CFA受験の振り返り


【プロフィール】

・大学の学部は文系(人文系)
・現在は不動産AM会社に勤務
・TOEIC900点台(海外経験はなし)

大学の学部は人文系で、CFAを受けるまで、クオンツや経済学、ファイナンスなどにはほとんど触れたことがありませんでした。
仕事は「AM=アセットマネジメント」と名乗ってはいるものの、内実はほとんど不動産会社と言って良いかと思います。新卒からずっと不動産業界にいるため、今の会社に転職するまでCFAホルダーには一度もお会いしたことがありませんでした。
英語については、大学が語学に強いところだったことに加えて、今の会社でもたまに使っていることから、普通よりは少しだけ出来る、と言った程度です。

1.受験のきっかけ

受験を思い立った直接のきっかけは、CFAホルダーである今の会社の上司から薦められたことです。
それまで、CFAの存在自体は知ってはいたものの、ザ・金融業界にいる人向けの資格といったイメージで、自分には縁がないものと思っていました。しかしながら、今の会社に転職して以降、機関投資家クラスの顧客と直接コミュニケーションをとる機会が増え、共通言語として金融分野の知識を得る必要性を痛感していました。
また、以前はLevel2、Level3ともに年一回の実施だったため、受験には少なくとも3年かかっていたことも、CFAにあまり興味を持てなかった一つの要因です。折しも、2021年からカリキュラムが改正され、受験に必要な期間が大幅に短縮されたこと、またコロナウイルスの影響でまとまった学習時間が確保できたことが受験を決める後押しになりました。

2.合格までの道のり

2021年4月 CMA1次受験(3科目・合格)
2021年11月 CFA Level1受験(合格)
2022年6月 CMA2次受験(合格)
2022年11月 CFA Level2受験(合格)
2023年8月 CFA Level3受験(合格)

3. CMAを受けるべきか

CFAをこれから目指す上で、先にCMAを取得するべきか悩んでいる方は多いのではないでしょうか。私は先述の通り、金融業界とは縁のないキャリアを送ってきたため、先に日本語で基礎知識をつけることが有利に働くのではないかと考え、CMAを並行して受験しました。
あくまでも個人的な感想ですが、CFAを目指す上でCMAが必須か否かで言えば、答えはNoだと思います。理由は主に以下の2点です。

  1. 金銭的、時間的な負担が大きい

  2. 一度学んだことを再度英語でインプットする必要がある

1に関しては言わずもがなではありますが、CMAを取得するために必要な費用は10万円を超え、必要とされる学習時間も200時間超と言われるなど、金銭的、時間的な負担が小さくありません。また、私の場合はTACのテキストを用いて効率を最優先に勉強していましたが、近年では公式テキストをしっかり読み込まないと得点が難しくなっているようで、負担がさらに重くなっていると思われます。
2に関してはあくまでも私の主観ですが、CMAとCFAは出題分野こそ被っているものの、個々の分野のアプローチや出題方法が微妙に異なっていたと感じています。とりわけ私の場合、CMA受験時には最短ルートでの合格を優先して、深く理解することをしなかったため、結局CFA受験の際に基礎から再度やり直すことになりました。また、日本語でインプットしたものを再度英語に変換する作業も非効率的だと感じました。

以上のことから、会社で推奨されているなどの理由がない限り、「CFA受験のため」にCMAを受験する意義は乏しいのではないかと思います。

4.使用したテキスト

CFAの受験にあたっては、Level 1からLevel 3まで一貫してSchweserのテキストを使用しました。他のPrep Providerとの比較はしていないため、良し悪しを語ることはできないのですが、最終的には公式テキストの問題演習に多くの時間を費やすことになるため、有名どころ(Kaplan、Wiley、IFT、MMなど)であれば、好みで選んで差し支えないと思われます。
私がSchweserを選択した理由は、公式テキストに比べてコンパクトにまとめられており、索引も充実しているため、辞書的な使い方が出来ると考えたからです。また、Notes以外にもオンラインベースのリソースが充実しており、スマホで隙間時間に学習を進められることも役に立ちました。
なお、Kaplanの公式サイトでも不定期に割引コードが配布されていますが、CFA Society Japanのサイト(https://www.cfasociety.org/japan/cfa-program/exam-preparation-resources)からアクセスすれば常時割引を受けることができます。

5.必須アイテム

電卓

私はLevel 1からLevel 3まで、「Texas Instruments BA II Plus」を使用しました。実際の試験会場では、「Texas Instruments BA II Plus Professional」を使っている方のほうがやや多かった印象ですが、どちらを選んでも大きな差はないと思います。
留意点として、これもよく言われていることですが、試験会場で電卓が故障すると完全に回答不能となってしまうため、試験会場には複数台持ち込むのがベターと思われます。

iPad/タブレット端末

CFAのテキストは、Schweserのテキストですら、各レベル1,000ページを超える分量があるため、常に持ち歩くのはあまり現実的ではないと思います。また、上述の通り、最も有効な試験対策は公式テキストの章末問題です。Prep Providerのテキストを併用する場合には、公式テキストとPrep Providerのテキストの両方を持ち歩くことになります。従って、タブレット端末はほぼ必須と言って差し支えないアイテムです。
私の場合は、公式テキストのebook版をiPhoneとiPadの両方にダウンロードして、同時に表示しながら学習を進めていました。また、わからない問題は、タブレットに保存したSchweserのテキストですぐに確認するようにしていました。

6. 各Levelの感想

CFA受験を終えて振り返ってみると、もちろんどのLevelも簡単ではありませんでしたが、Levelを重ねるごとに難易度が上がっていった印象です。体感的には、仮にLevel 1の難易度を1とすると、Level 2は5、Level 3は10といったところでしょうか。
ただ、基本的な対策は全レベル共通です。他の受験生の方も口を揃えて指摘されていることですが、最も効果的なのは、「公式テキストの章末問題をしっかりとやりこむ」ことです。また、Prep Providerや公式のMock Examで実際の出題形式に慣れておくことも重要です。

