瘡蓋と絆創膏

私が働き出し、弟が高校生の頃に父は家族の誰にも相談せずいきなり仕事を辞めてきた。

どうすんの?!まだ弟高校生だよ?!

そんなこと御構い無しに遊び、慣れない家事をする父。しかし慣れない家事に苛立ち八つ当たりをする父。
呆れたというか、現実を直視した母は逆に家計を支えるために働き出した。

もうギャグなんだけどさ、何を思ったかいきなり炎天下に物置を掃除すると始めて30分もしないうちにコントで出す「ドンガラガッシャーン」な音が聞こえてきて見に行くと物置からもうもうとした埃と共に出てきた父。

「誰だよ?!こんなところに金タライを置いたのはっっ!!」

って言ってるけど、その物置のものは全部父が置いたもの。

どうやらその落ちてきたタライの淵がコントのようにおでこにメガヒットしたようで、けっこうな出血なのでタオルで止血してから病院に連れて行った。

慣れない洗濯に掃除に途中で放り出したものを片付ける私は貴重な休日を父の我儘で潰されるのは納得いかなかったがとにかく病院へと急いだ。

それまでにも健康保険証の場所がわからないだとか、すぐに財布を掴み自転車に乗りたくないと駄々を捏ねた父を後ろに乗せて近所の整形外科に連れて行った。

幸い、おでこの傷は大事なくおでこを横一文字5cmの傷。整形外科の先生に「傷口固まったら外していいよ」と絆創膏替わりの脱脂綿とテープでバッテンしてもらい帰ってきた。

帰ってきた直後も写楽法介みたいで直視できなかったが、バッテンテープが剥がれ、瘡蓋ができて傷口が綺麗に無くなるまでの間もお父さんが貯金箱に見えて直視できず大変だった。

当時どんなに理不尽なことを言われても父のおでこを思い出すと赦せる気持ちになったのはここだけの話。

ANN(オールナイトニッポン)でハガキ職人だった友人に話したら「採用された」と喜び「またお父さんの面白い話聞かせてね」と言われたのですが、放送側は全ての話が同じおっさんの話だとは気づかなかったのではないかと思う。

#変人ホイホイ
#父でした

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