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【押川剛;50歳からのキャンパスライフ】16 そろそろ“就職”が視界に入ってきたな!

先日の記事の続きでもあるのだが、大学3年生ともなると、学生ちゃんたちは皆、“就職”について真剣に考え始める。傾向としてはこのご時世、公務員狙いが圧倒的に多い。本人の意向はもちろんのこと、話を聞いていると、家族の意向も強いのを感じる。コロナもある、震災や災害もいつ起きるかわからない。地元に残って堅実な職業に就いてほしい。親も子も、崩れないものを目指しだした、という感じがする。

俺は北九州で生まれ育ったが、物心ついた頃には「東京に行くぞ!」という気持ちが強かった。叔父が東京に住んでいて、休みのたびに遊びに行っていた影響もあるかもしれない。結局、関東の大学に入学して警備業のアルバイトに明け暮れ、4年で大学を中退して警備業を興した。その頃にはバブル崩壊の足音も聞こえていたが、それでも「東京で一旗あげちゃるぞ!」と言えるだけの、未来の余白はあった。それに比べると、今の学生ちゃんたちは、未来を描きにくい閉塞的な環境に置かれているよなあと思うのである。

結局俺は、東京で30年近くめいっぱい仕事をし、再び地元に戻ってきた。長期に携わっている患者さんたちのサポートをするには福岡が最適であり、震災や災害の頻度を考えても、東京に居続けることはリスクが高かった。正直に言えば、やはり関東圏にいたほうが仕事はしやすいし、楽しい。たとえて言うなら、東京なら種を植えてから花が咲くまであっという間だ。珍種であるほど面白がってもらえて、結果が出れば、「もっと広い土地を貸してあげるから、手広くやってごらん」と言ってもらえるチャンスがあふれている。対して地方は、珍種は苦労して花を咲かせても、その価値を理解してくれる人が少なく、理解されるまでに時間もかかる。そもそも俺みたいな出戻り人間は、畑を借りるのも一苦労だったりする(笑)。

話が逸れたが、そんなふうに関東圏と地方の違いを身に染みて感じていたからこそ、コロナ禍になる前は、学生ちゃんに対しても「もっとチャレンジしたらいいのになあ!」と思っていた。しかしこう世の中が一変してしまうと、「今」はそういう我慢の時代なんだろう、と思うようになった。若い人がいくら堅実・安定の公務員狙いと言っても、非常に狭き門である。これはある人から聞いた話だが、AI化が叫ばれる中、職種によっては上の世代が自分の席を守るために、「優秀な学生は採用しない」傾向にさえあるという。これはあながち間違った情報ではないと思う。若い世代が減る一方の今、娯楽やエンタメを見ていても高齢層向けのものが多い。医療に関してもそれはあからさまだ。子供や若者こそ中心にしなければならないのは分かっているのに、それをやると支持が得られない。お金にもならない。だから年齢層高めの国作りになってしまっている

俺のゼミの先生は非常にパシパシものを言うので、公務員一択の学生ちゃんに対し、「安定や堅実が欲しいなら、職人になったほうがいいですよ」「どうしても公務員になりたいなら、学校教師がいいんじゃないですか」と、アドバイスしている。とはいえ、職人といえば肉体労働のイメージがあり、学校教師ももはやエッセンシャルワーカーの域だから、若い人にはピンと来ないようだ。でも俺は、先生の言っていることは超正しい!と思う。

時代の流れにはサイクルがある。今しばらくは諸々が厳しいサイクルに入るのだろうし、目下の目標としては、さまざまな困難を乗り越えていくしかない。ヤクザがお金を稼ぐことを「シノギ」と言うが、言い得て妙だな、と最近思う。辞書には、「困難や苦境にじっと堪えて、なんとか切り抜ける」とある。当面は、生きていくための仕事をする。生き抜くための人間関係や環境を整えておく。人生なんて考えれば「不安」しかないのは当たり前なのだから、見えない未来に対してできる限りの予測をし、「こうしよう!」と決断していくしかないのだろう。10年後か20年後か、100年後かは分からないが、また新しい時代が来ることを期待しつつ。

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