Level 1

Level 1では、出題範囲が広範な一方で、出題形式は一問一答形式のみであり、深く知識を問われるような場面は少なかったと記憶しています。従って、章末問題をしっかりとやりこんでいれば、自然に試験でも得点できるようになるはずです。
とはいえ、私はLevel 1の受験時には業務の繁忙期と重なりまとまった学習時間を確保するのが難しかったため、章末問題には手を付けることができませんでした。代わりに、通勤時間や昼食中など、空き時間を見つけてはScheweserのQBankを解き、間違えた問題を復習するサイクルを繰り返していました。Level 1に関してはScheweserのQBankやMock Examが優秀で、結果としてQBankを数周した頃には、Mock Examでも6割程度得点できるようになっていました。最終的には、実際の試験でも90th percentileに入ることができました。

Level 2

Level 2 になるとQuantitativ AnalysisやEquity Investments、Fixed Incomeなどを中心にかなり複雑な理論や計算を求められるようになります。また、出題が「アイテムセット形式」と呼ばれる、1つの大問で4問ずつ出題される形式となるため、苦手分野を残してしまうと大きく得点をロスすることになってしまいます。
特に、CFAで初めてQuantsに触れた私にとって、Level 2は非常に難敵でした。例えば、検定はQuantsの分野だけでなく他の分野でも出題されることがあるため、最後まで苦戦していた記憶があります。同じようにQuantsに馴染みのない方は、Level 1とLevel 2のインターバル期間中に統計学の入門書などである程度触れておくとよいかも知れません。
また、Level 2以降は、ScheweserのQbankは残念ながらあまり役に立たないと感じました。分量としても不足していますし、実際の出題形式ともやや異なっているようなイメージです。従って、繰り返しとなりますが、公式テキストの章末問題がもっとも効果的な対策になると思われます。
Level 2ではある程度まとまった学習時間が確保できたため、試験の2か月前頃から、公式テキストの章末問題を3~4周繰り返し、その後Mock Examを2~3周繰り返しました。結果として、Level 2でも90th percentileに入ることができました。

Level 3

Level 3では、所謂「Essay」形式の出題が登場します。Level 2まではすべて選択問題のため、覚えていなくても消去法で対応できるケースがありますが、記述問題ではそうはいきません。また、試験時間が極めてタイトなため、限られた文字数で的確に回答を作成する必要があります。これに輪をかけて、英語で記述することが、英語を母語としない方にとっては高いハードルになります。
また、Level 3は公式テキストの章末問題に難があります。まず、誤植が極めて多く、常にErrataと見比べておかないと、理解不能な回答に長時間悩むことになります。また、記述を求める例題の模範解答は教養的な内容が多く、実際の試験でどこまで記述することを求められるのかが判然としません。更に、協会公式のMock Examのクオリティも低く、実際の試験とはかけ離れた内容でした。結果として、最後まで手探りで学習せざるを得ず、手ごたえがないままに試験を迎えることになりました。
記述問題が中心となるフォーマットと、公式教材の不完全さから、Level 3では「小手先」の試験対策が通用しないため、結局のところ、愚直に知識を積み重ねていくしかないのだと思います。Level 3に至っては、公式テキストの章末問題に加えて、公式のLerning Ecosystemに用意されているPractice Problemsを複数回解き続けました。また、学習にあたっては、4技能さんの記事(https://note.com/toeic_4skills/n/ne9d7fa47fe60)を参考にしつつ、重要な論点については簡潔に説明できるよう、模写⇒音読⇒自分で文章作成というプロセスを繰り返しました。
それでも、実際の試験では、Practice Problem、Mock Examのどちらでもみたことがない問題が複数ありました。もしかすると、そのうちいくつかは各セクションのExamples等でカバーされていたのかも知れません。これらの問題は恐らく得点することができませんでしたが、そうしたイレギュラーな問題はとれずとも、合格点に到達することができました。勉強に割ける時間との兼ね合いもありますが、細かい論点をすべてカバーすることよりも、基本的な問題を確実に解けるようにすることがより重要なのだと感じます。

7.おわりに

私は幸いにもほぼ最短ルートで合格にたどり着くことができましたが、それでも3年弱の時間を費やしました。その間、周囲に受験者もいなく、スタディグループに参加したわけでもないため、孤独で辛い日々を送ってきました。そんな中で、Twitter(X)の受験生の皆さんの情報やポストには、勇気づけられました。本当に感謝しています。
また、受験期間中は平日、休日問わずにほぼすべての時間を勉強に費やすくらいの覚悟が必要です。そのため、家族には大いに迷惑を掛けてしまったと感じています。3年も経てば、家族環境やライフステージに変化が生じるのは必然だと思います。最後まで走りぬくためには、家族の理解を得ることが非常に大切だと痛感しました。
そんな大変な思いをしたCFA受験でしたが、間違いなくチャレンジした価値はあったと思います。得られた知識やCFAホルダーになれた事実以上に大きな収穫だったのは、自信を得ることができたことです。初めてテキストのを開いたときには全く理解できなかったことも、コツコツと勉強を重ねることで自分の血肉になっていく感覚がありました。この経験は、今後のキャリアでも必ず役に立つと確信しています。

拙筆極まりない文章で大変お恥ずかしい限りですが、もしご質問などございましたら私のTwitter(X)アカウント(https://twitter.com/fsr_05)にDM等頂ければ、可能な限りお答えします。

最後に、一人でも多くの方が、CFAにチャレンジし、合格されることを願っております。

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