ちなみに、カーブの調整完了と同時にAを押すとパワーゲージの音が発音されなくなります。最速で入力できているという印になりますが、音が出ないためパワー調整が少し難しくなります。) 

3.2.カービィの速度を少しでも速く
 カービィが速く動くことはRTA的に嬉しいような気がしますが、勢いがあるということはそれだけ距離が伸びるということなので、止めたいところに止められなかったり、カップに入れられなかったりしたら意味がありません。カービィが速ければ速いほど良いのは、その先で速度を無効化するコピー能力を発動できるときに限るということが言えます。例えば、最後にストーンで止まるショットの場合、ストーンを使う場所まではどんな速度で行ってもいいことになります。できる限りのフルパワー、がんばれボタンやバンパー加速を駆使してタイムを縮めることができます。ストーンだけでなく、(ゴロの)ニードル、ハイジャンプ、バーニング、ホイールは能力発動時の位置、向きだけが問題となり、速度はその後の動きに影響を与えません。
 また、UFOは能力発動時の速度を維持したまま進み続けられるので、できるだけ勢いをつけた状態で使うほどタイム短縮に寄与します。UFOを持った状態でショットを打つ場合は、パワー63を狙い、打った直後に能力を発動します。(もちろん速いほど操作は難しくなるので注意が必要です。)

3.3.カップインを鮮やかに
 カップインできる強さ・軌道の条件には、ある程度の幅があります。ジャストの強さ・軌道でカップに入るときは、スポッという感じで非常に気持ちいいのですが、少しだけズレていた場合、カップのふちにちょっとだけ引っかかるような動きを見せた後にカップインします。この引っかかる動作も若干のタイムロスであり、引っかからない場合と比べて大体0.5秒遅いと考えてよいでしょう。
 また、ストーンを使ってカップインする場合も多いですが、ストーンを発動するのにも0.5秒ほどの時間がかかってしまうため、何もせずそのままスポンと入れられるならそれに越したことはありません。(一般的にコピー能力の発動には静止時間が発生しますので、無駄なコピー能力は使わない方が良いというのは覚えておきましょう。)

3.4.カップインした後は
 カービィがワープスターに乗った後、リザルト画面になりますが、この画面はAまたはBボタン押しっぱなしで次に行くことができます。

4.おまけ

 カービィボウルにもいくつかのバグ技が知られていますが、RTAに応用されることは少なく、超電磁砲あるいはレールガンと呼ばれる技をNormalコース6-5で使用するのがほぼ唯一の例となります。(2Pモードだとスキマ打法を使った短縮があるとか?)これはカービィボウルRTAにおいて最も派手な特殊技と言え、非常に見ごたえがあるのでご紹介しておきます。
 原理としては、トルネード状態でバンパーに当たると強くはね返って一時的に速度が大きくなり、すぐ元に戻るのですが、この元に戻るタイミングより前にスパークを発動すると、勢いがそのまま維持されてカービィが高速で飛んでいく、というものです。
 実際のプレイは動画でご確認ください。

(さらにおまけ)
 この記事で説明すべきか迷った事項として「水切り保存」と呼ばれる現象があります。正確に説明するために調べるのが面倒くさいのと、RTAへの応用が、あるにはありますが(私はExtra Modeで使っています)少ないので、ここでは省略させていただきました。気が向いたら追記しますが、気になる方は是非他の文献もあたってみてください…


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?